保健室の魔術師
第5話!
ではあるんですが実質4.5話です。
気持ちよくビンタしたら書き忘れました。
水中か空中かを漂っているような感じだった。自分自身が空気になったかのように曖昧で拡散していた。そのとき体なんてものは無く、思考のみが存在していた。
時間が経つにつれだんだんと体の輪郭がはっきりしてきた。重さが増していく。下っていく感覚。底らしき固い地面にふわりと下ろされた。白い天井が見えた。
光がまぶしかった。それを遮るように黒髪の天使が顔を覗かせた。そうか。ここが天国か。とうとう神は俺を楽にしてくれたんだな。
「あ、起きた。生きてたんだね」
違うよ。俺は死んだんだよ。
「やあー・・・すごい顔してんねー。」
顔のことは言わないでくれよ。俺はもてたためしがないんだから。
「どうせなら反対側もやってもらったら良かったのに。バランスが悪い。」
何を言っているんだ。ほんとに天使か?そもそもここは天国なのか?
「あウゴァボゥ!?クォッ」
言葉にできない超☆激☆痛が俺の口内を切り裂いた。
「あ、無理しないほうが良いよ。はいこれ」
天使は悶えている俺の腹に何かを投げつけた。
痛みが引いてきたころを見計らい体の点検した。頬以外は異常ないようだ(というか頬が異常すぎた)。上半身を起こすとスケッチブックとマジックペン、鏡が乗っかっていた。筆談でもしろということなのだろうか。とりあえず鏡で気になる頬を見てみた。最初はこれが人間の体の一部だと理解するのに苦しんだ。形容すれば、りんごがほっぺたにめり込んでいる、といったところか。次に何があってこうなったのか理解に苦しんだ。それは考えてみても記憶がおぼろげで良くわからなかった。一番思い出したくない記憶ははっきりと覚えていたのに。
俺はバンバンとスケッチブックを叩き鳴らした。するとカーテンが開かれて一人の白衣の女性が現れた。
「うん、生きてるね。サルのおもちゃみたいだけど」
いろいろといいたいことがあったが俺は画用紙に描いておいた文字を見せた。
”俺はどうしたんですか ここはどこですか”
女性はにっこりと笑った。
「ここは保健室よ。怪我の原因は知らないけど」
”なんで?”
「さぁ?あなたを連れてきた子達もわからないって言ってたわ」
そうか。俺は図書室で日和さんと…。
「あれ。どうしたの。急に下なんか向いて」
俺は答えなかった。
「ふん…。何かあったのね?」
それにも答えずにいた。
「別に話す必要は無いわ。けれど」
女性の胸ポケットから取り出されたカードを手渡された。カードは温かかった。よく見ると果実はたわわだった。
「私はこの保健室の魔術師兼養護教諭、赤沼 愛子。いつでも話しになってあげる」
それと…、と言って彼女は一枚の紙切れを渡してくれた。それには小さな字で”体調が悪いのに無理をさせてしまってすみません。またお話させてください。”と書いてあった。
「これね、あなたを運んでくれたすっごくかわいい子がくれたんだよ。あとすっごくすごい顔の子がいたけど、二人とも知り合い?」
”(´;ω;`)”
俺は実際に涙ぐんでいた。
「あら、あの子達が問題なのね・・・」
すると彼女は突然俺の両肩を掴んでベットに押し倒した。手に持っていたスケッチブックとマジックが床に落ちる。布団が頭にかぶさった。布団から顔を出すとおでこに細くて白い指先が当てられた。
「今は寝なさい・・・」
その言葉を聞いた途端世界がぐるりと回りだした。意識が遠のいた。
目が覚めると白い天井とまぶしい蛍光灯が見えた。さっきの保健室だった。室には誰もいなかった。スケッチブックとマジック、さらに鏡も紙切れもまたお腹の上に乗っかっていた。体を蹂躙していた痛みはすっかり消えていた。熟れすぎた果実のようだった頬もすっかりすっきりさっぱりしていた。あれほどの腫れが一回寝る間に引いてしまうものか不思議に思った。
俺は携帯を取り出し時刻を確認した。6:33だった。もうしばらくじっとしていたかったが、もう帰らなければ怪しまれてしまうかもしれない。きっと生徒に下校を催促する放送もすでに流れているはずだった。俺はスケッチブックに”帰ります。手当てありがとうございました。”と書き残して保健室を後にした。
教官あすなんとかとか言う漫画でもありましたが、保健室の先生の正式呼称は”養護教諭”なんですね。
ちなみに非常勤職員として置かれている医者は学校医というらしいですね。
wiki先生すげぇ






