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殺す者

 やはりこの文章にも私の勝手な解釈というものが多分に含まれております。作者は人生・経験ともに未熟ゆえ、読中は十分ご注意ください。

 私はよく死ぬ。よく殺しもする。それは運命のためか、愛するが故か。昔はそうせざるをえなくなってなお嫌々やっていたようだったが、今は自ら望んでそうするようになった。



 まばゆいばかりの光が俺を照らしつけていた。空の暗雲がちぎれ、その隙間から間断なく太陽の光が差し込んできているのだ。俺が目を覚ましたのはそんな雨上がりのことだった。

「起きた?」

聞き慣れた声が耳に入る。

「ああ・・・今何時・・・?」

俺は机に突っ伏したまま声に向かって訊ねた。

「昼休みになってからちょうど二分。タイミング良いな」

声は期待通り教えてくれた。どうやら四時限目の授業中に寝てしまったらしい。しかし寝起きの脳はそれ以上のことを考えてはくれなかった。時間が経つにつれ周囲の喧騒が近づいてくるような気がした。


 俺が居るのは私立↑↑↓↓←→←→AB高校。近所じゃ”えび校”と呼ばれて親しまれている普通進学校だ。何年前から続いているのかは知らないが行事の度に伝統を強調している節がある。が、正直なところどの生徒もそんなことは気にしていない。

俺はその高校の三年生、18歳男子、境 智さかいともとして机に伏していた。

俺の席は「なんて妬ましい」と友人たちによく羨ましがられる最後列窓側ポジションだった。だがカーテンが自由に閉めれないから日差しがもろに来てしまうのが悩みだった。しかしそれをいうと友人たちは少しばかり不快そうな表情をするので自粛している。

「まぶしいな」

勝手に前の席のイスを拝借したうえに俺の机の上で弁当を広げていた竹之内 悠也たけのうちゆうやが空を見ながら言った。

「あー・・・一月も太陽は元気だからな」

自分の弁当を引っ張り出そうとバッグと格闘する俺は適当に相槌をいれた。

「おい、気をつけろよ。落ちる」

悠也が弁当を抑えて俺の様子を眺めながら忠告する。

俺はひとつ思いついて言った。

「それを今の受験生には言うなよ」

悠也は微笑して答えた。

「ふっふ。もう俺達には関係ないから安心だ」


 高校三年の早めの受験シーズンが到来したとき俺も悠也も進学と決めていた。しかし進む大学は違ってしまった。俺の成績が悪くはなかったが大して良いわけでもなかったからである。「頑張れよ、お前ならもっと伸びる」「数学とか理系の科目の成績をあげれば五段階評価で差が出る」と先生からもそれとなく、だが確実に心配されていた。それは非常に気分の悪いプレッシャーだった。しかしなんとか内定を受け取ることができた今となっては、それも懐かしい思い出だった。


 一方の悠也はひどかった。逆の意味でひどすぎた。いままでずっと彼の成績表を見てきたが成績の欄に9と10以外がなかなか見つからないのだ。かろうじて国語だけは俺が勝利を収めているが、合計では遠く及ばなかった。もちろん受験する学校からは推薦がきている。

 ところで運動神経という神経は存在しないらしいが、それがあるとすればこの悠也のなかにあるはずだと俺は確信している。いや、俺だけじゃなくクラスの全員が確信しているだろう。それほどにスポーツも出来た。元テニス部部長で全国大会入賞を果たしているくせに得意なスポーツはサッカーだと授賞式の後に聞いたときは、こいつの足を折り取ってやろうかと思った。体育大会のリレーには迷わず選ばれたし、球技大会の最も警戒された人物でもあった。

さらに顔も爽やかな好青年の印象を与えてくる、いわゆるイケメンだ。


 弱点はないのだろうか?そう思って中学の時に訊いたことがある。「俺の苦手なものはいくらと球技だが、おまえの苦手なものってなんだ?」と。その後「女子と話すのが苦手」と返ってきたときは今なら地面を割ることができるかもしれないと思った。

 しかし本当に彼はろくに女子と話が出来ない。女性恐怖症なのだ。これには驚いた。だから「お前みたいに普通に話せるのが羨ましい」といわれたときはちょっと得意になって自慢げに語ったものだ。冷静に考えてみると全く慰めになっていなかったのだが。

 とにかく、超人と形容せざるをえない類稀な人間・・・それが悠也だった。


 そんな非凡人と俺が親友として居られるのも幼稚園時代からの幼馴染という関係にあるからに他ならない。苛められていた俺を助けてくれたのが彼だった。それから俺はずっとこうして一緒にいさせてもらっている。迷ったときはよく助言してもらい、そのとおりにしてきた。結果としてそれは正しかった。俺は彼を信頼していた。

「まぁお前なら大丈夫だろ」

悠也に言われるとほんとに大丈夫かもしれないと思ってしまう。

「まぁお前が言うなら大丈夫だろ」

気持ちの素直なところを答えた。

「なんだそれww」そう言って悠也は弁当の白米をかっ込んだ。

今から将来のことを想像するなんて俺にはできなかったし、今が楽しくなくなったら損だとも思っていた。なぜだか湧いてやまない不安を頭の奥に押しやり、弁当の卵焼きに箸を伸ばした。


自慢できる親友としゃべりながら、日々を過ごす。

それが幼い頃から続く俺の毎日だった。

それが凡人である俺の幸せなのだろうと思っていた。

そんな日々がこれからも続いていくんじゃないか。そんな思いを漠然と抱いていた。

結果的にそれは裏切られた。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 ほんの些細なことでも気になったことがありましたら、ご指摘お願いいたします。それが私の血と肉になります。

※改稿したのはサブタイだけです。2/23現在

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