心の生物
今回はちょっと短めです。
ガミがちょっと元気です。
”人間らしさ”
それは数多くの場所で数多くの言葉によって表現されてきた。
しかし、そのほとんどは人間というものの本質に気づいていない。
所詮”この世”ばかりを眺めていた者どもの理屈などこの世の理屈に過ぎない。
彼は気づくかな。
「人間らしさ」なんて言葉で表現しきれるものでないことに。
もっと上位の、美しく広やかな世界に。
それこそが人間が人間たる理由を示すことに。
”人間らしさ”
人間が人間らしいのは当たり前じゃないか。それとも人間は人間らしくないとでも云うのだろうか。
俺は悩んでいた。
人間らしさという言葉が俺をぐるぐると俺の目を回した。
人間の行動が全て人間らしいのだろうか。人間のすること。食べること。寝ること。誰かと寝ること。食欲、睡眠欲、性欲は人間含めほとんどの生物が生きるためと繁殖のためにする。
やはりガミの言った通り、創作すること、生み出すことが人間らしさか。
しかし本当にそうなのだろうか。それのみが人間なのか。
逆に破壊することは?自然や命をやたらに壊すのは人間らしくありそうだ。暴力をもってして人間なのか。
いやしかしそうだとしたら俺は人間か?俺の肉体なんてたいした力をもっちゃいない。力自慢の格闘家どころか町の不良程度にタイマンで殺されかねない。
・・・いや、でも俺は悠也に対してカッターナイフで暴力を行使しようとしていた。自分の感情を押し通そうとしていた。俺が人間なら人間らしさを持っているはずだ。もしそれが暴力なら、筋が通る。
俺はテーブルに拳を叩きつけた。手の骨が砕けたんじゃないかと思うほど痛かった。痛みで俺は冷静になった。
違う。暴力じゃ、ダメなんだ。力を振るうことは人間じゃなくたってできる。人間の本能には近いかもしれない。だが、それははたして人間の本質に近いと言えるだろうか。それに暴力が生むのはそれに対抗するさらに大きな暴力だけだ。
人間とはいったいなんなんだ。
「人間の想像力、創造力は素晴らしいものさ」
ガミは司書室の中で本を開いたまま視線を宙に投げて言った。
「人間の持つものにはほかにも色々ある。恋のためにこれほど悩むのは人間くらいじゃないかな。そして愛。世界を深め拡げることによって人間は進歩を重ねられる。だからこれほどの文明を築けた。文学しかり絵画しかり芸術の領域も人間じゃなきゃできなさそうだ。研究を繰り返し全く新しいものを見つけ出すのもそう。無意味なことにさえ振るわれる暴力もそう。」
俺は最初にした質問をもう一度繰り返した。
「じゃあ、人間らしさってなんなんだよ。人間って他の生き物となにが違うんだよ」
俺は昨日から考えすぎてうんざりした気分になっていた。今日司書室に来てガミを訊ねたのもその憂鬱な気分を何とかしてくれはしないかと思ってのことだった。
「たしかに人間は他の生物と圧倒的に違うところがある。だがそれはどの生物とも似通って存在しているのに君は気づいたかな」
「はぁ?何だそれ、なぞなぞか」
「なぞなぞなんぞではないぞ」
「わかりづらいな。それはなんだって聞いているんだ」
「君というのはせっかちなんだな。まぁいい。教えてやる。答えは人間のもつ恋だの愛だの芸術だの暴力だのに共通しているあるものだ」
「それは心だ、思いの力だ」
ガミは立ち上がって俺に睨み付けんばかりの視線を向けた。
「その創造力でも破壊力でもなんでも行使するにはまずその人間の思いが必要だ。人間は精神の生き物だ。その信じるもののために死をも選ぶことのできる自由過ぎる心!人間には手が、足が、頭が、時間が、生命が与えられている。しかしそれら持ちうる全てを費やして生きるかどうかはその人間にかかっている。心の力、意志の力がなければ与えられた素晴らしい道具たちを扱うことは出来ないのだ。人間が人間らしいと謂われるゆえんはその心にあるのだ!」
「心!心には創造性を含め葛藤、感情、思想、信念などなどの思うことの自由が存在している!思ったことを実行に移そうと意志すればそのために死ぬことだってできる!こんな生物が他にいるだろうか」
ガミは大声で語り終えるとゆったりと椅子に座りなおした。
「答えになったかな」
俺はよくわからんと素直な気持ちを口にした。
ガミは私もわかってないんだと照れ隠しのように笑った。
わかんねぇよなー何がわかんねぇだかわかんねぇと俺も笑った。
その日俺の知る限りでは初めて司書室に笑いが、ほんの数秒だけであったが、生まれたのであった。
私もこの文章を書いていく中で何か答えを見つけていきたいと考えています。
次はちょっと長めになるかもしれないです。