図書室では静かに
久しぶりの投稿になります。
早めに教室に戻ったけれど、どうやら午後の授業は自習らしい。教室か図書室を使っていいということだったのでオレは図書室に行くことにした。
だってねぇ、図書室よ?本いっぱいですよ?天国ですね!!
これは行ってどんな本があるのか確認しなくちゃ。
……と思ったけれど悲しきかな。オレに王華の記憶はないに等しいので場所がわからない。
困った。クラスメイトのほとんどはいないし勉強してるし。迷子になりたくないしなぁ。
誰かに聞ければ……あ。
「ねぇ」
「は、はい!!」
急に声をかけたからか思いっきり驚かれてしまった。
オレが声をかけたのはあの落とし物をくれた小動物みたいな女子生徒。震えながらオレの方を向いて……ってオレ怯えられてる?
ちょっとショックです……。
記憶がないに等しい今、聞くなら今日話せたこの子にしようと思ったけれど選択誤ったかも。
でもオレ的に気楽に話しかけれそうだったから仕方ないか。
「図書室がどこにあるのか教えて欲しいのだけど……」
「と、図書室です、か?えっと、ここをまっすぐで、最初の角をみ、右の方に……」
「まっすぐのあと角を……?」
「えっと……まっすぐ……あの、もしよけ、よければ、ご案内……しましょうか?」
「ぜひお願いします」
「そ、そんなにかしこまらなくてください!」
まさか自分の記憶力がまったくもって役に立たないなんて思わなかったよ!!
こんな使い物にならないほどまだ万全じゃなかったなんて……そりゃ畏まりたくもなる。
まだ少しだけ震えている女子についていく。そんなにオレって怖いのかな?元々の三沢王華が怖いのか……。
そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。中身オレだし。そう声をかけようとして、思い出す。
……オレ、この子の名前知らなくね?
よくよく考えたら頭の中では小動物みたいな子と勝手にいっていた。失礼だし、この際名前を聞いておこう。
「今更なのだけれど、あなたの名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「え、あ、わ、私の名前なんて……お、恐れ多いです!!」
「教えてくれた方が呼びやすいのだけど……」
「あぅ…………は、花形、千保、です」
はながた、花形千保。それが彼女の名前。
恐る恐る、小さい声でだったけれどはっきりと聞こえた。
忘れないように何度も心の中で呟いて記憶にちゃんと残るようにする。いくら使えないオレの記憶力でも少しは役に立ってくれよ。
「よろしくお願いします。千保さん」
「な、名前ではなく……」
「うん?えーっと……嫌でしたか?」
「い、いえ……」
少しだけ頬を赤く染めて顔を伏せる千保さん。
……よし、決めた。
オレ、絶対千保さんと友達になるわ!!可愛いもん!!
その意気込みで千保さんに話しかけて、それに応える千保さん可愛いと思っていたら図書室についた。
案外早かったや。次からは一人でも来れるように道順を覚えておかないとね。
「千保さん、ありがとうございました。おかげで次からは一人で来れそうです」
「い、いえ、そんなお礼なんて……そ、それに王華様。わ、私なんかにさん付けなんてしなくても……」
「やはり嫌ですか?名前呼びは馴れ馴れしかったかな……?」
「そ、そんなことは……!!」
なんでしきりに呼び方について言われるんだろう?もしかして、ここにもお嬢様とかの暗黙の了解でもあんの?
考えながら千保さんを見ると、千保さんはあたふたし始めたた。……めちゃくちゃ和む。
「何やってるんですか!!」
「……」
和んでいたら邪魔された。
すごい勢いでオレと千保さんの間に入ってきたのは例の美少女(?)、改めヒロイン。
なんで図書室で騒いでんのこの人。しかもなんで走ってんの?精神年齢何歳?
和んでいたのを邪魔されて、図書室でのマナー違反を見たせいで心の中が思わず荒れる。
そんな気分のままヒロインを見ると、意外とヒロインの身長が自分より低いことがわかった。
ヒロイン、高さどれぐらいよ?まさか156㎝なんて可愛いと思われる身長そのままなんじゃ……。
全然関係ないことを考えてしまった。戻れ戻れ。平常心で大人な対応をするんだ。
「いえ、あ「確かに私は関係ありませんが、こんなことを見逃すことなんてできません!!」」
人の話を聞けよヒロイン!!
ダメだ。大人な対応なんてできるか!!腹立つんだけどこいつ!!
人の話は最後まで聞けと言われるでしょうに!!
え、オレ?ちゃんと聞いてますよ?
「あの「きゃあ!」」
少し落ち着いてもらおうと両手を上げたら倒れられた。
……え、なにこれ。なにこれ!?
なにこいつ自分は被害者ですみたいなことしてんの?腹立つ……いや、わざとじゃないのかもしれないな。偶然かもしれないし……。
と思ってた時期がオレにもありました。
ヒロインがあからさまに「いったぁ……」といってオレを睨んできた時点で殺意しか湧かなくなったわ。
本当なら千保さんと話して親密度アップを図りたかったんだけれど、もう勉強しに行っていいかな?本を見に行っていいかな?
「何をやっているんだ」
イライラが最高潮に達しそうになってたら、一人の男子生徒が歩いてきた。
片手に本を持っているところを見ると、偶々この状況を見つけたってことかな?
どちらにせよ、ちょっといいかね?
いい加減オレに勉強させろ!!
でなきゃ本読ませろよ!!ここまで来て、なんで無駄なことに時間を浪費しなくちゃいけないの!?
「八ヶ島先輩……」
「あ、晶様……」
雰囲気からしてインテリア眼鏡って感じがする男子だ。
しかも、ヒロインがこいつのことを知っているってことはこの男子も攻略キャラってやつなのか?
「大丈夫か?彗、千保」
「い、いえ、あの……」
「大丈夫です!っつ……」
「彗?」
「な、なんでもないです、八ヶ島先輩」
「……彗に何をした、お前」
……何となく、わかってた。
わかってたけど……なんでそういうキャラなの!?
何もしていないというのを言っても信じなさそうに睨まれて今度はあきれてくる。
人を疑うことは別に悪いことじゃないとか思ってるけどさぁ、初っ端から睨んでくる奴があるか!!
それとヒロイン。わざとらしく痛い痛いというな。
お前痛み舐めてんだろ。一日中座ってパソコン打って、肩、背中、腰、挙句に目が疲れた時のつらさの方が痛いよ!!
尻もちより痛みが継続して……本当につらい。
「私は何もしていません」
「最初は誰だってそういう」
「……はあ?」
「ほ、本当です!!王華様は、何もしておりません!!」
キレかけたら思わぬところからフェローされた。
震えながら、それでも大きな声を上げてまで庇ってくれた千保さん。
いい子だ。本当にいい子。
友達になるならぜひ千保さんみたいな方がいいね!
ふとインテリア眼鏡を見ると少しだけ顔色が変わっているのに気づく。
しかもオレの名前を呟きながら見てきている。
ふむふむ……どうやらこいつにもオレの名前は有効らしいな!!
「こいつが、三沢王華……?」
「はい。私は三沢王華です」
記憶はなくともオレの今の名前は三沢王華。
そこに嘘偽りはない。
すると変わる変わるインテリア眼鏡の表情!やっば、爆笑!!
自分の家を開くのは嫌だけれど、ここはさっさと終わらせたいからな。一気に行くぞ!!
「嘘だと思うのでしたらどうぞ。心行くまでお調べください。三沢王華の名前を勝手に使った、などと言われては私が困りますので。最も、公にしていない情報があるにはあるのですが」
「……なら、なぜ男子の規定されている制服をきているんだ」
「そうですね……知りたいですか?私は教えてもいいのですが……聞いて貴方は、どうするんでしょうか?」
さあ私よ!!三沢王華になりきるんだ!!
残っている記憶にあるように、意地悪く笑って……やべぇ。わかんね。
とりあえず不敵に笑え!!
どれぐらいうまく笑えたのかは、ここに鏡があったら是非知りたい。
でもまぁ、青くなったお二人を見ればわかるかな。ヒロインは勝ち誇った顔をしてるけど……ここから逃げ出せるならいいや。
「無言、ですか……でしたら私は勉強がありますので……先に失礼させてもらいます」
何も言われないのをいいことに脱走。すたこらさっさっと。
今回は忍耐持った方じゃね?OLの時もよくしてたけど。上司のご機嫌取りとか。
……あのハゲ上司が給料無断で下げたの思い出した。くそっ!!
前世での怒り、てか死因の原因になったのをした理由でもある上司へのこの気持ちは勉強に向けてやろう。
届くかわかんないけど呪ってやる!坊主になれ!!さっさと髪の毛抜け切れ!!
「……後ろの黒いのは何ですか?」
「ん?」
なんかすっごい会うね。
ため息をついて席に座っている叶は老けて見え……何も思ってないので睨まないで。
……いや、もう死んで二回目の人生て感じだから老けていて当然なのか?
「……一は、一番なんだよ」
「は?」
1は1?よくわからなくて聞こうとしたら勉強に戻られた。むぅ、邪魔できないじゃん。
……いいや。オレも早く勉強しよーっと。