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LR  作者: 闇戸
二章
20/112

歯車の動向

◆ワシントン、ホワイトハウスの大統領執務室にて


 二人の男が執務机を挟んでいる。

 一人は初老の男、マイケル・ラックスター合衆国大統領。

 一人はメタルアーマーを着込んだ青年、トロイ・ギア。ワールド・ギアの私設武装部隊の責任者である。

「ミスター・ギア。君達がもたらした兵器により、神聖メシーカももはや風前の灯火のようだな。感謝している」

「はい、大統領。祖国のために役立つことが出来、ロイド共々光栄であります」

 ワールド・ギアがアメリカ軍にもたらした新兵器、鋼鉄の巨人サイクロプス。これが十体投入されて3日で神聖メシーカの国土を半分掌握した。

 神聖メシーカは未だ多くの超越者達を有するが、国土を半分失わせたことで、アメリカ軍も勢いに乗っている。これを指して風前の灯火と言っているのだろう。

「さて、今日来てもらったのは、ロイド殿の情報についてだ」

「神州の動向ですか」

「うむ。あのサイクロプスを僅か二人で倒すリンカーの存在。そして、記憶を封じたと喧伝していた彼らの女神が蘇り、軍備の増強を開始したという話。事実かね?」

「はい、大統領。私もデータを確認し事実であることを誓います」

 正確には違う。

 東京の湾港で行われたサイクロプスの戦闘は、神州政府の与り知らぬことであり、天宮璃央が天照の記憶を覚醒させたこと自体、未だ知る者は少ない。

 軍備の増強は疑心暗鬼が生んだ、ただの噂である。

 それを知って尚、この一部的な情報を事実として納得するふりをする。

「サイクロプスを大量に派遣したとして、勝てると思うか?」

「残念ながら、難しいかと思われます。

 記録映像において、リンカーが一人シフトを行った後、サイクロプスは一撃で破壊されておりました。神州に対抗するには現状の戦力では足りないでしょう」

 大統領は唸る。

 神州と国交を絶ってからはや十五年。

 神州が戦力を整え次第、攻めてきて広島長崎の報復をされる。そんな古い恐怖を抱き続けてきたが、今まさにその時が来たと震え上がる。

「ですが大統領、提案がございます」

「聞かせてくれたまえ」

「はい、大統領。

 我が国は幻獣兵器が不足しております。兵の生存率を上げるためにも幻獣兵器を補う必要があります。そこで我々ギアは、ガーデンを攻め幻獣を捕獲することを具申致します」

「しかしガーデンには幻獣の他にも神々がいるのではないかね?」

「その点はご安心を。彼の地の神々は世界中に散らばり、各地でそのリンカーを確認しております。

 我がアメリカの進行を彼らが阻むことなど出来ません」

「ふむ……。よろしい、では空挺母艦ハルパーを用い、ガーデンを強襲したまえ」

「はい、大統領。お任せを」

 トロイは敬礼し大統領執務室を退室した。





◆副大統領オフィスにて


 恰幅の良い壮年の男が応接ソファーに座る。その向かいにはロイド・ギアの姿があった。

 壮年の男はエドワード・ギア、副大統領である。

 ロイドは携帯をしまうとケタケタ笑った。

「あの無能、トロイの案を飲んだってさ」

「ふん。ガーデンを攻めて、たとえ妖精を筆頭にする幻獣を捕獲したところで、人的損害は計り知れまい。

 彼の地の間近にはミスロジカルが存在するのだからな」

「ま、あの無能の脳内には、ガーデンの防衛はイギリス国防騎士団くらいしか思い至らないだろうさ。

 まさか、学生が戦力になるとは思ってもいないだろうからねえ」

「意図的に彼らのことを隠しておいて、よくも言う。

 時期的に見て、ガーデンとの戦闘に入る当たりに神聖メシーカの反撃も始まる。軍は東と南で大打撃を受け、大統領は責任を取らされよう」

 狙うはトップの失脚。大統領が失脚すれば、権限は副大統領に引き継がれる。

 ギアの狙いはそこにある。

「好き勝手したかったら国の頭取らないとねえ? 財団はそのためにエド叔父さんに援助してきたんだからさあ」

「分かっている。すべてはギアのため。我々はただ歯車であれば良いのだ」


 オフィスの屋上で、ロイドはワシントンという町を見下ろす。

(違うな、叔父さん。

 我々ではない。歯車は君達でいいんだ。

 我々、指揮者の演奏会のね)

 指で銃を作り、ホワイトハウスに向けて「バンッ」とやってみた。

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