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第16話 最終深層へ


集合は、夜明け前だった。


 


探索者ギルド本部の地下。

普段は使われない、

大型転送ゲート前。


 


空気が、冷たい。


 



 


「全員、揃ってるな」


雨宮かなえの声は、

いつもより低く、引き締まっていた。


 


「今回の任務は、

最終深層の確認および封鎖」


 


「――そして」


一拍置く。


 


「魔族ドラグの撃破」


 



 


誰も、声を上げなかった。


その名が持つ意味を、

全員が理解している。


 



 


ライムは、

静かにゲートを見つめていた。


 


五年前にダンジョンが現れ、

三年前にギルドが設立され、

二年前に探索が始まった。


 


だが――

この“深層”だけは、

誰も踏み込めなかった場所。


 



 


「怖いか?」


佐野すすむが、

隣で小さく聞いた。


 


「……少しな」


ライムは、正直に答えた。


 


「でも、

それ以上に――」


 


「終わらせたい」


 



 


佐野は、

短く笑った。


 


「だろうな」


 



 


転送が、始まる。


 


光が、

視界を覆った。


 



 


次の瞬間。


 


重力が、

一段階増したような感覚。


 



 


「……ここが」


ひまわりが、

息を呑む。


 



 


最終ダンジョン。


 


空間は、

地下であるはずなのに、

空が見えた。


 


黒い雲が、

ゆっくりと渦を巻いている。


 



 


地面は、

石とも金属ともつかない素材。


脈打つように、

微かに光っている。


 



 


「魔力濃度、

測定不能……」


くるみが、

機器を下ろす。


 


「完全に、

異世界側だ」


 



 


「気を抜くな」


雨宮が、

全員を見渡す。


 


「ここから先、

退路はない」


 



 


進行開始。


 


足音が、

異様に響く。


 



 


最初の敵は、

配下魔族だった。


 


人型。


だが、

目が三つある。


 



 


「来る!」


 



 


連携は、

すでに完成されていた。


 


佐野が、

前線を固定。


 


ひまわりが、

援護魔法を展開。


 


くるみが、

弱点を即座に共有。


 



 


ライムは、

中央突破。


 


雷を、

過剰には使わない。


 



 


「――接触雷」


 


一撃。


 


魔族が、

崩れ落ちる。


 



 


だが、

終わらない。


 


第二波。

第三波。


 



 


「数が……!」


 



 


「問題ない」


ライムは、

雷装を発動する。


 



 


「――《雷装・深化》」


 


世界が、

再び遅くなる。


 



 


敵の動きが、

線で見える。


 



 


一体、一体。


 


確実に、

倒していく。


 



 


やがて――

静寂。


 



 


全員、

息を整える。


 


「……成長したな」


雨宮が、

ライムを見る。


 


「異世界から来た頃とは、

別人だ」


 



 


「仲間が、

いたからだ」


ライムは、

そう答えた。


 



 


進行。


 


奥へ。


 


さらに奥へ。


 



 


やがて、

巨大な空間に出た。


 



 


中央に――

玉座。


 



 


そこに、

“座っている”存在がいた。


 



 


黒い角。

赤い瞳。

圧倒的な魔力。


 



 


「……来たか」


 


低く、

だがはっきりとした声。


 



 


「ドラグ……!」


 


ライムの胸が、

強く鳴った。


 



 


『随分と、

仲間が増えたな』


 


ドラグは、

愉快そうに言った。


 


『雷よ』


『今度は、

守る側か?』


 



 


「……ああ」


 


ライムは、

一歩前に出る。


 


「この世界は、

俺の居場所だ」


 



 


『ならば』


ドラグが、

立ち上がる。


 


空間が、

軋む。


 



 


『その覚悟、

力で示せ』


 



 


雷が、

空間を走った。


 


ライムの全身が、

眩い光に包まれる。


 



 


「――行くぞ」


 


仲間たちが、

無言でうなずいた。


 



 


最終決戦。


 


それは、

始まったばかりだった。


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