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LR  作者: 闇戸
二章
27/112

墜落艦

 観測班宛に学院から指令が届く。

 アレン諸島から西に20キロの地点へ行き、海上を漂う敵母艦を沈めろ、と。

 アルマが「ええと」と指令書に目を通す。

「消火班、ラフィル・エル・ヒザキを除いた遊撃班の五名でことに当たれ。だってさ」

「私は?」

 アリシアの質問に「そうそう」と応じる。

「アリシア・ロードウェルは残った面子の指揮のため残ること。

 残る面子は、クロケットのフェリーにてベルファストへ寄り、移動済の治癒班を回収してから学院に直帰することだって」

 敵母艦へのトドメは少数精鋭ということらしい。

「足は?」

「泣いて喜びたまえよ、セツナ君。ティル・ナ・ノーグから船を提供された」

「泣いて喜ぶ理由が分からないわ」

 船、に朱翠と璃摩が無言になる。

 森に住む妖精から提供されたという事実が、腑を落としてくれないようだ。

「誰も疑問に思ってないみたいなので質問!」

「どうしたラフィル・エル」

「梧桐先輩が入っていません」

 誰も触れないようにしていたことにラフィルが触れた。

 唐突に静かになった周囲に「え? え?」と動揺する。

「ラフィル。シュウは直帰組の護衛として一緒に帰るんだ。しっかり護ってもらえ」

「そうなんですか。はい、兄様。がんばって護ってもらいます!」

 セイジの言葉を素直に信じたらしい。はにかんで頭を撫でられている。

「ラインハルト。観測班で鎧が送受信している力が魔力なのか電波なのかを調べろ」

「ヒザキ兄が捕まえた奴だね。うん。それが終わったら捕虜達と一緒にロンドン行きに加えるよ」

「調査が終わったら、護送でも何でも好きにやってくれ」

 伝えることを終わらせて、港へと向かった。



 提供されたのは、妙に精巧に出来た木製の近代型ボートだった。

「エンジン動かしたら燃える?」

「エンジンないな」

「魔構じゃないってことか」

「珠がある」

「や、そんな鷲掴まなくても……動かない?」

 朱翠と璃摩のそんな会話。二人とも弱った表情でセイジを見た。

「これは多分俺では動かないぞ?」

 船には魔力が通っている。気と水の源理の魔法に似ている。

「はいはい。じゃ、私がやりますよ」

 しゃあねえな、な感じでセツナが珠に触れると、珠が青く光った。船が、動き出す。

「これ、結構難し……うは」

 制御失敗で、揺れる船。

「集中しろ」

「分かってるっつうの。でもこんなのはじめて。ちょっと待って」

「視たところ構造は魔構の類ではない。

 固定されている魔法にアクセスして……あぁ、神剣の類に似ているのか」

 超越者が扱う専用の武具を神剣といい、それ自体が一個の魔法に形を与えた存在であるため、セツナにもセイジが言わんとしていることはわからなくもないのだが。

「なるほど神剣……て分かるか!」

 転生でも降臨でもないセツナには専門外の説明であった。

「魔法……魔法の操作……外部からの操作? それだと確か」

 ブツブツ言いながらセツナが悪戦苦闘している後ろで、璃摩がお弁当を広げた。

「弁当?」

 朱翠が首をかしげる。

「第二班から回ってきた弁当なんだけどね。なんか嫌な予感がするんだ」

 セイジはコートの中に手を突っ込み、金毛の猫を取り出す。

「え猫?」

「フーッ!」

 キオーンはセイジに持たれたまま、璃摩に対して前足でシャドウボクシングを決める。

「キオーン、その食い物は平気か?」

「にゃ?」

 弁当の前に置かれ、鼻をひくつかせ前足で数度叩く。振り返って、前足を左右に振った。

「にゃあ」

「腹壊すからやめとけだとよ」

 そう言ってキオーンをコートに戻した。

「オリヴィエの取り巻きか」

「奴らはあまり物事を深く考えないからな」

 セイジにセレスが同意した。

「ハイエンドはプライドばかりの馬鹿が多いからな」

「私、ハイエンドなんだけど?」

 セイジの発言にセツナがジト目で振り向いた。

「全員とか言ってないだろ」

「あいつら、ハイエンドってだけでこっちも自分達の同類だって顔するから……あ、動く」

 ようやく船が再出発を開始する。

 そこそこ速いが、クロケットのフェリーほどではない。

「これだと一時間くらいですかね」

 璃摩の言葉にセイジは頷く。

「あそこから動いてなければな」

「あと、妨害がなければ」

「そうだな」

「で、なんでそんな離れてるんです?」

 セレスを盾にして璃摩と話すセイジであった。



「シュスイ、レンメル・クロケットから渡された予備刀を貸せ。マテリアルを補充してやる」

 セイジに言われ、素直に翠凰を渡す。柄のマテリアルは、昨日使用した火と風に該当する石が光を失ったままである。

 懐から、昨日、炎の巨人から奪った火の力を込めた赤い宝石を出し、柄の赤石に魔力の移送を始める。

「やはり、レンが一年の頃に開発していた補強装置だな」

「補強?」

「説明書にあっただろ? 振ってる内に周囲の魔力を吸収して石に溜めると」

 確かにそんなことが書いてあった。

「使い続けることが条件だからな。平時にはこうやって他から持ってくるしかない」

 赤石を灯してから、周囲の風から生成し緑石にも移送する。

「ラフィルが出来るから、あいつといる時はやってもらえ」

 朱翠はコクリと頷いた。

 作業を終了し翠凰を返却する。

「で、ラフィルやタカミヤとは上手くやっていけそうか?」

 セイジの声でタカミヤと呼ばれ、璃摩はセイジと朱翠に顔を向けて、セイジから目が放せなくなった。

 思わず、ほう、と溜息をが漏れる。

 優しそうな表情だった。神代でさえ見たことがない。思わず、見惚れてしまった。

(下級生間で伝わってる、ヒザキ兄のレア顔見たら絶対惚れるって、これかあ)

 顔はいいものの、源理魔法が使えないというだけで、学院内でのセイジの人気は高くはない。というか低い。

 天幻云々は同学年や教員、クエストを共にした十四期生くらいしか知らないため、十五期生に至っては狙いの対象に入ることはない。もちろん、恋の鞘当ての対象にである。

 だがそれも、身内や一部の友人に向けるレア顔を見るまでは。

「そうか。それはよかった。ラインハルトからの情報だけではなんとも分からなかったが、朱翠自身がそう言うなら、まあ、問題なしだ」

「セイジは身内に甘いな」

 セレスからのツッコミに「そうか?」と応じる。

「セツナからは厳しいとか言われるが」

「照れだな」


「おいそこ黙れ!」


 運転中のセツナの怒声。

 セイジとセレスは苦笑。

「それはそうと、セイジは教壇に立たないの?

 シュウの妹やそこのタカミヤの姉には基礎を教えたそうじゃない」

「大したことは教えていない。神州は魔法行使を生命変換法で教えていたから、そこを矯正しただけだ。あとは魔力運用だな」

「基礎、教えてるじゃない。てか、代用品で魔法教えてるとこってまだあるのね。タカミヤは代用品で?」

 いきなりセツナに話を振られ璃摩は「ふぇ?」と反応。

「あ、ああっと、矯正されました。学院に入学してすぐに」

 慌てて辻褄を合わせた。

「矯正入ってから、魔法や魔構使うのが結構楽になりました」

「でしょうね。魔力運用の基礎は夜寝る前の日課でやっておくと、下半期から始まる魔鉱剣運用の授業でヒーローになれるわね」

「学院に戻ったらさっそくやってみます」

「シュスイは矯正必要なの?」

 話を振られ、朱翠は首を振るが、運転中のセツナには見えない。

「基礎は父から教わっている」

 言葉に代えて答え直す。

「というかだな。魔力運用出来ていないと、クロケット製の道具使えないだろうが」

「それもそうね……と。

 無駄話終了! 見えてきた!」

 セツナの言葉が船内に緊張を呼び戻す。

 海上に巨大な金属製の島が浮いていた。

 落ちた衝撃によるものか、翼がもげ、尾だけがついたエイのような島だった。

 消火班三人が条件反射的に中を視通す。

「魔法でも魔構でもない?」

 セツナが三人の心を代弁した。

(やはりか)

 セイジは確認を取ったのみ。

「鎧……NBだっけ? その反応はあるけど、それ以外の反応がないわね」

「胴体下部に眠っているような反応を見せるのが大量にある」

「あら、ホント」

 二人から「どうする?」と聞かれ、セイジは船内の四人とドラゴンの成れの果てを見比べる。

「胴体下部の反応は外……海中からセレス」

「分かった」

「セツナはあそこの」

 胴の横辺りにハッチを見つけて指差す。

「あそこから侵入。シュスイ、セツナと行け。NBを排除しつつ解体しろ」

「OK。よろしく」

 朱翠はセツナに向かって頭を下げた。

「タカミヤ、お前は俺と来い。あの抉れた頭頂から侵入する」

 返事はない。

「おい」

 呼びかけても考え中のようで反応がない。

「をい」

 ぐわし。

「ぴっ?!」

 顔面鷲掴まれ、驚いて妙な声を上げた。

「にゃ、にゃんでしょう?」

「お前は、俺と、侵入だ」

「お、お前に俺が、侵入!?」

 メキィ。

 すごい音がした。

「セレスと息継ぎなしの海底散歩させてやろうか」

「じょ、じょうだ……でしゅ」

 ものすごい低音の脅迫に、ガクガクブルブルと璃摩が首を振った。



 ハッチを朱翠に斬り開かせて侵入したセツナは、内部の様子に目を見張る。

「なんて近未来チック」

 父から見せられた旧暦製のSF映画に出てきそうな宇宙船の通路がそこにはあった。

「これ、どうやって破壊したらいいと思う?」

 問われ、朱翠は首を一度かしげる。

「手当たり次第」

「帰ってこられなさそうね」

 ふむ、と再度悩む。

「炉の暴走」

「炉? 確かにそんなのがありそうね。こういう大きいのだと、特にやばげな大きさのが」

 よし、とセツナは頷く。

「じゃ、炉みたいなのを探しましょ。まずは地図を手に入れる」

 朱翠を従えて、ところ構わず部屋を漁りだした。

 しばらく漁って、通路の一角に区画マップなるものがあった。漁った成果は地図ではなく、数枚のカードキーくらいか。

「ふうん。艦橋と居住区は上か」

「そこはない」

「外観的に吹っ飛んでたね」

 艦橋と居住区画を示す位置は、一直線に抉られ、消滅していた。

「ええっと、engine room……? これかな? どこから行けば」

 朱翠が横の壁に顔を向ける。

 次にチンッと金属音。

「こっち」

 壁を押すと、ガコッと音を立てて壁に円形の穴が開いた。

 セツナ、無言。そして、吐息。

「つまらないもの斬りすぎじゃ」

「どうせ壊す」

「いや、そうだけど……まあ、便利だから許す」

「では」

 再び金属音。そして、浮遊感。落ちていく。

「足下禁止!」

 ともあれ、原始的なショートカットで進んだ先で、いかにも強固な扉が姿を出現する。

 朱翠は扉に手を当てて、首を振った。

「厚すぎる」

「ということは、これが役に立つわね」

 出したのはカードキー。セツナが見るのは壁に設置されたカードリーダー。

 カードの数は四枚。

 カードリーダーの数も四機。

「カードの数字と一致するリーダーに通すようね」

 とりえず一枚通してみる。

 ピッ…………ピー

 通して数秒すると、通した時に点灯するランプが消える。

「他のも光った」

 朱翠の指摘。一枚を通したら他のも連動したらしい。

「同時に通せってことか。じゃ、はい」

 二枚を朱翠に渡し、自分も二枚持って一緒にリーダーに添える。

「さん、はいで」

 コクリと頷く。

 合図に従って、四枚同時にカードが読み込まれると、強固な扉はスライドして開く。

「正解っと、ありゃ、後ろから鎧さんご一行の到着」

 ショートカットしてきたおかげで遭遇してこなかったが、ここにきてようやく、NB達が群れをなして殺到してきた。

 朱翠はセツナとNBの間に立ち、翠凰を構えた。

「君ならそんなに時間もかからないでしょ。ってことでよろしく」

 朱翠の頷きも見ずに、セツナは開放されたエリアに侵入する。

「んん~? エンジンとか言うから船のそれを想像してたんだけど……」

 見回して首をかしげる。

「ええっと、書庫? なんで書庫?」

 広大な空間にギッシリと金属製の本棚が埋まった部屋。中に収まるべき本は床に散乱している。

(宇宙戦争物にロボット戦記物? というか、そんなのばっかり。うっわ、偏りすぎ)

 蔵書の偏りっぷりに辟易しながら、最奥まで来ると、そこには一台のパソコン。本棚から伸びた無数のコードがパソコンに接続されていた。

 パソコンは壁に直接埋め込まれているのか、特に損傷は見られない。

 とりあえず電源をオンにする。

 周囲にNBや人などの魔力もないため、椅子に座ってパソコンの立ち上がりを待つ。

「遅い…………お? 来た来た」

【Please CardKey】

「カードキー? さっきのやつ?」

 パソコン周囲の右を見て左を見て、リーダーを発見。四枚とも順に通してみる。

【…………OK】

【Search】

 いきなり光に照らされる。それはスポットライトのようだったが、すぐに消えた。

【国連対聖堂鎮圧部隊少尉・日崎司の遺伝子を確認……本人ではないことを確認しました】

 唐突にスピーカーから旧日本語による機械音声。

「はい?」

 内容に、セツナの頬が引き攣る。

【聖堂日本支部長代理の指示により、閲覧を許可します】

「なにがどうなって」

 セツナの戸惑いなど関係なく、モニターにザッと情報が流れていく。

 戸惑いつつも内容には目を通す。

(てか聖堂って何?)

 ほとんどの情報はデータ破損により閲覧が出来ない。遺伝子確認とか訳の分からない機能は生きているのに。

 セツナは肩を落とした。

(エンジンルームに来たはずなのに、書庫はあるしパソコンも……てゆうか、なんでここでパパの名前が出るの?)

 気づけば、モニターの中で【Y/N】の表示が点滅していた。

「? とりあえず……Y?」

 ポチ。

 再び情報がが流れていき、パスワードの入力画面が表示された。

 入力画面の後ろになにやら文章が浮かんでいる。

「んーと、これ何語?」

 英語でもなければ、フランス語、ドイツ語でもない。

「ラテン語」

 後ろからの声。振り返れば、朱翠がやってきていた。汗の一つもかいてはいない。

「おつかれ」

「そうでもない」

「読めるの?」

「一応」


『天の水門は開かれ、大いなる泉は地に満ちた』


『そも原因となりしネフィリムは神の子と人の子の過ちにより生まれり』


『神の子が抱く心なくば過ちなし』


『我、人の子に知識与えし神の子を断罪せん』


『地に死を蒔いた神の子の名を唱えよ』


『神の如き強者の真名を』


 読み終わった朱翠は眉をひそめ、セツナは首をかしげる。

「ヒントってこと?」

「ヒントは二段目と最後の二節。他は死者の恨み言」

「分かるの?」

 朱翠は頷く。

「神の如き強者、それはアザゼル」

「スペルは?」

「AZAZEL」

 言葉の通りに入力してEnter。

「はてさて、どんな情報が来るのかしらん」

【炉の再起動コードを確認致しました】

「そういう方向かよ?!」

「失敗」

 セツナ、愕然。

 朱翠はキョロキョロと辺りを見回す。

 セツナもとりあえず周囲を視る。視て、上を向いたまま止まる。最初に見た時にはなかった反応が、上に在る! 天井よりも更に上にだ!

(これって、神魂? そう、神魂だ!

 ラフィルに近い、でもホリンに近いと言われても納得しそうだけど、間違いない!)

 近くには、セイジの反応もある。

「ライナーがいる! シュスイ、上行くよ!」

 そう言って、拳の緑石に集中しようとして、モニターが視界に入る。

 パソコンは電源が落ちようとしていたが、最後とばかりにあるメッセージを表示させていた。そしてキーボード上に今までは存在していなかった紙切れが載っていた。

 それを見て、一瞬、集中を途切れさせるが、すぐに再集中。

「天井を斬りなさい!」

「承知」

「アップドラフト!」

 飛行でも浮遊でもなく、自分の周囲を一気に上へと巻き上げる魔法。屋内で使用するには危険極まりないものだが、今は朱翠がいる。

 セツナは朱翠と共に、上の階層に向けて最速でかっ飛んだ。



 ドラゴンの背骨付近を目指して、セイジは璃摩と共に、貫通粉砕されてもげ落ちた首元から上に登る。

 爆砕した辺りには、たまに人の身体の一部とも思える炭化したものが転がっている。

(首はどこへ行ったんだ?)

 沈んだんだろうか。どこかに飛んだ可能性もある。

(首は今考えてもしょうがない。まずは胴体だ。めぼしいものがあればいいが)

 気になるのは絶技前に一瞬だけ見えた奇妙な反応。璃摩は気づいていなかったが。

「タカミヤ、絶技前に本当に何も見なかったのか?」

「あの時は、甕星さんの神気を感じてうれしくなってたので」

「悪い。忘れてくれ」

「というかですね? 昨日のようにリマとは呼んでくれない、と」

「そんな記憶はない。事実があったとしても俺の記憶には、ない」

 璃摩は、ムーッと頬を膨らませた。

 見事に穿ってしまっている場所を登る。

「ほら、さっさと来い」

 傾斜の強いところは、後ろを振り返り手を差し出す。むくれてはいるが、素直にその手を取ってついてくる。

「どうしてボクと組むんです?」

「相性の問題だ」

「そこはかとなく恥ずかしい響きがあるんですが」

 璃摩の反応に吐息。

「おま……俺と君は魔力の相性がいい。おそらく、現状不可能と思える天幻と融合する攻撃手段が可能になる。

 戦闘スタイルだけなら相性の合う相手は見つけやすいが、魔力の相性というものは、そうそう合うものでもない」

 珍しい、と言う。

「昨夜言ってた利用って奴です?」

「そんなところだ。ここがてっぺんか」

 見回せば、ベッドやら椅子やらの破片が転がっている。居住区画のようだ。

「人のいるべき場所はアレで消えた、か」

「後悔でも?」

「まさか。セツナならまだしも、リンカーの類にそんな神経はない。君もそうだろ?」

「まあ、それも、そうなんですが」

(じゃあなんで、そんなに悲しそうな目をするんですか?)

 本人が気づいていないだけで、まったくないわけでもないのだろう。それとも、ないフリをしているのか。

「ここから入るぞ」

 爆砕した時に空いたの思われる穴に煤けた背中が消えていく。深く考えることはやめて、その背中を追った。

 通路は狭く、弓を構えて射るには難しそうな場所に出た。通路の先にNB二体が護る扉が見える。

「NBがいるな。ダーツは出来るか?」

「誰に物言いますかね」

 指の間に手品のようにダーツを出して見せた。

「てか、あの鎧結構硬いんで、ダーツ意味ないっすよ」

「問題ない。ちゃんと魔力は通せよ?」

「そりゃ、まあ。外見ちゃちぃけどちゃんとした魔構なんで」

 構え……セイジに顔を向ける。

「ホントに投げますよ?」

「Hurry」

 知りませんよ、とダーツを交差でNB二体に向けて投げた。

 直後、セイジがパチンと指を鳴らす。射線上に琥珀色の小さな方陣が出現し、ダーツはそこに吸い込まれ――恐ろしい速度の弾丸と化し、NBへと命中。NBごと爆散した。

「は? え……はい? や、確かに火薬入ってるけど……や、ホント、ちょっと……ねえ?」

 投げた本人は混乱。救いを求めてセイジを見つめてくる。

「道行く速度と破砕の速度を上昇させる位相を使ったんだが……、ふむ、ちと強かったか」

「ちと、とかそんなレベルじゃないです!

 そういう便利なものがあるなら、瞬間移動とか出来そうじゃないですか?!」

「無理だ。

 距離の位相の変位した空間は、全身が魔力の幻獣や物品であれば通れるんだが、生物がそれをやろうとすると魔力以外の部分が壊死する。

 場所を動かさず、位相だけを変位させた空間なら生物も存在出来るんだがな。例としては、俺の工房。位相ずらして物を詰め込んでいる」

 さっさと先へと歩き出すセイジに置いて行かれそうになり、慌てて追いかける。

「実証は出来た。学院に帰ったら、他の実験にも付き合ってもらうとしよう」

「や、ボクにだって予定というものがですね」

「それは残念だ」

 さして残念そうでもない口調で残念がりながら、NBが護っていた扉に触れる。

 鍵はない。扉は大して厚くもなさそうだ。

「レイ・オン・ハンド」

 ガントレットを起動させる。

「エンチャント・パワー。少し下がれ」

 璃摩をどけてから、思いきり扉を殴りつける。三発目で扉は折れ曲がり、先への道が開く。

「天幻とかで開けられないんすか?」

「こっちが手っ取り早い」

「美しくはないですね」

「手っ取り早さと美しさは反比例する。覚えておけ」

 そんな会話を交わして入ったのは、薄暗い円筒状の一室。明かりはなく、部屋の中央になにやら円柱がある。

 セイジはコートからガラス玉を取り出し、指で弾いてから床に転がす。室内が明るく照らされた。

「う?」

「これは」

 璃摩は呻き、セイジは知らず呟く。

 円柱は緑の液体が入ったカプセル。中には青年が一人入っていた。

「マッドでサイエンティックな人の研究所か何か?」

「でかくて奇抜な研究所だな」

「死んでる?」

 璃摩の言葉を受けて、青年を視る。微かに魔力はある。だが、近く目を凝らしてみないと分からない程度の強さだ。

「冬眠でもしてるんじゃないか? うん?」

 突然、周囲に明かりが灯る。見回そうとしたが、それはやめる。


 ゴボッ


 カプセル内に変化が生じる。青年が大きく息をしたらしく、水泡が大きく発せられた。

 そして、目が開く。

 思わず、視直す。

(な、に?)

 ほんの数分前には微弱だった魔力が、今、徐々に回復していっている。しかも、セイジを驚かすのは別の理由。

「タカミヤ、離れろ! こいつ、超越者だ!」

 二人ともカプセルから距離を取る。

 青年はただジッと、セイジのことを見続ける。

 そして、カプセルが内側から粉々に割れた。

 緑の液体が床に流れ、野性的な裸体の青年がユラリと立つ。

 赤髪翠眼の青年は自らを見下ろすと、パチンと一度指を鳴らす。身体が黒い革ジャン革パンツの古っぽいファッションに包まれた。

「司……にしては色が派手だな。璃々といるのもおかしい」

 青年の表情は怪訝。

「うちの父を知っている?」

「なんで母のこと」

 セイジと璃摩が漏らした言葉に、青年はニィッと口の端を歪ませた。

「なんだてめえら、あいつらのガキか」

 ハハハ、と笑った後に、獰猛な笑みを浮かべる。

「ああ、そうか。司の餓鬼か!」

 バサリと青年の背に一対の深紅の翼、炎の翼が開かれ、熱風が吹き荒れた。

 天井も壁も溶け落ちる。床も溶け落ちそうになったその時、床の一部が斬り開かれ突風。セツナと朱翠が飛び込んできた。



「なんでこお、二日連続で熱いの相手にしないといかんのだ」

 溶けた天井から、セツナの風で巻き上げられたセイジと璃摩。思わずセイジが愚痴を言う。

「セイジ! あいつがこの母艦の炉よ!」

 海上に浮くドラゴンの翼に着地し、あの青年の姿を視界に収める。

(そうか。あの時見たのはあいつの光だったのか)

 ドラゴンの浮遊などエネルギーを消費する際に、青年の力が使用されていたらしい。

「あれはやばい。昨日の巨人の比じゃないぞ」

「そうね。私もあんなライナー見たことないわ」

 夕刻にはまだ遠く、亜神化など出来そうもない。

 青年は増えた闖入者を見て「ほお」と漏らす。

「裏使徒の侍に似てるのもいるとは、千客万来じゃねえか。まあ、とりあえず、司の餓鬼だな」

 フッ、と嗤う。

「アレは……絶対に……」

 大きく羽ばたき、邪魔な壁も何もかも溶かし飛ばし、腕と足に紅蓮の爪を生み出してドラゴンの翼へとぶっ飛んできた。

 琥珀の双剣を出す暇もない。

 セイジは跳躍し、青年を受け止める。翼を越え、海上に出て、青年の上へと勢いをつけて乗り越えて背中に膝を落とす。

「あっつ」

 青年ごと海に落ちる。

 海水は一瞬で沸騰し湯立つ。

 青年を蹴り押し、自分は海上へと逃れようとする。とどまるのは危険過ぎる。

 エンジニアブーツのバックルに触れる。ブーツが光り、海上へと押し上げられた。

 そのまま海上を走り、青年から離れようとする。

(ともかく海中はまずい。海中で戦う方法なんか持ってないぞ)

 かといって、空中戦も出来ないのだが。

【セイジ、胴体に捉えられていた幻獣は解放済だ。あれを足場にしろ】

 インカムからセレスの助言。

「ありがたい! エンチャント・ヘイスト!」

 高速で足を動かしてドラゴンの胴体へと向かう。海上を、走り抜ける。

 走りながら空間に左で爪を立て、右で海からマテリアルを抽出し、胴体を一周して至る。

 セイジが胴体上に到達し、青年からやや逃げ気味に攻防を開始。

「シュスイ、あれに介入出来る?」

「止めなくていいのか」

「止める?」

「敵ではない」

 あのパソコンが最後に写したメッセージ。

「見てたの」

 朱翠は紙切れをセツナに渡す。持ってきていたらしい。

「刹那さんはどうしたい」

「私は……そうねぇ」

 ふむ、と一考し紙切れを見る。

「傷をつけずに拘束しなさい。コッソリ隙を突けばやれるでしょ」

 朱翠はコクリと頷いた。

「タカミヤは……?」

 璃摩にもセイジの援護を頼もうとして、当の本人がいないことに気がついた。



「雲は薄衣 朧羽衣」

 遙か上空、雲に立った璃摩は髪を銀に染め、自らの神剣・月天弓を構え、セイジと相対する青年に狙いを定める。

「追の射」

 呟き銀光を放つ。



 紅蓮の爪を避け振り抜かれた腕の逆側へと回り込み、空いた脇腹に蒼光を押しつけ、体内に押し込む。

 裏拳を寸前で避けて距離を取る。その直前にクリエイト・マテリアルを解除。魔法によって圧縮されていた魔力が一気に膨張する。

 青年は脇腹に生じた異常事態に即刻反応。爪で腹ごと抉って異常事態を排除した。

「小賢しい!」

 炎の噴出で加速された蹴りが飛んでくる。

 受けようとして迫る魔力に反応。バックステップしながら、指弾で琥珀を飛ばして飛来するモノに合わせる。接触、速度を倍加したソレが青年の片翼を貫き爆砕。青年が大きく体勢を崩す。

 セイジは仕掛の糸を引く。

 周囲に爪を立てられた空間の刃が中央に向けて引き絞られる。刃は青年を捉え、そのまま振り抜き、その身体を真っ二つに斬り裂いた。

 分かたれる青年を安堵して見ようとして、その顔を引き攣らせる。青年が嗤ったのだ。

 右と左の腕で分離した左と右を抱き留めて、合わせてズラして元通り。

(馬鹿な。ライナーも人間同様死ぬ存在のはずだ。こんなデタラメなはずが)

 分断されて再生する存在を倒す方法など知らない。

 甕星の記憶にすらない。

 どのような幻獣でも、死に繋がる一手は必ず存在する。

 だがこの青年に対しては何も思いつかない。

 琥珀の双剣を構成し、青年の爪を受ける。受け流し、斬撃を受けられて腹を蹴られ、飛ばされる。

 青年の外見、シルエットは天使に見える。魔力の構成はホリンよりもラフィルに近い。だが近いだけで同質とは思えない。

(裏使徒のジーニアス神父に似ているとも言えるが)

 師との旅の途中であった神父は堕天使であったが、それとも異なると断言出来る。

(じゃあ、こいつは本当になんなんだ?)

 攻撃をすべて剣でさばかれて、青年は舌打ち。

 一端距離を置いて爪を消し、左腕に電気を纏い、動きを止めた。背後から、首筋にピタリと添えられた刃があった。

「魔剣。これなら殺せる」

「幻想武器かよ」

 マスクをした朱翠が青年の斜め後ろに立っていた。

「シュスイ、ナイス。あなた、いいNINJAになれるわよ」

 セツナは「うんしょ」と登ってきてそんなことを言う。ノンビリと。

 忍者は嫌だな、と思いつつ、朱翠は微動だにせず、青年の動きを阻害する。

「殺るのか殺らねえのか。それとも殺り合いたいのか、はっきりしやがれ」

「セツナ、危ないから下がってろ」

 がんばって登ってきた少女に、殺気だった言葉が投げられる。二人分も。

「セイジはシフトしないなら黙って観戦するか逃げるかしなさい。どうせ神剣じゃなきゃ倒せないんだし」

「お前、こいつがなんなのか分かるのか?」

「知らない。でもなんとかする」

(起動させたの自分だし)

 それなりに、適当にYを押したことを気にはしていたらしい。

「あなたがアザゼルね?」

 セツナはそう、青年を呼び、青年……アザゼルはセツナを睨みつけた。

「とりあえず言っておくわ。

 なんとか戦争というのはとっくに終わってる。ツカサ・ヒザキはもうあなたの敵じゃないわ」

「「なんとか?」」

 セイジと朱翠がそこに反応。意味不明すぎる。

「ふん。戦争が終わったことくらい知っている。あいつが死んだんだから終わって当然だ。終わってなかったら、無理矢理にでも終わらせる。

 何より、司や璃々を親っつってるでかい餓鬼がいるんだ。時間が経ってることくらいも分かる」

「じゃ、無駄な戦いはしないことね」

 そう言って、紙切れをアザゼルの目の前にかざす。

 書かれているものを読んで、アザゼルは無言で手を下ろす。

「一つ聞く」

「なにかしら?」

「こいつを浮上させたのはお前らか?」

「解体してぶち壊そうとはしてるわね」

 つまり違うと。

「ぶち壊す、ね」

 クククと喉を震わし、愉快そうに腹を抱える。

「てめえも司の身内か」

「娘で、あなたが殺り合ってたこいつの双子ね」

「こりゃ、いい。

 一応言っておくと、別に殺してやろうとしていたわけじゃねえ。遊んでただけだぜ? なあ」

 セイジは話を振られ「いや、殺し合いでしたよ?」と応じる。

 あんなじゃれ合いは嫌だ。

 セツナに目配せされ、朱翠が刃を収める。

「それじゃ、お遊びは終了ということでOK?」

「OKOK」

「ツカサ・ヒザキは敵ではないでOK?」

「本人にあったら分からんが、今はそれでOKだ」

「いささか不安の残る答だけど、今はそれでいいわ。

 じゃあ、私達はもう戦わない。OK?」

「お前ら、とはな」

「嘘付いたら腹パンね。今度は処理なしで」

 アザゼルが自身で抉った腹部を指差す。そこにはもう新しい腹が再生していた。

「分かった分かった。こっちも痛みはあるからな」

 セツナはパンパンと手を叩く。

「はい、じゃあ、物騒なの終了。こいつ沈めてさっさと帰るわよ!」

「それが一番物騒だ」

 妹の言葉に突っ込んで、剣を収めた。



 セイジの背後に璃摩が降り立つ。色は既に戻っている。

「どうなったんです?」

「セツナが場を仕切った」

「刹那先輩すごいですね」

「まあ、な。かなり無理矢理だが、らしいと言えばらしい」

 視界の中で、セツナに文句を言いながらも空母を熔解しているアザゼルを眺める。

 アザゼルはセイジに「悪かった」とだけ言った。悪びれもせず、ただ笑ってだが、別に悪い気はしなかった。そんな笑いだ。

(服ボロボロだけどな)

 膝を入れた時に膝は炭化して燃え落ち、右足だけ半ズボン状態。コートも半壊。袖がない。

「それより、援護は助かった。タイミング良すぎて泣ける」

 璃摩にそう声をかける。

「惚れました?」

「君が答を出せたら、その場で抱きしめて口吻をしてもいいと思えるくらいには」

「がんばって答出します!」

「出す頃にはそんな気持ちも薄れているだろうがな。吊り橋効果と言うんだろ?」

「酷すぎる。でも薄れる前にがんばる」

 璃摩と冗談を言い合い、解体作業中のセツナ達から離れ、海の上に立つセレスの元へ行く。

 セレスの後ろには、巨大な泡で包まれた数十体の妖精達がグッタリしていた。

「眠らされている。一応、問題はなさそうだ」

「しかし、早いところ彼ら専門の医者に診せないとな」

「ああ。先に行ってもいいか?」

 セツナ達の解体はもう少しかかりそうだ。

「ああ。ゴールウェイでな」

 泡を引っ張っていくセレスを見送り、木の船へと乗り込む。解体ではやることがない。

 ぼんやりとアザゼルを眺める。

(魔法が効かず、魔剣を幻想武器と呼んで恐れる存在。魔法と魔剣・神剣は違うのか?)

 新たな研究課題として認識する。

「今回のって、なんなんすかね?」

 唐突にそんな質問がくる。

「アメリカとしては無駄に人命を失い、巨大空挺母艦を墜とされ、幻獣をまったく連れ帰れずだ。損失しかないように見えるな」

「実験とか」

「実験、ねえ」

 実験と言われて思い至るのは、スピーカー越しに聞いたロイド・ギアという男の声。

 あれを思い出すと違うと否定出来なくなる。

 ホリンを巨人に閉じ込めたのは間違いなくReHumanProjectの一端。あれがあるということはあの男も関与しているのだろうか。

 あの変態とだけは因縁とか持ちたくないと思うセイジであった。



 ワシントン、ホワイトハウスの大統領執務室で、マイケル・ラックスター大統領は頭を抱えていた。

 数時間前、東海岸が津波に襲われた。襲われる前に魔構兵が出動しており、被害はふせげたものの、マスコミが騒ぎ出した。

 その後、軍施設内で任務中であった二千人の兵が全滅したこと、津波が兵の死亡に関与していることがニュースで報じられた。

 今、ホワイトハウス前はデモ隊とSP達で悶着が起こっている。

 ブリテン連合王国に派兵したこと自体は問題になってはいない。問題は、短期間で全滅させられたことである。

 時間と金をかけて再生させた空挺母艦ハルパーまで墜とされた。

 ハルパー撃墜で、暴動まで発生した州もある。

 電話のコール音。

 出て告げられたのは、神聖メシーカが反撃を開始。奪い取った領土が奪い返され始めたとのことだ。

 トロイ・ギアとは連絡が取れない。

 ワールド・ギアでもギア財団でも、誰も自分と連絡を取ろうとしない。

 再びコール。

【マイケル】

「おお、エド」

 相手はエドワード・ギア副大統領。

【残念だ。とても残念だよ】

 ひどく沈んだ声で残念と繰り返される。

「それより聞いてくれ。国防長官と連絡が取れないんだ」

【エイムズなら先程自決した】

「なんだって? すまんがもう一度頼む」

【エイムズ国防長官は、今回の責任を取って自決した】

 聞き直し、聞かされたことにしばらく思考が停止する。

【我々は、神聖メシーカを長く打倒出来ないばかりか、ブリテン連合に派兵し貴重な兵を損失させた君には、大統領の責務を果たし権限を執行出来ないと判断し、君を更迭することにした】

 エドワードの言葉が理解出来ない。

「ま、待ってくれ。ブリテンへの派兵はギアが」

【許可を出したのは君だ】

 電話が切られた。

 震えが止まらない。

 自分はあの時、一体何に了承のサインをしてしまったのか。こうなって尚、マイケルは頭を抱えるばかりで理解しなかった。



「神聖メシーカから撤退し、防衛に魔構兵を当てろ」

 マイケルとの電話を切ったエドワードは、目の前に揃うトロイとロイドにそう告げる。

「はい、副大統領。では、私はこれで」

 トロイが退室し、ロイドが残る。

 ロイドはエドワードの机上のチョコレートを口にする。

「ここからだね」

「うむ。だが、ハルパーを失ったのは痛いぞ」

「まあ、ね。

 まさかコアを再起動させられるとは思わなかった。僕達で出来ないことをやられると、さすがにへこむね。

 あれがあればセカンドをすぐにでも起こせたのに……」

 時間がかかると嘆く。

「とはいえ、ReHumanProjectの方はちょっと進んだかな。問題なく次の作戦は遂行可能だよ」

「ならばよい」

「そういえば、結局メルカード……いやこの場合はアルカナムか。彼らは将を使っただけで結局奥の手は出さなかったんだよねえ?」

「ロンドンの急襲は、国防騎士団と数名の傭兵により失敗した。アルカナムの介入に関しては、将を傭兵に派遣したとあるくらいか」

「あそこも、さっさと表舞台に引きずり出さないと、ね。そうしないと、本格的な世界大戦は起こらないからね。

 将じゃ、駄目なんだよ」

 チョコレートを鷲掴みで数個取り出して、副大統領のオフィスを出て行った。

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