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柴犬シバのゆかいな?日々

ドアを開けると雪国だっ、た?……はあ?!

作者: 篠宮 楓

ドアを開けると雪国だっ、た……って……



『はあぁぁぁ?!』


気持ちのいい眠りから覚めた俺の目の前は、なぜか真っ白だった。




やべぇ、オレ、ちょっとあの世とか来ちゃってんじゃね?

だってアンタ、目の前真っ白だぜ?

うわ、マジかよ……



思わず、ぱっかりと口を開けた。


吹き込んでくる風が冷たい。


え、ちょっと待って。

オレ、昨日どうしてたっけ?

寝る前、何してたっけ?


両前足で頭を抱えて、地面にへたり込んだ。



確か昨日は、またねーさんののろけなのか相談なのかわかんねー話に夜中まで付き合わされて。

ほんでもってから、やっとありついたメシは五日連続おんなじ味でさー

ったく、桜んとこで食わせてもらったジャーキーの味が忘れらんねーってのによー

でからに、抗議の意味で吠えたらちょー怒られて、ふてくされて寝たような???




『つーか、最後に食った飯があれかよ! せめてジャーキーよこせぇぇぇっ!!』



『煩い、バカシバ!』



お互いワオーンとしか言ってないけど、片や嘆き、片や叱り。

犬の言葉なんざ、人間にゃー、わんとかあんとかわおんとかわふんとか……



『って、何私の事無視してるのよ。シバの癖に生意気な』


「ホント、桜ちゃんって可愛くて大人しいわね。うちのシバとは大違い」


桜とうちのねーさんの声が重なって、オレのハートは粉々さ☆

どっちにしても、オレァ貶される側かよ! ケッ!


『へ?』


そこでやっと気が付いて、がばっと顔を上げる。


そこには……


『ねーさんや!』


真横にねーさんが立っていた!

喜び勇んで、体全体で感情をあらわにする。っつーか、後ろ足で立ち上がって思いっきりその足に縋り付いた。


『オレ、死んだわけじゃなかったんだぁぁぁっ! よかった! ねーさんが天国にいるわけ……ぐはぁっ』


とたん、腹を思いっきり圧迫されて、うぇぇぇと(あくまでワォォォン)呻き声を上げる。

「何やってるの~、シバ」

少し困ったようなそれでも笑みを含んだ声に顔を上げれば、

『……』

目が全く笑っていなかった。


「あんた、こんなとこで何さかってんのよ。馬鹿じゃないの、ていうかむしろ馬鹿なんだから、せめて馬鹿さらさないでよ」




耳元で囁かれた言葉を、オレは一生忘れない。


それが本音か、マイ飼い主……






『エロシバ、何でもいいけどそこで伏せない方がいいと私思うけど?』


……呼び名が変わったぞ、コラ。


『うるせぇなぁ。今、オレは飼い主の本音を知って傷心中なんだから、そっとしておいてくんない?』

『あ、そう? そんなの今更な気がするけど。まぁ、お腹が凍傷にでもなっていいなら、そのままいれば? 私はごめんよ』


……は? 凍傷?

そういえば、すっげー寒いとか思って……


自分の真下の地面を見る。


『真っ白』


そのまま顔を上げて、あたりを見回す。


『真っ白?』


ぐるりと体ごと回って、風景を確認する。


なんか長い板を持った奴とか、アイスのスプーンみたいな形したでかい板持った奴とか(夏に目の前で食われて、貰えない悲劇)、て言うか皆一応に厚着とか。


『ここ何処ぉぉぉっ!?』


「うるさい、シバ!」


叫んだら、今度こそねーさんに怒鳴られた。








……やっぱ、ぬくぬくがいいよな。


『あんた……、ホント馬鹿ねぇ』


……雪降ったら犬は外で駆け回るとか思ってる奴!

そりゃ駆け回るけど、限度があるっちゅーねん。

あと、慣れもあるっちゅーねん。

オレの住む町は、冬でもあんまり雪の降らない場所だからな。

突然こんなところに連れてこられりゃ、喜んで駆け回る前にびっくりして心臓凍るわ!



ペットを預かってくれるという、飼い主にしてみりゃラッキーな、ペットにしてみてもラッキーな場所でぬくぬくと毛布の上に寝そべるオレ。

『普通気付かない? 寝てるからって、ゲージに入れられれば』

隣で桜も毛布に寝そべりながら、呆れた顔してわふっとあくびをした。

ていうか、いつ会ってもお前が眠そうなそのワケをオレは知りたいよ。

『気付かねーよ、全く。昨日だって、夜中までねーさんの独り言に付き合わされたんだからよー』

おかしいと思ったんだよ、特になんにもない日なのになんで夜眠れないとか言ってるのかってさ。

眠くてほとんど聞き流してたけど、思い出せば言ってたよ。

すきーとかすのぼーとか、雪とか二人きりとか。


『でも、オレには関係ないって思ってたんだけど。普通、連れてくるか? デートに飼い犬』

『にーちゃんねーさんなら、やるわね。現に私達ってば、ここにいるし』

まったくだ。ふぃっと外に目をやれば、恥ずかしそうに「すのぼー」とやらをやるねーさんと、教えてるんだか体触って照れてるだけなんだかのにーちゃんの姿。

『つっかあんだけ厚着してんだから、触ったって掴んだって握ったって、感触もなけりゃー触られてる方も何にも感じねーだろーよ。何、恥ずかしがってんだぁ? なぁ?』


わふわふと桜に顔を向けると、つぶらな瞳を(前も言ったけどオレも同じ瞳)これでもかと細めて、オレに向けた。

『いっとくけど、柴犬界全体がアンタと同じ思考じゃないからね。単純エロシバ』


おい、オレ様を飾る単語が増えたぞ。

まったく嬉しくない感じの。


『まだ二人とも、恋人未満なのよ。でも友達以上でもあるから、必要以上に反応しちゃうだけ』

わふ、と、気怠げにため息をついた桜をぽかんと口を開けて見つめた。


『お前何者? ホントに犬? 人間じゃなくて?』

オレの言葉に桜は一瞬目を見開くと(頑張ってもちっちゃい目だけどな!)、ふふ、と笑った。


『シバ、アンタ生まれ変わりって信じる?』

『へ?』


生まれ変わりぃぃ?


胡散臭そうな顔になっているのだろう。

桜は、ふっと笑った(感じ)。

『もともと、人間でOLやってたのよ。とある会社の総務でね』

『は?』

おーえる?

そーむ?

『あの、隣の課のしゅにんとかに虐められる同僚がいるような?』

『何、その具体的事例』

あ、いや。

最近、新聞で読んだ気がする話だったもんで。

しかも、そこに「桜」ってでてたもんで。

『人としての人生全うしたら犬とか、ありえないわよねぇ』

え、何その犬生悟っちゃったみたいな、気怠い感じ!

マジで!?

お前、人間の記憶持ってるとかなんとか……


信じられない目を向ければ、くすりと笑う。


『もう一度、人として生まれたかったわ。愛していた人がいたんですもの……』


『桜……』


それって、護とか溝口とか名前付かないよね……? (※拙作、きっと、それは参照)


桜は微かに口角を上げて(牙見えちゃうけどそこはスルーで)、毛布に顔を伏せた。

『せめて、夢で逢いたいから。早く飼い主たちがくっついてくれると、睡眠妨害されずにあの人に会えるのに……』


『……!』


ずきゅーんっ


その姿が、凄く寂しそうで。

生意気な言葉を吐く桜だけど、凄く悲しそうで。

オレのハートを撃ち抜いた。


『桜!』


思わず、ワオンッと叫ぶ。


『……』


桜は伏せたまま片眼を微かに上げて、オレをそのつぶらな瞳に映した。


『オレがいるじゃんか! そんな顔(しつこいけど、おんなじ顔)すんなよ!! 溝口なんか忘れちゃえ!!』


『は? 溝口?』


『いいじゃねーか、昔の事なんてっ! オレがいるだろ? オレじゃダメか?』


桜は伏せていた顔を上げて、オレを見つめた。


『オレにしとけよ、桜! だから……』


ここぞとばかりに、決め台詞を脳内反芻。

口を大きく開けて、桜を見据えて叫んだ。




『だから、ヤラせろ!!』


『逝ってよし!!』




ぽ~んっ



……桜に、外に蹴りだされた。







『あれ?』



「何やってるの、シバ!?」




きょとんと雪の上に座り込んだ俺に気が付いて、ねーさんが駆け寄ってくる。

オレは一体何が起きたのか分からなくて、桜とねーさんを交互に見つめた。


桜はオレを蹴りだしたドアから顔を覗かせると、「バカシバ」と呟いてそのまま毛布へと戻って行ってしまう。



「ちょっと、ホント馬鹿なんだから! 大人しくしてられないの?」

ねーさんが焦ったようにオレをもう一度引っ張っていこうとしたけれど、やっと魂が頭に戻ってきたオレはそれに抵抗した。

傍で見ていたにーちゃんが、困ったようにオレの傍に立つのが見える。



『……』



そんな二人をオレは見上げて。


思いっきり。




「うわっ!」

「きゃあっ!」




にーちゃんに、体当たりを食らわせた。


突然の行動ににーちゃんは対処できず、目の前のねーさんに抱きつくように雪の上に転がる。

一瞬の間の後、雪の上、抱き合って転がっている飼い主二人がいた。


『さっさとくっつきやがれ、両想い野郎め』


ニヒル(気分)な笑みを浮かべ、オレ様は桜のいるペット預り所へと戻った。






こっそりとドアから中に入ると、桜はさっきと同じ場所で隣の犬と喋っていた。

『アナタ、本当に元人間なの?』

隣の、見知らぬお仲間が桜に声を掛ける。

そんな直球で傷を抉ってくれるなよ、見知らぬおばちゃん(おばちゃん犬?)や。

桜が可愛そうになって話に割り込むべく歩き出すと、

『そんなわけないですよ』

にっこりと笑み付きの桜の声が聞こえた。

『え、でもアナタ今そう言って……』

『だってもう、飼い主に振り回されるのうんざりだし~、早くくっついちゃえば私ゆっくり眠れるし~。私深夜の韓流犬ドラマ毎週楽しみにしてるんですよ~』


……は? 韓流犬? って、ナニ?


『単純シバなら、あぁ言えば飼い主達をどうにかしてくれるかな~って思って。前も、アホみたいな事で意外とうまくいったし!』


……へ?


『読犬新聞の連載小説の登場人物設定、そのまんま言っただけなのに信じちゃうし! 上手くいったわ~。最後の一言がすごく余計だったけど!』


『あら、魔性の女ね!』


『だってシバと仲が良いとか噂されて、大好きだった(カレ)に振られちゃったんですよ!? これくらいしていいと思いません?』


『まぁ、それは仕方ないわねぇ』



やだぁ、あはは……



けらけらと、楽しそうだね、笑い声。(はからずも5.7.5)



……



『じゃねぇぞこらぁぁっ!』


二人で笑い合っているところに乱入していけば、胡乱気に眉間にしわを寄せた桜と目があった。




『何か?』



びくり、と、体が震える。



『……何でもございません』





……どこの世界も、男は黙って我慢が一番。さ☆


はははん……








新年、明けましたね^^

昨年は本当に色々ありました

今年が皆様にとって 良い一年となりますよう

お祈り申し上げます

皆様 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


頑張ります!


まだ更新再開はできないのですが、時間ができたので短編投下。

新年一発目がシバとか、それでいいのか篠宮楓(笑


きっと~、図書室~の更新は来週再開いたします。

よろしくお願いいたします^^

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― 新着の感想 ―
[一言] 今晩は♪ とても面白かったです、第二弾!! 次は第三弾も見られるんですかね? とにかく、楽しみにしています^^
[一言] シバの第二弾があったということは、第三弾があるということですね? 了解です! 今回も楽しかったので、また次回を楽しみにして待っています^^ ありがとうございました!!!
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