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偽る者

毎日更新

なんて難しいんだ

 俺は夢をみた。夢の中で街を歩いていた。すると花屋にこの世のものとは思えない美しく咲く花を見つけた。俺はその花屋の前に立って魅入っていた。しかしそれを買っていこうとする客がいた。店員は丁寧に包装して彼に花を手渡した。俺はその一部始終を眺め佇んでいた。

俺ははっとして目を覚ましてしまった。それからいざ寝ようと布団にもぐりこんでも頭が冴えて眠れなった。


 そのうち、窓を開けてリラックスしようと考えた。窓を開けると冷たい風が部屋に滑り込んできた。明るい月が見下ろしていた。月を眺めていると、日和の姿が目に浮かんできた。きっと両方とも美しいから自然と連想してしまったのだろう。黒く染まった空に、目に焼きつかせた日和の仕草や表情、後姿が次々と浮かんできた。その間俺は幸せだった。日和に会いたいと思った。彼女の姿をいつまでも見ていたいと思った。俺はそんな調子でじっとしていたが、差幸せに満ちていたはずの心にさっと黒い影が差した。

 ふと悠也を思い出したのだ。彼女のことを俺がどんなに愛していても、愛したいと思っていても、悠也の存在がそれを許さない。彼女の好意は彼に向けられているのだから。そう思った途端、月の光も冷たい風も色彩を失ったように感じられた。


 今日俺は一時限目から三時限目まで睡眠学習を貫き通した。結局のところ4時まで寝付けなかったからだった。学校へは睡眠を取りに来たようなものだった。昼休み俺はもう一度寝た。悠也も起こしてくるようなことは無かった。今日は無理やり寝て過ごした。家に帰っても何もやる気には到底なれなかった。体がだるくて寝返りすら億劫だったから居間のソファーに寝転がって天井を眺めていた。ゲームもテレビも興味に値しなかった。

 しかし母がテレビを見始めてしまった。番組は最近多い健康ものだった。その番組が終わるまで天井からは目を離さなかったが、1つの言葉が気にかかった。

 ”夢診断”。俺は今日の睡眠不足の原因を作った夢を思い出していた。


 次の日、また俺は寝て一日を過ごしたかった。が、それは叶わなかった。悠也はまた俺にアドバイスを求めてきた。俺はこのとき悠也に対し今までにないほどの嫌悪感を抱いた。それは異常ともいえるほどのものだった。

 彼はまず、日和に親しげに話しかけている人物に当たりがついたことを報告した。その上で、どんな風に彼女の友達から情報を引き出すか分らないからどうしようかということだった。

 確かに俺は彼女の交友関係から探れという旨のアドバイスをしていたが、こんなに素直に実行しているのかと驚いた。そしてなぜか彼がより憎らしく感じられた。その友達から彼女にこそこそしていることが伝わるのが怖いとも言った。俺はいっそそうなってしまえばいいのにと思った。思った後で衝撃を受けた。俺は、極めて自然に、いつも自分を守ってくれたこの友人に対して破滅を願ったのだ。

 俺は「そういわれると難しいな」と返事をして考え込んだ。しかし内心はどうやってこの場を乗り切ろうかという事でいっぱいだった。その場を濁すため、その友達が秘密をばらすような人間か調べてみたらどうかといったが、悠也はそれじゃあ堂々巡りじゃねえかと言って笑った。たしかにそうだと思った。その友達とやらの性格を知るためにまた誰かに聞きたいが、その誰かが秘密をばらすようなやつじゃないか調べたい。じゃあその誰かの性格を知るためにまた誰かに…これじゃあ終わらない。彼は「ああ~。どうしようかな…」と机に頭を寝かした。胃がムカッとした。

 俺はしばらくしてから「お前は自分に自信があるか」と聞いた。悠也は少し思案したそぶりを見せて「無い」と言った。「ならどうしようもないな」と俺は言い放した。少し気分が苛立っていたから、彼がどういう意味か尋ねてきても自分で考えてみなと突っぱねた。悠也は黙り込んでしまった。今日悠也との会話はそこで終わった。

 また俺は夢をみた。昨日の夢と同じ夢だった。また俺は花を眺めているだけだった。


 翌日俺は悠也に話しかけられるのを覚悟していたのだが朝も休み時間も彼は俺のもとに来なかった。昼休みは姿さえ見かけなかった。俺はもしかしたら嫌われたのかと、おなかの中が回転するような気分を味わった。

 俺は放課後に図書室に行った。カウンターには国語の先生が座って貸し出しをしていた。6番のテーブルに彼女はいた。座って真剣な眼差しで文字を追っているようだった。俺は正面の椅子に座った。しばらく彼女の様子を眺めていた。見れば見るほど俺の心は癒された。

「こんにちは」

彼女は声をかけてようやく気づいたようで、少しばかり目を見開いていていた。しかしそれはすぐに笑顔に変わり「こんにちは」と返してくれた。俺はドキッとしてなんていえばいいのかわからなくなってしまった。彼女は本を閉じてから、言った。

「お体の方は大丈夫でしたか?」

そうだ。俺は体調を崩していたんだった。

「ええ。おかげさまでもう大丈夫です」

「前は無理を言ってすみません…」

「もう、気にしないでください」

「あなたがいないとどうしたらいいかわからなくて…ずっと本を読んでしまいました」

俺を必要とするのは悠也のためなのだと言うことは分っている。だがつい俺に向けて放たれた言葉だったらどんなに素晴らしいだろうかと夢想してしまう。

「今はお体は大丈夫ですか?」

これは体の心配だけのための言葉ではないと直感が伝えた。

「いいですよ。私が答えられることなら」

彼女は安心したような顔でありがとうございますと言って質問を始めた。

 質問は様々でだった。好きな色は暗い色より明るい色だ。食べ物は特に嫌いなものがあるとは聞いていない。なんでもよく食べる。普段二人で話すことなど天気や授業のこととか他愛の無いことばかりだった。音楽や絵を一緒に鑑賞するようなこともあまり無かった。

 どの質問にも曖昧な答えを返してしまったため彼女はだんだんと元気が無くなっていくように思われた。その姿を見るのが心苦しかった。

 最後にと彼女が訊いた悠也の趣味についての質問の時、俺は「スポーツだろうがなんだろうが良くできるやつだから自分の答えに確信がもてない。他のことも聞いてみて教えるよ」と言った。そしたら少し元気を取り戻してくれたようだった。それで俺は心底ほっとしたのだ。

 それなら聞いてほしいことがあると彼女は言った。それはどんなタイプの子が好きかということだった。

「わかった、聞いてくるよ。何時ならまた話せる?」

「あ、わたし放課後なら大抵ここにいますから」

無理なさらないでくださいね、と彼女は微笑んだ。

俺はとてつもなく悪いことをしているような気分になった。

だんだん智の奴がおかしな挙動に…

これからが楽しみな人材です


        *'``・* 。

        |     `*。

       ,。∩      *    さて次はいつ投稿されるのでしょ~か

      + (´・ω・`) *。+゜

      `*。 ヽ、  つ *゜*

       `・+。*・' ゜⊃ +゜

       ☆   ∪~ 。*゜

        `・+。*・ ゜

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