ベッドにダイビーング
全く進まない……。
オレの住んでる三沢家はデカい。何がって?そのまんま、家が。
庭はそんなに広くないのだが、家には使用人も住んでいるのもあり屋敷という大きさだ。
これまた迷いそうだなぁっと最初に思ったが今でも思ってる。迷うだろ。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「ただいま帰りました」
使い慣れない言葉を駆使し、お辞儀をしてきたメイドに返事をする。
どうでもいいことなんだけどさ、メイドの服がめちゃくちゃ好みなんだけど。
ロングスカートにカチューシャ、というのだろうか。
黒と白のシックな高級感あるメイド服に加えて白フリルのついたカチューシャは個人的にどストライク。ミニスカより断然こっち派。
気品あふれるというか、このメイド服選んだ人マジ目がある。
「お嬢様?どうかなされましたでしょうか?」
「あ、いえ……お父様は帰っていますか?」
「本日、旦那様はあと30分ほどでお着きになるはずです」
「では伝言を頼んでもいいですか?話したいことがあると」
「承知しました」
「ありがとうございます」
お礼をいい、自分の部屋に向かう。
今日も服装に見惚れていたら気にされてしまった。うう……もうちょっとどんな作りか見たかったのに~。
退院したての時もコスプレ並み、それ以上のクオリティと思って着ようとしたら止められたけどそれぐらい興味があるんだよ!!
元オタクとして!!今もオタクになるけど!!
カバンを置いてベッドにダイビーング。
……あああああああああああああ!!づがれだぁあああああああああああああ!!
自分よりもデカいキングサイズのベッドだから遠慮なく転がる。
制服?何とかなるなる!!
駄々っ子みたいにゴロゴロして足をばたつかせる。くそ……バウンドするけど痛くない……てかモフモフ。
てかさ、もう疲れんのよ!!大分慣れたけど……やっぱり慣れていない!!
もうなに!?お嬢様みたいにオホホホとかできないよ!?記憶の大半が消えてますからね!!
もうこうなったらお父様に言って学び直したほうがいい気がする。てか断然そっちのほうがいいよね!!知ってる!!
大体さぁあああ!!あの主人公なんなの!?なんか勘違いでもしてんの!?人様に濡れ衣かけて笑ってるとかさぁああああ!!
お前の方が悪役だろ!!オレより立派な悪役だ!!
「お嬢様。失礼してもよろしいですか?」
「ええ。いいですよ」
起き上がり、身だしなみを整えベッドの縁に座る。
この時間、約5秒。暴れていた音は聞こえていないといいな!!
一礼して入ってきたメイドさんになるべく笑顔で対応する。まさか暴れていた時の顔なんてお見せできないし!!
まだ今の三王華に慣れていないのか少しだけぎこちなさがあるメイドさんが口を開いた。
「その、旦那様がお嬢様をお呼びです」
「早いですね。30分後とお聞きしたのですが」
「はい。なんでも……制服のままでもいいからすぐにと事でして……」
「わかりました。それでは案内をお願いしても?」
快く了承してくれたメイドさんに着いて行き、部屋を出る。
伝言いったからかな?でもそれにしてはすぐにってのはおかしい……ような?
メイドさんが知らないってことは気安く話せる内容ってわけじゃないんだろう。さすがにそれぐらいは察しが行く。
なに?オレはこれでも猫被ってる(?)から面倒事なんてそんな起こさないよ?
あ、もしかして婚約者の件かな?でもあれはあっちからケンカ売ってきたからでオレ悪くないもん。あいつがバカにしてきたのが悪いんだし。それに本家が突いてきたところでこっちは潰れないって知ってんだぞ、オレ。
婚約を持ちかけたのは婚約者に惚れた王華だからこっちらしいし、そうなると破棄すると面倒だってのは個人的には調べたからどうにも出来なさそうなのが今のとこの悩みの種でもあるのだけど……。
「旦那様。お嬢様をお連れしました」
「ああ。お前は下がってなさい」
「はい」
「……失礼します」
ノックをしてドアを開ける。一礼して中に入った。
執務室と言うところなのか、部屋の奥に重厚そうな机とお父様がいた。
……うーん。似合わないので1000点満点中3点でファイナルアンサー。
「急に呼び出してすまない。そこのソファーに座りなさい。あ、お菓子食べていいからね」
「はい。……あの、私、何かしました?」
ふかふかの高級そうなソファーに座る。
お父様から許可を頂いたのでお菓子を数個とり、ポケットの中へ。ねこばばではない!これは駄菓子屋のおばちゃんがおいしいよ~とくれるのと似ているのだ!!
婚約者の件もあるから少しだけ緊張してお父様に聞くとお父様は私が何かしたのではないと言う。
つまり、私が何かしたのじゃなく私が何かされたっていうことだろうか?
わからず頭を傾げるとお父様が心配そうな目で見てきた。なんだかメイドさんが聞いたところによると、前よりさらに過保護さが増したけどお嬢様がしっかりするようになって良かったとか言ってたからまたそんなんかな?
「八ヶ島という苗字を知っているかい?」
「……ああ、ありますよ。本日初めてですが知りました」
記憶喪失なのを両親は当然わかっているからそういう言い方をする。
八ヶ島ってあいつだよな?図書室でインテリメガネ。忘れるかよ。あいつとヒロインのせいでオレの貴重な時間が削れんだからよぅ。
今度会ったらそのメガネでも割ってやろうか!さぞ気持ちよかろう!!……メガネにかかるお金が気になったから止めておこう。
お父様はなんだか気難しそうな顔で唸っていた。
どうしたお父様よ?(お菓子うまうま)
「実は、だな。八ヶ島のご子息と婚約者がお前に無礼を働いたと聞いたのだが……」
「ご子息は心当たりがないでもありませんが、婚約者?の方は知りませんね」
「なんで言わないんだ!何かあったら父さんに言いなさいと言っただろ!?」
「……特に気に障りはしなかったので」
「王華がそういうならいいのだが……」
前の王華だったらすぐ言ってたんだろうね。
別にあれぐらいケリをつけるなら自分でするから気にしてないってのは本当。
早速自分の家を開いてなかったかって?き、気のせいじゃないかな?
ブツブツ呟くお父様を気にせずお菓子を食べる。
これお茶に合いそう。あー、洋菓子も良いけど和菓子食べたい、和菓子。こしあん白あんだったら尚いいね。
粒はダメ。オレ食べれないから。
私はお菓子をつまみ、お父様は腕を組みながら唸っている中ドアがたたかれる。
声からしてメイドさんの一人だというのはわかり、お父様が了承して中に入ってきた。
「どうした?」
「花形家の方が直に謝罪したいとのいうことで面会を求めていらっしゃるのですが……」
「花形……?八ヶ島は?」
「いえ……なんでも、今回のことは全部こちらが悪いのだと……」
「……お父様、少しよろしいでしょうか?」
「うん?なんだい?」
「花形の方とのお話……私も参加しても?」
少しだけ戸惑っているお父様をよそに、私は考えていた。
花形っていうのは確か、千保さんの家のはずだ。なら今、面会を求めてきているの人たちに少なからずとも千保さんがいるはず。
そう、あのインテリ眼鏡ではなく千保さんが。
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます」
なんでてめーがこねーんだよ、インテリ眼鏡!!よくも千保さんに全責任を負わせてくれたな!!
叫びたくなった衝動を抑え、お父様と一緒に客室へと向かう。
千保さんの誤解は解くとして、今度会ったらあのインテリ眼鏡は殴りたいな!!思いっきりぼこぼこに!!




