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第21話 雷は、再会を呼ぶ


雷は、嫌いじゃない。


 


空を裂くあの音は、

異世界でも、現代でも、

同じように胸の奥を震わせる。


 


だが――

今日は違った。


 



 


ダンジョン発生から五年。

探索者として生き始めて、半年。


 


ライムは、地方都市にある中規模ダンジョンの前に立っていた。


 


「……妙だな」


 


隣で、雨宮かなえが小さく眉を寄せる。


 


「雷属性の反応が、

 このダンジョン……強すぎない?」


 



 


通常、雷属性の魔力は一過性だ。

溜まり続けることはない。


 


だが今――

入口付近ですら、

肌が静電気を帯びるように痺れている。


 



 


「ギルドの測定器も、

 誤作動かと思ったけど……」


 


かなえは端末を確認する。


 


「数値が、

 ダンジョン深層並みよ」


 



 


ライムは、

ゆっくりと息を吐いた。


 


「……行こう」


 


「え?」


 


「俺が、

 呼ばれてる」


 



 


ダンジョン内部。


 


壁を流れる魔力が、

明らかにおかしい。


 


雷属性が、

脈を打つように循環している。


 



 


「まるで……」


かなえが、

呟く。


 


「誰かが、

 内側から叩いてるみたい」


 



 


その感覚に、

ライムの胸がざわついた。


 


雷魔法士としてではない。

一人の人間として。


 


懐かしい、

だが忘れられない感触。


 



 


深層。


 


本来なら、

このダンジョンに存在しないはずの空間。


 


そこに――

“裂け目”があった。


 



 


空間が、

雷のように歪んでいる。


 


バチバチと、

音が鳴る。


 



 


「撤退!」


かなえが、

即座に判断する。


 


「これは――」


 



 


だが、

裂け目が広がった。


 


光が、

溢れ出す。


 



 


ライムは、

足を止めた。


 


「……違う」


 


「これは、

 暴走じゃない」


 



 


雷が、

“制御されている”。


 



 


次の瞬間。


 


裂け目の中から、

二つの影が――

転がるように現れた。


 



 


床に倒れ込む、

ローブ姿の男。


 


そして、

白を基調とした装束の少女。


 



 


雷が、

静かに消える。


 



 


「……成功、か」


 


男が、

掠れた声で呟いた。


 



 


その声を聞いた瞬間、

ライムの心臓が跳ね上がる。


 



 


「……リドム?」


 



 


男が、

ゆっくりと顔を上げる。


 


眼鏡の奥の瞳が、

見開かれた。


 



 


「……ライム?」


 



 


次の瞬間、

言葉はいらなかった。


 


ライムは、

駆け出していた。


 



 


「生きてたのか……!」


 


「お前こそ!」


 


二人は、

衝動のままに抱き合った。


 


異世界で別れた、

あの日以来。


 


五年分の時間が、

一瞬で消える。


 



 


「……本当に、

 現代だったんだな」


 


リドムは、

周囲を見回す。


 



 


「……?」


 


その様子を、

呆然と見ていた少女が、

おずおずと口を開いた。


 



 


「……あの、

 ここは……天界、

 でしょうか……?」


 



 


ライムは、

我に返る。


 


「……違う」


 


「ここは、

 俺が生きてる世界だ」


 



 


少女は、

戸惑いながらも頷いた。


 


「……私は、

 聖女マリルと申します」


 



 


その名を聞いて、

ライムは一瞬だけ目を見開く。


 


異世界で語られていた、

“最後の聖女”。


 



 


「……ようこそ」


 


ライムは、

ゆっくりと言った。


 


「現代日本へ」


 



 


ダンジョンの奥で、

再会の雷が静かに消える。


 


だがそれは――

嵐の終わりではない。


 


新しい物語の、

始まりだった。


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