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罵る者

(皆さんもご一緒にどうぞ)

ここに書く言葉が固いなーと思う。変えてみよう。


・・・


ちょりーっス!!(ウィッシュ発動)


やめた。

 親友と顔を合わせるのが辛い。これ矛盾しているような響きのある言葉である。だが、そんなこと状況によってどうともなる。その状況とやらが今だった。

 自分の意中の相手を、親友である悠也も同じように想っている。その事実が俺を虚ろにさせた。あの日から休みに入るまでの3日間、彼は毎日どうやって日和の情報は集めれば良いのか尋ねてきた。「彼女の仲のよい友達に訊く」とか「クラスの中で観察する」とか言うような具合で、俺無難な答えを用意して休み時間の終了まで耐えるほか無かった。それを素直に聞いてくれる親友を見てると心が痛んだ。だが、同時に安堵もしていた。


 束の間の休日は終った。今日は月曜日。新たな一週間が始まろうとしていた。この休み、俺はかなり忙しかった。できる限り忙しくなろうとしていたのかもしれない。とにかく2人のことを考えないようにしたかった。しかしそういったささやかな逃避も学校という現実の前にはひれ伏した。先週は三日だけだったが、今週は五日間彼と顔を合わせなければならなくなる。そのことを考えるだけで頭痛も吐き気もしてきた。こんな苦しい思いをするくらいなら彼女のことを好きになんてならなければ――――いっそ諦めてしまえば――――と思った。

 8:18分。俺のクラスの靴箱は昇降口の一番遠い靴箱から二番目にある。急ぎ足でたどり着くとさっさと靴を脱いだ。今日はいつもより学校に来るのが遅れてしまった。もう焦る必要は無かったが時刻を思うと動作は自然と早くなった。

 脱いだ靴を片手にもち靴箱を覗く。ふと白いはんぺんのような物が目に飛び込んだ。上履きの上にあったそれは、はんぺんなどではなく白い簡素な手紙であった。中学校のとき、担任の先生が俺の誕生日にバースデーカードを靴箱に入れて祝ってくれたことを思い出した。しかしバースデーカードなら半年くらい遅い。いぶかしんでそれを拾い上げると控えめな小さな字で「境 智様」とあて先が書いてあった。手首を回して裏を見る。同じような書体で「山下 日和」と書いてあるのを認めた。

「んむぅ・・・!?」

思わず声が漏れた。慌てて周りを見渡すと、幸い他の学年の男が三人笑いあいながら歩いているだけだった。彼らは俺をみとめてもいないだろう。もう一度手紙を確認した。これが俺を殺そうと目論む裏社会の巨大犯罪組織の色仕掛け(ハニートラップ)・・・でなければ間違いなく「境 智様」「山下 日和」と書いてある。ちなみに今現在俺を付け狙うほど暇な奴はいない。

 状況を整理しよう。ここでポイントになるのは”俺宛に””女子から””靴箱の中の手紙”だ。この三つの要素が俺に突き付ける真実は・・・俺はとっさに手紙をポケットに落としこみ、不自然にならない程度の早足で下駄箱から離れた。


 まさかまさかまさか。俺は教室に向かわず逆方向の外階段を目指した。そこは主要な教室から離れているし今の時間帯なら人通りはまずないだろうと踏んだからだ。道中、5日前の緊張と場面がありありと蘇ってきた。生唾を飲み込み、激しくなる鼓動を抑えながら外階段の踊り場に躍り出た。予想通り人の気配はない。手紙を取り出す間、喉から水気というものがなくなってしまったような気がした。

手紙は赤い花―――学校でよく作るもしゃもしゃした紙の花によく似た形をしていた―――のシールで封がしてある。たぶんカーネーションだろうと当たりをつけた。あれもけっこうもしゃもしゃしている。

 シールが千切れないようにおそるおそる手紙の封を開いた。中には便箋が二枚はいっていた。二つとも淡いピンクとごく薄い緑の細い線で縁取られた、質素だが可愛らしい便箋だったが一枚は何も書いていなかった。

 文字の書いてあるほうの便箋を持つと指が震えてきた。もしかしたら・・・という希望が俺を動かした。その後に自分の立場がどうなるかは考えないことにした。意を決した俺は震える指を気力で制し、文字を追った。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

境 智様


突然の手紙ご容赦ください。

放課後図書室の一階の6番テーブルに来てい

ただけませんでしょうか。詳しいことはその

後お話します。もしよろしければもう一枚の

便箋のほうに「OK」との旨を書いて、私の

靴箱に入れていただきたいです。







。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 文章を読んで俺は体の力が抜けてしまった。これでは何も分からない。告白というよりはその前段階の呼び出しだ。

 だが呼び出しであるなら俺はまだ期待してもいい。彼女が俺に何か伝えたいと思っていることがあるのに変わりはない。

 つまりこの約束が結ばれ果たされれば真意を掴めるということだ。

 俺は胸ポケットにいつもしまってある小さなシャーペンで白紙の便箋に「では放課後に会いましょう」とできる限り丁寧に書いて内ポケットに入れた。後は彼女の靴箱に入れるだけだが、時間は8:23。時間にルーズなわがクラスにとって、靴箱がかなり混雑してくる時刻だ。今すぐ入れに行くことはできない。それなら昼休みを待って購買に行くのを装っていれることしよう。今日に限って弁当だから、何かを買って悠也の目をごまかさなくてはならない。それなら飲み物が自然か・・・。そういったことを考えていると階段を上る足音が聞こえてきた。その音で我に返った俺は慌てて教室に戻ることにした。


 今日の学校生活は大変なものだった。日和自身は何事もないかのように普段と同じく振舞っているが、俺はそんな真似できなかった。心はうわついて授業には身が入らないし、運の悪いことによく当てられた。さらに階段を登る度に足を引っ掛けて転びそうになる。このままじゃだめだと思って体育を必死にやったら盛大に転んで膝を剥くわ足首を痛めるわ散々だった。ストレスが体に影響する部位は人によってまちまちだというが、俺の場合はどうやら脚に影響が出やすいらしい。

 数ある苦難を乗り越えた俺はどうにか無事に便箋を入れることができた。悠也には放課後は先生に呼び出されて長くなるから先に帰ってくれと伝えることができた。


 やっとの思いで図書室にたどり着いた俺は一階のテーブルのなかの入り口から見て左の列、一番奥のテーブル(通称6番テーブル。番号が振られているのだ)の一番端の椅子に座って彼女が現れるのを待っていた。

 しかしその日の疲れが出てしまったせいか、強烈な睡魔に襲われた。ここで寝てはいけない・・・男がすたるぞ、智・・・耐えろ・・・紳士的に・・・ぐぅ・・・。必死でこらえるものの悪魔に対し人間では力不足だった。



 私が武器になりそうなぐらい分厚い妖怪ものの本を読んでいると図書室の扉を開く者があった。日和だった。彼女は緊張した面持ちでゆっくり入ってきた。彼女の視線の先、心配そうに見ている六番のテーブルには一人の男子が眠りこけている。あれが智という男子だったはずだ。日和は心もとないのか、貸し出しカウンターに陣取っていた私のほうを見てきた。私はそれに対し頷きで答えた。それを見て彼女も頷き返す。と、おそるおそる男子に近寄っていった。


「もし」

彼女が声をかけても男子は起きない。

「もし」ペチッ

今度は声と一緒に軽く叩いたようだがこれにも反応しない。

「もし」

彼女は手を後ろに振り上げ、サイドスローの投手のように振り抜いた。鞭のようにしなる腕が最高まで伸ばされたその瞬間、爆竹の破裂音を数百倍重く鋭くしたような音が図書室全体に響いた。この音も今ではもう慣れたものだ。私は先ほどまで読んでいた「姑獲鳥」の続きに視線を移した。やがて残響も図書室の壁に反射を繰り返しながら消えていった。



 話をしよう。これは今から三十年前・・・いや、このときの私にとって今の出来事だった。俺は睡魔と闘っていたかと思うと左耳を爆☆破された。言っている意味が分からないとは思う。だが俺にもわからない。


 頭の中身をガツンガツンと殴られ続けているように錯覚してしまう程の耳鳴りのなかで俺は天使をみた。

「こんにちは」

天使はそういって微笑みながら、軽く会釈すると俺の真向かいに座った。蒙昧とする意識の中、俺は可能な限り紳士的に―――自分の人生がここで終わっても良いくらいに思って―――対応しようとしたが「ど・・・・どうも・・・」という死にかけのせみのような声が吐き出されただけだった。


 これが俺が人生で初めて日和と声を交わした瞬間であった。


 耳鳴りが収まると今度は自身の心臓の音で周りの音が聞こえなくなりそうだった。勇気が出せず片思いで終わるかと思っていた恋の相手が目の前に、それも俺を見つめて座っている。さらに彼女は俺に話したいことがあってここに呼んでくれたのだ。この状況で緊張せずにいられるわけがなかった。

お互い黙りあったままの気まずい時間が流れていく。

「あの・・・」

彼女の声が静寂を破った。

「は、はい」

声が少し上ずった。ひどい恥をかいたような気分になった。

「今日・・・来ていただいたのは・・・あ、あなたに・・・話したいことが・・・あるからなんです・・・」

顔を赤らめながら少しうつむいた加減で話す姿はそれはもう可愛らしくて愛おしくて抱きしめたい感情が湧いてきた。俺キモ。

彼女に触れたくてうずうずしているじぶんがいて、しかしその自分をはしたない野郎だと咎める自分もいて彼女を直視することができなかった。

「あ、あのっ!」

彼女が顔を上げて俺をじっと見据えた。ここは行くしかない。行くしかないんだ。男をみせろ!智!自分を鼓舞し彼女の吸い込まれそうなブルーの瞳を見つめ返した。


「相談にのって欲しいんです!」

そうだん・・・相談?

「わ、わたし、す、好きな人がいて」


彼女はなんといったか。

いまなんといったか。

好きな人がいて相談?相談相手が俺?じゃあ俺確実に好きな人じゃないじゃん。

はらわたがすとんと落ちてしまったみたいに重くなった。

喉元までひりひりするものが押しあがってきた。

言葉がでない。


「あの大丈夫ですか?」

気づくと俺は口を押さえて机を見つめていた。必死で己を保とうとする。この子の前であんまり情けない姿をさらせない。自分には無縁だと思っていたプライドが俺をノックダウンから救い上げた。

「うん・・・大丈夫。今日は疲れることが多かったから・・・」

でも彼女はまだ心配そうだ。

「あの、まだ話しても大丈夫ですか・・・?」

「あ、うん。もちろん」

俺は勇気と根性を振り絞って顔を上げた。血の気が引いているのが自分でも分かったが、今はそれを気にしていても仕方ない。とにかく彼女の相談とやらを聞かなくては。

「どんな相談?俺が力になれるか分からないけど」

「き、きっと力になれます。というかあなたじゃないとたぶんダメなんです・・・」

なぜだろう。俺は彼女の言葉を聞いて背筋が凍るような恐ろしさを感じた。たぶん俺はそのことに気づいている。だがそれを認めることは俺の理性が許さなかった。

「俺じゃないとダメ・・・。それってどういうこと?」

「さっき・・・好きな人がいるって言いましたよね。その人って言うのが」

ますます悪寒がひどくなる。お願いだ。言わないでくれ。たぶんその先を俺は知っている。いや断固とした確信を持って知っている。だから・・・お願いだ。いわないでくれ。

「竹之内悠也さんって言うんです。あなたがよく話している、あの人なんです」

時間は止まらなかった。その言葉は俺を戸惑わせるだけじゃあきたらず困惑を通り過ぎて心臓がどうにかしてしまいそうだった。

「あいつの事が・・・好き・・・?」

「は、はい。そんな風にはっきり言われると恥ずかしいですが・・・」

そういうわりに嬉しそうな顔をしている。ああ、まさか。まさかまさか。どうしてこんなことに。俺が何をしたというのか。

「それで、あなたなら悠也さんのことをよく知ってらっしゃいそうだから、相談したいんです」

神よ。

「悠也さんって何か好きなものとかあるんですかね・・・」

あなたはなぜ私から取り上げようとするのか。

「私、本とかよく読むんですが、漫画も好きで・・・。」

俺がどんな罪を犯したというのか。

「えっと・・どうかされましたか?」

神は平等に愛を与えてくれるのではないのか。

「私の声聞こえてますか?意識ありますか?」

ああ!!俺を愛してくれるものなんて何もないんだ!

俺なんかもう死んでもいいってことなん


スッパァァァァン!!!!


「あ、あれ?白目剥いてる・・・。ど、どうすれば。」

「やったなひより。」

「あ、ガミちゃん・・・」

「たしかに応急救護では頬を叩いて意識の確認を取ることはある。でも止めを刺したら救護はできない」

「この人どうしたら・・・」

「いいから保健室だ」

怪力美人、好きです。ロリで怪力なのも筋肉もりもりのおっさんも好きです。ふがふがメイドとか夏恵のスーパーマンとかアンクの嫁とか酒飲みの鬼2人とか・・・いっぱいいるなぁ。

最近はちっちゃい娘が身の丈以上の武器を平気で振り回すようになりましたね。私は一向に構わんッッ

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