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第29話 現代ダンジョンの異変


異変は、

数字として先に現れた。


 



 


「……この被害報告、

 おかしくないですか?」


 


探索者ギルド本部。

分析室。


 


雨宮かなえは、

タブレットを指でなぞりながら言った。


 



 


「死亡率は低い。

 でも――」


 


「負傷者の内訳が、

 偏りすぎてる」


 



 


ライムは、

画面を覗き込む。


 



 


「回復役……

 支援職ばかりだな」


 



 


「ええ」


 


かなえは、

頷く。


 


「前衛や攻撃職より、

 明らかに狙われている」


 



 


「偶然、

 とは言えない」


 


百瀬くるみが、

短く結論づけた。


 



 


「魔物が、

 学習している可能性がある」


 



 


「……そんなこと、

 今までなかっただろ」


 


佐野すすむが、

眉をひそめる。


 



 


「普通は、

 目についた相手を

 襲うだけだ」


 



 


「普通、

 ならな」


 


ライムは、

静かに答えた。


 



 


出動要請。


 


場所は、

都市近郊・第三十二ダンジョン。


 



 


「中層以降で、

 回復役が集中的に

 狙われています」


 



 


「支援職同行、

 必須任務です」


 



 


マリルは、

説明を聞きながら

小さく息を吸った。


 



 


「……狙われる、

 ということは」


 



 


「俺たちが、

 脅威だと

 認識されたってことだ」


 


ライムは、

はっきり言った。


 



 


ダンジョン内部。


 


空気が、

重い。


 



 


「視線を、

 感じます」


 


ひまわりが、

小声で言う。


 



 


壁の影が、

不自然に揺れる。


 



 


「来るぞ」


 



 


魔物出現。


 


だが――

前に出ない。


 



 


距離を保ち、

左右に散る。


 



 


「包囲?」


 


佐野が、

驚いた声を上げる。


 



 


「違う……

 誘導だ」


 


ライムは、

マリルを見る。


 



 


魔物の視線は、

明らかに

彼女を追っていた。


 



 


「マリル、

 俺の後ろ!」


 



 


雷が、

空間を走る。


 


だが――

魔物は、

回避した。


 



 


「……避けた?」


 



 


「やっぱり、

 学習してる」


 


くるみが、

歯噛みする。


 



 


突然。


 


床が、

崩れた。


 



 


「下から来る!」


 



 


地下から飛び出した

魔物が、

一直線にマリルへ。


 



 


「――っ!」


 


マリルが、

後退する。


 



 


だが――

逃げない。


 



 


「生命の流れを、

 遮断」


 



 


光が、

刃のように走る。


 



 


魔物の動きが、

止まる。


 



 


「今!」


 



 


ライムの雷が、

落ちた。


 



 


一体撃破。


 


だが――

まだいる。


 



 


「数が……

 増えてます!」


 



 


「撤退準備!」


 


ライムが、

即断する。


 



 


「深追いするな!」


 



 


撤退中。


 


背後から、

圧を感じる。


 



 


「……来る」


 


ライムが、

振り返った。


 



 


そこにいたのは――

魔物ではなかった。


 



 


“歪み”だ。


 


空間が、

ねじれている。


 



 


「……境界反応?」


 


かなえが、

息を呑む。


 



 


「まさか……

 このダンジョン、

 向こう側と――」


 



 


「繋がりかけている」


 


マリルが、

静かに言った。


 



 


「異世界の……

 気配がします」


 



 


一瞬。


 


向こう側の影が、

見えた気がした。


 



 


それは、

ドラグではない。


 


だが――

同質の“意思”。


 



 


「……引くぞ」


 


ライムは、

雷を放ち、

歪みを押し返す。


 



 


帰還。


 


ギルドは、

緊急会議を開いた。


 



 


「魔物の行動変化、

 境界反応」


 


ギルドマスターが、

重く言う。


 



 


「偶然とは、

 思えません」


 



 


「……始まってるな」


 


佐野が、

呟く。


 



 


「第二章の終わり、

 って感じじゃ

 ないですね」


 


ひまわりが、

苦笑する。


 



 


ライムは、

黙ってカードを見た。


 


――――――――

名前:ライム

レベル:20

職能:雷魔法士

称号:世界を守った存在

――――――――


 



 


「……世界は、

 まだ落ち着かない」


 



 


だが、

恐怖はない。


 


彼には、

仲間がいる。


 


この世界で、

生きると決めた理由がある。


 



 


ダンジョンは、

現代に適応し始めている。


 


ならば――

探索者も、

進化するしかない。


 


次の雷は、

試練ではない。


 


選ばれた戦場で、

鳴る。



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