カウンターの策略家
だいぶ投稿が遅れてしまって申し訳ないと思います。
ゆ、許してもらおうとなんか思ってないんだからねっ!勘違いしないでよね!!
俺は息を切らして椅子に座っていた。あの女のせいで慣れない二度寝をしてしまい危なく遅刻するところだった。
「大丈夫か?」
それを見止めて悠也がやってきた。
「ハァ…ハァ…身悶えするぐらい…ハァ・・恐ろしいブ…ハァ・・・ブスが画面いっぱいに・・・」
「お前…ほんとに大丈夫か?特に頭のほうが」
「ああ…ハァ・・・ハァ・・・大丈夫…」
「いやいや、ぜんぜん大丈夫じゃなさそうなのな」
「気に…すんな…ハァ…スゥゥゥゥーハァァァー。先生来…ハァ…来たぞ」
俺は席に付けと促すと、呼吸を調えながら本を読み始めた。
あなた方は「なんかびっくりするようなことでも起こらないかなー」と言っている人たちを見たことはないだろうか?俺は友人たちの口からよく聞く。俺も以前はそんな風なことを漠然と考えていた。だが今日は、今日に限っては、俺はあのブスの夢だけで十分だと思った。しかしこういった出来事というのは続くものである。なぜかと言われれば神の仕業としか言いようがない。
それは昼休みのことだった。
「なぁ」
「なんだ、悠也。」
「聞いてくれよ」
「聞いてやるよ」
「日和さんの友達と話した」
「え…」
「そしたら絶対に漏らさないって約束してくれたし、彼女を傷つけることにならなければ何でも聞いて良いよって言ってた!これってすごいラッキーじゃね!?」
こいつ。とうとうやりやがった。俺は可能な限り平常さを失わないように努めた。
「そりゃ運がよかったな、ほんと」
「だよな!やっぱり勇気出した甲斐があったってもんだ」
「へぇー…で、何か分かった?」
「あぁ…それなんだよ。うん、それがな、”そんなこと気にしたことも無かったから知らん。後で本人に訊いて置こう。連絡先でも教えてくれ”って言われた」
「なんだそれ?それほんとに彼女の友達か?」
「さぁ…俺もいまいち自信なくなったんだよ」
「実はなにも知らなかったりしてな」
「それは無い…のか?」
「いやいや。俺が知るか。でもま、連絡先は教えたんだろ?」
「うん。携帯のメルアドと電話」
「なら待ってれば良いんじゃないか?」
「うーん、そうなんだけどね…。でも時間もあんまりないし…」
「まぁ、それはそうなんだけどな」
たしかに時間も限られている。家庭学習日まであと一週間ぐらいしかない。彼らを引き合わせようと動けばすぐにでもくっつけることが俺にはできる。でもそうしたいとぜんぜん思えない。いや、考えるだけでかきむしる様な疼きのような感覚が体全体を蝕んでしまう。俺はどうしたいんだろう?俺はどうすればいいんだろう?
俺は…彼女が…彼女のことを…
「おいどうした?」
ハッと目が覚めた。
「い、いや…なんか…」
「ねむいのか?そういえばお前最近ずっと寝てばっかしだよな」
俺は助かったと思った。
「ああ…本を読んでたら寝るの遅くなっちゃって」
「そうだったのかー。体に悪いんだからあんまり無理すんなよ」
「ああ。まだ日は要ると思うけど…」
彼が日和に対しての強力な武器を手に入れたことを告げられてから二日たった。しかし彼は一向に進展していないようだった。それを俺は喜んでいたように思う。あの日から俺は一層彼を避けるように生活するようになった。
俺は考えた。自分自身が思うところは、したいことはいったい何なのだろうかと。正直に思うところを挙げてみた。
・俺は日和が好きだ。愛している。愛することができる。
・俺は悠也と親友のままでいたいと思っていた。
・だが俺は今、とてつもなく悠也が憎い。彼女の想いを掴んでいるからだ。
そして、最近俺が思うところは彼があまりにも女々しいやつだということだった。日和に関してなにかしようとする度に俺の相談を受けていた。実際それで今まで動いてきたし、話さなかったこの数日間は全く動いていない。こんな弱弱しいやつのことがどうして好きなのか。彼女は知らないだけだ。俺の方が彼女を幸せにすることができると思う。すぐにはそうならなくとも、俺は彼女を幸せにしたいという気持ちでいっぱいだ。必ず幸せにして見せると誓おうと思っている。
だが、そのためにはどうしたらいいんだろうか。俺は自分の立場を再認識した。そしてこれがわざとらしく思えるぐらい俺の理想にかなったポジションだった。
俺は二人の関係を繋げるいわゆるキューピットとしている。それならばこそ、逆境においてこそ逆転の発想だ。それを利用させてもらうのだ。キューピットの矢は人を射るのだ。
前提として彼らはお互いに彼女―彼氏―が居るのかしらない。きっと彼らは恋に盲目的になってそんな初歩的なことに気づいていない。俺は逆にいないのを知っていたせいで気にも留めてなかったが…。それが解ればどうということは無い。両方に「相手にはもう付き合っている人が居るらしい。諦めたほうが傷つかず済む」と言ってしまえばよいのだ。そうすれば後は俺の独壇場だ。家庭学習日で煮るなり焼くなり好きにできる。
作戦はこうだ。
・実行は家庭学習日直前の放課後。
・まず彼女を図書館に呼ぶ。
・そして悠也には彼女がいるらしい、と告げる。
・当然彼女はショックを受ける。倒れこむ――もしくは泣き出す――彼女。
・そこで俺が彼女を元気付ける。
・同様に悠也にも施す。
・そして家庭学習日で極端に連絡が取れなくなっているし間に俺が彼女をデートに誘う等して告白する。-――――――俺はこれを「作戦名”ニイタカヤマヲノボルクライナラサラチニシチャオウゼ”」。略して”にーに”と名づけた。
家庭学習日まで残すところあと三日となった。俺は本を抱え図書室に居た。カウンターにはあの悪夢を生み出した張本人がまた座っていた。二人で睨み合いながら数十秒も経った。
「どうした」
相手が言った。俺は答えない。黙ったまま本を前に押し出す。
「そんなに見つめられると照れるぞ」
「ふざけんな」
「そんなことより本はどうだった?」
「さぁね」
「話さないと返却させないぞ。明々後日にお前が先生に呼び出されて本を返せと催促されたいというなら別だが」
「うわっ」
俺はきたねぇと思った。
「いいから話して」
俺は催促された時に1つ疑問が浮かんだきた。
「なんでそんなに聞きたがるんだ?」
この女子はそう聞かれると黙ってしまった。しかし表情に不快さは現れておらず、話すべきかどうか考えているように見えた。そして口を開いた。
「・・・お前があまりにも苦しそうだからだ」
「は?」
「お前は今かなり悩んでいて調子が悪いだろう。授業がおぼつかなくなったり、集中ができないのはその悩み事に気をとられているからだろう。とくに最近は混乱がひどくなっている。それが心配だから・・・といったところかな」
俺はあっけにとられた。こいつの言っていることは当たっている。話してもいないのになんでそんなに俺のことがわかっているのだ。しかしもっと強く感じたのはそれに彼女が俺に協力するメリットがないのに協力しようとする不可思議さであった。
「私も多少なら夢について分かる。こっちの部屋でお茶でもしながら」「いや待て」
俺は言葉をさえぎって言った。
「お前に何が分かるんだ?」
「いろいろ。自分の人生で学んだ程度に」
「なんで俺の話が聞きたい?」
「それならもう言ったぞ」
「そ、それはそうだが・・・・」
俺は口ごもった。たしかに理由は聞いた。しかし冷静に考えて、それは俺が話す理由にはならない。ここは突っぱねてしまっても問題ないと考えた。
「それは俺が話す理由にはならないな」
今度は相手が口ごもる番だった。少しの間黙してから残念そうに言った。
「…そうか。残念だ。実に残念だ。実に実に残念だ」
「そんな言うほど残念か?」
「…ちょっと言い過ぎたかもしれん」
これがツンデレっ娘の「あ・・・うん・・・ちょ、ちょっと言い過ぎた・・・ごめん」とかだったらどれほど良かっただろうか。俺は積んであった本を突き出した。
「返却は頼んだぞ」
そういって俺は足早に図書室を出た。
「ふー、だめだったか…。まぁ期待はしていなかったが」
私は一人ごちた。そして背にある気配に向かって言った。
「準備しよう。実行を早める。明日だ」
聞き終えたからなのか、気配はさっと消えてしまった。
主人公ヘタレ過ぎないか・・・?
・・・気にしない。
さてこの物語はどう進んでいくのでしょうか・・・?
作者の情けない心理描写はどこまで曝け出されていくのでしょうか・・・?