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第14話 冒険者ギルドに登録

 冒険者ギルドは、想像よりも騒がしかった。

 木造の大広間。

 酒の匂い。

 剣を背負った者、杖を抱えた者、傷だらけの鎧。

 人間の匂いが、濃い。


「……ここが」


 イーリャは、目を輝かせた。


「声を抑えろ」


 隣でラドが低く言う。


 カウンターの奥で、受付嬢がこちらを見る。


「登録ですか?」


「二人分だ」


 ラドが簡潔に答える。

 書類が差し出される。


「年齢、出身、得意分野を」


 イーリャは、一瞬止まった。

 ――出身……?


「……辺境です」


 ラドがさらりと補足する。


「魔物被害の多い地域で育った。戦闘経験はある」


 受付嬢は疑わず、頷いた。


「では、適性試験をお願いします」


 案内されたのは裏庭の訓練場だった。

 木製の人形が並び、魔力測定用の水晶が置かれていた。


「まずは魔力測定」


 イーリャは、水晶に手をかざす。


 ほんの少しだけ、力を流す。

 ほんの、少し。

 それでも水晶の内部に亀裂が入った。

 周囲がざわついた。


「……高いな」


 試験官が眉を上げる。


「次、攻撃」


 木人形へ。


 イーリャは拳を握る。


(壊さないように)


 軽く。

 本当に、軽く。

 こつん。

 次の瞬間、木人形の上半分が、木っ端微塵になった。

 

「……軽くやったんです」


 イーリャは、慌てて言った。

 試験官は、びっくりして言った。


「どこで訓練をしたんだ?」


「辺境葉、生きてるだけで訓練になるんだ」


 ラドが、一歩前に出た。


「……そういうことにしておこう」


 試験官は苦笑した。


「最後は模擬戦だ」


 相手は若い剣士だった。


「手加減してくれよ、坊主」


「……がんばります」


 開始の合図。

 剣が振り下ろされる。

 イーリャは避ける。

 避ける。

 避ける。


「攻撃しないのか!?」


「したら終わるので」


 小さく呟き、足を払う。

 剣士は綺麗に尻もちをついた。

 怪我はない。

 だが、勝負はついた。

 静まり返る訓練場。

 やがて、どこかで笑い声が上がった。


「面白いな、この子」


「怪力かと思えば、動きは慎重だ」


 受付嬢が書類をまとめる。


「合格です。ランクは……暫定D」


 木札が手渡された。


 イーリャは、それを両手で受け取った。


「……冒険者」


 胸が、少し高鳴る。

 人間の制度。

 人間の秩序。

 その中に、自分の名前が刻まれた。

 ラドが低く言う。


「ここからは、本当の試験だ」


「はい」


 善も悪も混じる場所。

 だがイーリャは、まっすぐ前を見る。

 その様子を、二階の手すりから見下ろす影があった。


「……面白い」


 黒衣の男が呟く。


「あれが、光と魔族の混血か」



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