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探求する者

今回は短め。


眠かったんだ・・・っ。最近は春ちゃんが眠らせようとしてきて暁が覚えられないんだ・・・っ!!

 日和に別れを告げ本棚の間を縫って例のお気に入りのコーナーに座った。この辺の棚には心理に関する本もある。その中から夢に関する本を探して読むためだった。二度も見たあの夢の正体を見極めたかった。

 だがそうして読みふけっているとすぐに目が痛くなってしまった。そういえば最近は活字を延々追い続けるようなことはぜんぜんしていなかった。昔は集中して読むことが得意だと思っていたのだが。そのせいで俺の負けず嫌いが妙に触発されてしまい本をどっさり抱えて貸し出しカウンターに行くはめになった。


 どさっとカウンターに本を積むとそこに座っていた女子がいぶかしむ様な目つきで睨んできた。そのため目がばっちり合ってしまった。

 彼女の印象を一言で語るとするなら「不細工な女だ」が合っている妥当だろうと思う。初見でこの感想はひどいと思うだろうが、確かにそうなのだ。そう思ってしまったのだから仕方が無い。体系は小太りといった感じだったが膨らんだ頬が七福神の恵比寿を連想させた。しかしあの爺さんのにこやかな笑顔は影も無く、細く鋭い目つきが相手を睨む。そばかすやにきびも目立ち気味で日和とは対極の存在だと思った。まぁ、日和と比べたらどんな女性でもかすんでしまうがね。


「ずいぶん借りるんだな」

いきなり馴れ馴れしく話しかけるなと思った。それも言葉使いが男っぽい。印象はより悪くなった。

「なにか問題が?」

多少語気の強い言葉になってしまった。眉間にもしわが寄っていた。だが、これも仕方ないだろう。誰だってこんな風に話しかけられたら、相手が誰だろうとイライラするだろう。

「夢が気になっているのか。突然だが、夢とはなんだと思う?」

突然なのは今更だ。いきなり人の借りる本をしげしげと見つめて来るなんて何を考えているんだ。それに

「それが分からないから本を読むんじゃないか」

俺は思ったままを口に出した。俺の苛立ちが明らかに言葉にのっていたはずだ。しかし彼女は何が楽しいのかニヤッと笑うと言った。

「そうだ。だから本を読むんだ。それが言葉と行動が一致した探求の姿だ。この本たちを貸してやろう。読み終わったら感想を聞かせてくれ」

俺は呆然としてしまった。相手のキャラがわからなすぎて腹を下しそうだ。第一、最初は本を貸し出す気はなかったのか。それでいて感想を聞かせてくれとは。俺は怒っていたこともよくわからなくなってしまって、何も言わず本を抱えて図書室を出た。


 俺は家に帰ってからはずっと本を読み続けていた。何とか一冊は読み終えたが借りてきた本を全て読破するにはまだまだ時間がかかりそうだ。布団に入り肩の力を抜くと、どっと体重が増したように思えた。

「ああー今日は疲れた」

誰の返事も無かった。誰もいない自室なのだから当然の結果なのだが、少し悲しかった。物寂しさが体の芯をめぐっていく。

 ふうー…と長く息を吐いて気持ちを落ち着け、一日を振り返った。今日は日和とも悠也とも話せた。これで二日三日置いても彼らに怪しまれるようなことは無いだろう。そう思ってつかの間の安堵を得た。だがそんな薄っぺらい安心など簡単に吹き飛ばしてしまう疑問が浮かんできた。

 いつまでこの生活を続ければいいのだろうか。このまま家庭学習日という長い春休みに入ってしまえばうやむやになってくれるだろうか。いや。焦った悠也が彼女に何かしでかしてしまうんじゃないか。それに学習日中は登校日というものもある。そこでいろいろと急かされてしまうだろう。そんな状況に俺は耐えられるだろうか?悶々と考えていると頭が痛くなってきた。何も考えないようにと思って頑張ってみたがむしろ細かいことが思い出されて余計悶々としてしまった。

 それにあの女子。妙なことを言うからかなり鮮明に印象に残ってしまった。そのせいで獲物を見つけたようなあの笑みがすごい勢いで近づいてくるという極めて不快な夢を見た。跳び起きたとき時刻は5時だった。二度寝をしたら母に遅刻確定の寸前で起こされた。本当にムカついてきて仕方が無かった。

まぁ、日和と比べたらどんな女性でもかすんでしまうがね(キリッ


彼を許してやってください。惚れたときなんてそんなもんじゃないですか。


え?惚れたときなんてそんなもんじゃないんですか?

ツバメよ・・・高い空から恋の様子を教えてくれー。

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