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7、真っ暗な世界から抜け出たら……

 とある部屋のテレビに電源が入る。

 しばらくすると画面が移り、ニュースとおぼしき映像が流れる。


『えー、次のニュースです。東京都○○○市のとあるアパートで今朝、20代の男性が意識不明で搬送されました……』


 男性キャスターが淡々と原稿を読み上げていく。

 画面は変わり、とあるアパートの映像が流れる。

 砂利の敷地に二階建ての古いアパートが建っており、二階の一室を大きく写す。


『男性は薬物を何者かに接種させられた可能性があり、搬送された先の病院で現在治療を受けているとのことです。警察は同アパートに住む70代の女性がなんらかの事情を知っていると見て、捜査を行っています。では、現場の里中さん?』


 ニュースを読み上げるキャスターの映像になり、続いてまたアパート前の映像に戻る。

 画面上には中継という文字が浮かぶ。


『はい、こちら現場の里中です』


 女性リポーターが、長い茶髪をかき上げながら原稿を読みあげる。


『事件があったのは、こちら。裏野ハイツというアパートの二階です。被害者である高橋サダオさんと、加害者と思われる女性は同じ階の住人であったことがわかっています。現在、重要参考人として警察に連行されている女性は、被害者に定期的に薬物入りの食事を提供していたということがわかっています。事件について、同アパートに住む方々にお話をうかがってきました』


 今度は50代くらいの男性が映る。

 顔はふせてほしいのか、胸から下の映像しかない。


『被害者の男性と加害者と思われる女性について、何かご存じですか?』


 字幕つきで女性リポーターが尋ねている。


『いや、まあね……二人ともご近所さんだったから……うちもあの○○さんからはよくお裾分けもらってたんだよ。まさかあんなことをする人だとは思わなかったね。僕は妻以外の人が作った料理を食べないから、助かったけど……うちの妻はあの料理けっこう食べててね、いま、病院でその検査をうけてるんだ。妻はいつのころからか足腰が立たなくなってきてね……それももしかしたらあのせいかもだって、さ。……許せないよね』


 次に30代のくらいの女性の姿が映る。


『事件があったことご存じですか?』

『ええ。警察の人に色々と訊かれましたから。うちも……あのおばあさんから度々いただいていたんですよ。お料理。でも、ちょっと口に合わなくて……息子もアレルギーが多かったから食べさせなかったんです。でも、主人は……。最近体の調子がおかしいって言ってたから、今度病院にかかる予定です。最近うちはここに越してきたんですけど……まさかわたしもそんなことになってるなんて思わなくって……もうびっくりです』

『被害届は出されるんですか?』

『それは……警察の方と今相談しています。事件がはっきりするまでは、まだなんとも言えませんけど……』


 画面が切り替わり、女性リポーターに戻る。


『……と、このように、他の住人たちからの証言もあり、70歳の女性には他に余罪があるとみて警察は調べています』


 読み終わったリポーターのもとに原稿がもう一枚渡される。


『あ、今入ってきたニュースです。警察の発表によると、女性は以前、訪問販売にきた男性から薬を購入したということです。これが、例の薬……ということです』


 レポーターは一枚の写真をテレビカメラに向ける。

 そこには何個かの小瓶が写っていた。

 そこには赤いラベルが貼られてあり、「何度も食べたくなる味! 理想の『夢』の万能調味料!」と書かれている。


『ただいま成分を詳しく調べているそうですが、幻覚作用を持つ大変危険なものようです。同様の薬を購入した覚えのある方は決して服用しないように、とのことです。また、この薬物を売買した男についても現在捜査を進めており……具体的な情報が少ないため、捜査は難航しているもようです。では、現場からは以上です』

『はい、ありがとうございました。この70代の女性は取り調べで容疑が固まり次第、傷害罪で起訴されるとのことです。次のニュースです……』


 プツッと、テレビの画面が消える。



物語をここで終わりますか? はい  → あとがきへ

お疲れさまでした。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

100%の悪意ではない行為というものは、案外近くに転がっているものです。いつしかあなたもこのように理不尽な目に遭うかもしれませんね。

ほら、あなたの目の前にも例の小瓶が……。

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