若い内に黒歴史は作れ
ブックマークしてくださった方々、ありがとうございます!!
爽やかな朝……ではないにしろ天気良好。太陽サンサンである。
一歩一歩、前に進めば視線を向けられる。ヒソヒソと噂をし出すのはここでも変わらないのだどこか安心した。
久しぶりの登校。先生に連絡は行ってるはずだからオレはそのまま今のオレの教室に向かう。
オレが歩く廊下は白くて明るくて……前世で何回も見た景色に少しだけの懐かしさ。本当にオレは生まれ変わったんだ。
教室に入れば視線と共に静かになる室内。その視線は前世で何度かは経験したことがあるから気にせず、まだ残ってる記憶を頼りに自分の机へに着き、座った。
一瞬のざわめき。それもそうだろう。だってかの三沢王華とは違うのだから。
長かった髪は邪魔なので肩にかからないように切り。
傷なんてそんなにないけども痕が残ってしまった箇所があるために男子生徒服を着て。
そして極めつけに中身はオレ。ここの記憶なんてないに等しいオレなのだ。
「お、おはようございます王華、様?」
「ん?おはよう」
多分同級生であろう女子に挨拶をされたので返す。けれどもその女子はそれ以上の会話は続けず去っていった。
この教室にはお気楽な奴はいないのか?そういうやつほどこういう時には役立つのに。
他数人。挨拶はされるのだが一定の距離から入ってこない。オレの記憶喪失ってのはもう誰もが知ってることなのか?
前世と変わらないチャイムがなる。授業開始の合図は何時聞いても怠い。
微妙な空気を晴らすように鳴ったチャイムのおかげか、皆自分の席に座りだした。
オレも黒板のほうを見る。授業に集中しようと準備し始めた。
* * *
……疲れた。
マジありえない。ここは進学校ですか?授業速すぎっしょ。
頭疲れたー。マンガ読みたいゲームしたいー。
聞こえない程度にお腹が鳴る。四限終わったから……次は昼食か……。確か食堂あるって言ってたな。
親に渡された大金が入ってるサイフを片手に教室から出る。廊下にはもう人がまばらながらいて、やはり今朝と同じ視線を貰った。
マジウザい……人の視線の的になりたくないんだけど……。
早く慣れてくれないかな?別に無理なお願いじゃないと思うんだけど。
でもそんなことより気になるのは食堂の料理だよ!なんとここの食堂は高級料理もあるとか!素晴らしいよね高級料理!
普通の坊ちゃん嬢ちゃんは気にしないだろうがオレは庶民だったのだ。金はある!だから食べる!!
「その食事を目の前にした顔、止めとけよ」
「おっ、す、じゃなくて叶!」
偶然的に叶と合流。よかった、これでも心細かったから叶に会えてラッキー。
呆れ顔というかなんだか微妙な顔の叶の腕を引いて一緒に食堂へと行く。
「……俺の意見無しに食堂決定か」
「弁当でもあんの?」
「ないから俺も食堂だけど……手を離してほしい」
チラリと叶の視線にそれもそうかと腕から手を離す。前世ではよくすば、叶を引きずって買い物行ってたりしてたからつい癖で。
姉弟だったら気にしないだろうけど今は違うからな……そこら辺は不便だ。
少しだけ増えた視線なんて気にせず叶の横に並ぶ。
「……それにしても、男装が似合ってるね……」
「意外と似合ってオレ嬉しい」
「『私』と言え。発想中二だし………やっぱ胸が……」
ぼそりと言ったこと姉さん聞こえてますよ?その哀れな視線を寄越してくる目に指突き立ててやろうか?
どうやら前の王華は婚約者が巨乳好きと言うことで努力のように胸強調を頑張っていた。だがな、オレはまだ成長するかもしれない若い体に無理は強いたくないのだ。
その結果かまな板ですが何か?ぺったんですが何か?
さすがにここまで前世と同じになんてなりたくなかったよ!!動きやすからもういいって納得しとくけど!!
「……一条の弟と王華が一緒に食堂?これって……」
「どうした叶?」
食堂について注文が終わったオレ達は受け取り口近くにいる。「早く作ります!」と言ってきたコックさんに「急がなくていいですよー」と言ったら驚かれたのにこっちが驚きそうになったぞ。
なんだ一体。働いてる人に労いの言葉は当たり前じゃないの?
水を貰って早く席を取ろうとしたらいきなり叶は立ち止まるし…。どうしたんだい叶君やーい。
自分の世界にでも入ったのかオレの存在に反応してくれない。
どうしたものかと同じく立ち止まっていると高めの女子の声と共に背中に何かが当たった。冷たいっ!?
「ご、ごめんなさい!」
振り向けば美少女(?)がいた。……誰?制服可愛い着こなしだけど短すぎだと思うのはオレの精神年齢が老いているからか?
見ていたらいきなり顔を上げて今度はまじまじとオレを見てきた。
「……え、ウソ……三沢王華じゃ、ない?」
「いえ、私は三沢王華ですが……?」
「え………でも、姿が…………」
何この子?オレのこと知ってるの?
三沢王華は有名らしいから(ワガママで)知っててもおかしくない。けど、何て言うんだろ?この美少女、オレに狙って水かけた?
新しい服が早速おじゃんに……お父様に何て言うべきだ?うちの親、過保護なところあるからあんまり相談したくないんだけど。
野次馬根性なのか回りに少しだけだが人が集まってくる。学生時は確かにいいけど迷惑になるから基本止めとけと言っとく(心の中で)。
「何事だ」
例えるなら氷のような声。すごく冷たい印象を受ける声だ。
人垣が一ヶ所から割れ、そこから優雅に歩いてくるのは二人のイケメン。片方は赤茶みたいな色の髪で……もう一人はどこか叶に似てた。叶が成長したらこんな感じなのかな?
まあ、さ……イケメン爆ぜろ。
「なんだ、またお前か。今度は何をしたんだ?」
「こ、今度はって……失礼よ!」
赤茶毛のイケメンは横暴と見た。なんだよあの顔だけが取り柄みたいなの。うちの叶のほうがカッコいいだぞ!
……オレってブラコンなのかなぁ?叶、姉さんが鬱陶しくなっても見放さないでくれ。
「で、どこの誰だお前は」
「……あなたこそ誰ですか?」
話しかけてきた赤茶毛イケメンは正直好かない。フインキからして合わないと思う。
知らない人に自分の名前を易々言う気もないから聞き返したら鼻で笑われた。何こいつ?失礼にもほどがあるだろ。
「俺を知らないとはお前何処の出だ?俺は三沢家次期当主、三沢春だぞ」
「三沢? ……奇遇ですね。私は三沢王華って言います」
「………おうか?」
「王華です」
そう言ったら驚かれた。だからなんなの?
驚かれたままで赤茶毛イケメンは何も言わないし、もう片方のイケメンは情報収集してたと思ったらこっちを見てこれまた何も言わないし。
すみませーん。誰か説明係いませんかー。……あ、叶いたじゃん。
「叶ー、説明してー」
「……はぁ、兄さん方は三沢家の方からの連絡、聞いてなかったんですか?」
「どういうことだ叶」
兄さん?叶?あの冷徹イケメン、叶の兄か!だったら似ててもおかしくない。
てか叶。お前今世も弟なんだな。笑える~。
「……ここで言うのは王華さんに失礼なので後ていいですか?」
「それぐらいは自分で判断しろ」
……は?それぐらい?自己判断?
いくら今の叶の兄でもなんだよその言い方。叶が聞いたのはお前のに答えるためだろ!
この冷静イケメンが!オレの(元)弟になんて口聞くんだ!それでも兄か?兄じゃねーだろ!!
これはもう一発言いたい。ホントさ、そこの美少女(?)が「シナリオじゃ……」とか「バグ?」とかの発言に突っ込む前にこの冷静イケメン一度コテンパに「三沢王華様……あの、ご料理が……」……。
「叶、料理出来上がったって。早く食べないと冷める食べる時間なくなる」
「王華さん、言葉使いぐらいはなんとかしてくださいー」
イケメンより先にご飯だ!
もうなんか実は沈黙状態でした!だしいいよね!オレはお腹が空いた!
というわけで叶の腕を引いてお目当ての方へ行く。
次の時間までまだ余裕あるかな?実をいいますが、前世のOL止まりになるのではなくちゃんとした職業になりたくてねぇ。
いやそんなことよりご飯!ステーキ定食!
「ストップ、王華さん」
「WATT?」
「なんで英語……しかも発音いいし……じゃなくて、忘れてるんですか?背中、そのままではダメですよ」
「あ」
忘れてました。オレの目にはステーキしか映ってませんから。
けどこの新品の服を乾かさないと……ご飯……服……ご飯……服……ご飯……。
「ご飯を取る!」
「すみません。これ違う人にでも配布しておいてください」
「ああ!オ、私のご飯!!」
叶のバカ!オレからご飯を取りやがって!
もう帰ってこないご飯。その恨みを込め睨んでいたら叶に腕を引かれ食堂から早足で出された。
行きと逆だな。てか本当にどうした叶よ。
「姉さんに誰って聞いてきたの、姉さんの婚約者」
「わーお、さっさと着替えましょうか」
それは気まずいです。
オレは男装してたから仕方がないけどオレが婚約者に誰とかダメじゃん。顔知らないんだから別にいいとも思うけどね。
好意を持たれていた(?)相手が突然変わったらそれは驚くか。
使われていないような更衣室に着き、叶に着替えのと一緒に押し込まれた。叶は律儀に部屋の外へ。
前世の間隔抜けきってないからか叶に見られても特に何とも思わないのだが……。
にしても、あの美少女(?)が主人公なのか?オレこのゲーム知らない見たことないからわからないんだよ。
呟きからしてオレと叶と同じだろうけど、仲良くはなれないな。そう断言できる。
だってあの美少女(?)の目は。
前世で何度も見た媚びる女の目だ。
叶がオレの頼んでたのを弁当にして持ってきてくれた。わーい。