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LR  作者: 闇戸
一章
16/112

エピローグ

 烈士隊はほぼ廃人と化したミヒャイルを連行し、半ばまで神魂を差し込まれた箱を回収していった。

 正義は厳しい表情でセイジと璃央の前に立つ。

「九曜頂・天宮璃央、状況を説明していただきたい」

「え、九曜頂?」

 正義の言葉にセイジは思わず璃央を見る。その視線を受けて、璃央は苦笑した。正義はセイジを睨みつける。なんだこいつは、と。

「星司さんだって九曜頂じゃないですか。そんなに驚かないでください。

 説明もなにも、こちらの九曜頂・日崎星司さんと共に、転生狩りと九曜・天宮の屋敷を襲撃した犯人を討伐しにきただけです」

「九曜頂……日崎?」

 正義は胡散臭そうにセイジを見る。その視線に、セイジではなく璃央はムッとする。

「お祖父様が保証してくれますし、九曜頂クラスの保証がほしければ、九曜頂・神薙龍也さんにお聞きすればよろしいかと」

「いえ、九曜頂・天宮殿のお言葉を信じます」

 敬礼で答えた。

「それでは私達はここで失礼させていただきます。よろしいですね?」

「はっ、承知致しました」

 正義は敬礼を続け、足早に立ち去る二人を睨み続けた。



「ピー!!」

 もの悲しい鳴き声を上げて、グリフォン型幻獣がセイジと璃央の前に降り立った。そこに向けて十数名の烈士隊員が殺到してくるが、璃央の姿を見つけると急ブレーキした。

「天宮様! その幻獣は危険ですのでお下がりを!」

 忠告に、璃央は「危険なんですか?」とセイジに訪ねる。

「キオーンは元々そんなに戦う力は持っていない。まだ子供だしな」

 まだ納得のいっていないらしい烈士隊を下がらせる。

「キュ!」

「怒るなよ。子供なのは事実だろうが」

「キュキュ」

「そりゃ、まあ、そうだが」

「キュイ」

 幻獣は璃央を見つめる。

「ええっと?」

「俺と君を乗せて飛んだら成長を認めろと」

「乗れるんですか?!」

 璃央の言葉に頷き、璃央を前にして幻獣の背に乗る。二人を乗せて幻獣は飛び立った。

 東京の町を見下ろして感動する璃央。それをセイジは優しげに見守った。



 やがて天宮の屋敷に降り立つと、幻獣は二人を下ろして姿を消した。

 屋敷には央輝と澄がバイク共々集まっていた。

「お祖父様、ただいま戻りました」

「うむ」

 セイジは澄に「よくやった」とねぎらいの言葉をかける。

「大変でしたが、ちゃんと乗りこなしましたよ?」

「往復出来たのが証拠だな」

「はい!」

「もし覚悟があるなら、ミスロジカルに来るといい。渡航手段はこちらで用意する」

「マジですか?! じゃ、じゃあ、夏休みに行っても?」

「クエストは受けずに空けておこう」

「やったあああああ……って、なんか師匠、感じ変わりましたね」

 飛び跳ねたかと思うと、唐突にヒソヒソ声でセイジに囁く。近づいた澄に、璃央が若干柳眉を逆立てた。

「そんなことはない」

「本当に?」

「本当に」

 セイジは澄から離れて央輝の前、璃央の隣に立ちミスロジカル魔導学院の学生証を渡した。

「転生狩りの犯人は逮捕。今回の件に関わった神祇官はまとめて一掃され、ギアの関係者は逮捕前に国を出た。

 なんにしても、クエストは終了じゃな。護衛の任はこれで解く。学院に戻りたまえ」

 央輝はセイジの学生証にクエスト終了の判を押した。

「ああ。短い間だったが世話になった」

「星司さん、私も澄と行ってもいいですか?」

「俺は構わないが……」

 二人とも央輝を見る。見られて央輝はヒゲを撫でた。

「ふむ。どうせなら、夏休みの間だけの短期留学もありじゃな」

 セイジは小さく頷き、璃央は本当にうれしそうに表情を輝かせた。ほんの数日前までは見ることもなかった、孫のうれしそうな顔であった。






epilogue:tab


 アメリカへ向かって飛ぶ個人所有の飛行機で、ロイド・ギアはノートパソコンでデータをチェックしていた。

 と、モニターが暗転し、銀刺繍の黒いローブを身につけ、顔をベネチアンマスクで覆った怪人が表示された。

【サイクロプスは回収されたぞ】

 機械的な音声がパソコンから漏れる。

「そのようだねえ。彼も案外甘い。跡形も残さず消してくれると思ったんですがねえ」

【あの傭兵はこちらで処理する】

「そうしてもらえると助かります」

【天照はどうする? アレは確実に覚醒した。時が経てば神魂を使いこなすぞ?】

「その方が面白そうですけどね。

 まあ、しばらくは、そちらも手を出さないように。

 なに大丈夫です。かの悪神はそちらでも確認出来たのでしょう? もう天照を護る者は神州には入ってこられません。月読が戻る前に片は付きますね」

【アレを使うのか】

「ええ、アレです。今回のデータが役に立つでしょう。散財の甲斐ありですね」

【道楽者め】

「どうせなら、道化と呼んでほしいものです」

【理解出来ん】

 モニターが再び暗転し、怪人の姿は消えた。

「理解など不要です。僕はただ、この顔を楽しんでいるだけなのですから」

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