校正者のざれごと――PHP騒動、その後
私は、フリーランスの校正者をしている。
前回取り上げた「PHPの脆弱性」は、その後もニュースで何度も流れていた。ネットは生活とは切り離せないツールであり、危険と隣り合わせである。これは重大な事件なのだ。
と、仕事の調べものができずひとりで焦っていた。
翌日、校正プロダクションの事務所へ行き、さっそくある校正者に声をかけた。
「あの、例のPHPの件って……」
「そうなんですよ。いつも使っている百科事典のアプリがシステムメンテナンスで使えなくなっちゃって……困りますよね」
やっぱり。すると、彼女はにやっと笑いながらひと言。
「でも、PHPはおもしろい反応してましたね」
ここでいうPHPはあの出版社のほうだ。さっそく、記事を検索。
――世間でPHPが話題ですが、弊社なんと全然関係ありません…プログラミング言語PHPが生まれるだいたい半世紀弱前からPHPを名乗っている、活字で生きる会社なのです…
これはPHP研究所の「PHP文芸」公式Xの発信したもの。ちなみにPHP研究所の「PHP」は「Peace and Happiness through Prosperityの略。もしや誹謗中傷にでもあっているのでは、と気になっていたのだが、コメントは何とも穏やかだ。ところが、このあとPHP研究所のサイトも緊急メンテナンスに入ることに。「――などと言ってたら、HPには利用していたようでメンテナンスに入ってしまいました…」公式Xはこう嘆く。
以前、一度だけ出張校正に行かせていただいたことがあった。自社ビルにある、10人は座れるであろう大きなテーブルの置かれた広い会議室で、ひとりぽつんとゲラ(校正紙)に向かう。そして昼には、絶対自分では頼まない(頼めない)ような高級なお寿司の差し入れをいただいた。しかし、どんな本の校正だったかは全く記憶にない(覚えているのはお寿司だけ)。パソコンも辞書もない場所で、いったい私はどんな作業をしたんだろう。いまならパソコンを使わない作業なんて考えられないのだが。
しばらくすると、調べものに必要なサイトも使えるようになっていた。エンジニアの皆さん、ありがとうございます。このサイトでも二段階認証のトラブルでアクセスできない時間が長くあったが(私もだいぶ長い時間、イライラしながら認証コードを待っていた)、それもやっと解決。
専門家の話だと、こういったことはこれからも起こりうるという。それなら、いちいち焦ってイライラしていては身が持たない。油断はよくないが、PHP(研究所)のようにやんわりと受け流しながらちゃんと危機管理もできる、そんなしなやかな対応を目指したい。




