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第14話 深層が呼ぶ名


異変は、同時多発的に起きた。


 


日本各地のダンジョンで、

ほぼ同じ報告が上がったのだ。


――深層魔力、異常上昇。


 



 


探索者ギルド本部。

大型モニターに、

日本地図が映し出される。


赤い警告表示が、

次々と点灯していく。


「……五十のうち、

 二十六」


雨宮かなえの声が、

低く沈んだ。


「半数以上が、

 同時に不安定化」


 



 


「偶然じゃないな」


佐野すすむが、

腕を組む。


「誰かが、

 意図的にやってる」


 



 


ライムは、

その光景を黙って見つめていた。


胸の奥が、

重くざわつく。


――来た。


 



 


「……原因は、

 ドラグだ」


その名を口にした瞬間、

場の空気が、凍る。


 



 


「異世界で、

 俺を追い詰めた魔族」


「ダンジョンを通して、

 この世界に干渉してる」


 



 


ひまわりが、

息をのむ。


「……じゃあ、

 これ全部……」


 



 


「前触れだ」


ライムは、

断言した。


「本命は、

 もっと深いところにいる」


 



 


緊急対策会議は、

即座に打ち切られた。


結論は一つ。


深層調査班の派遣。


 



 


向かったのは、

都内最大規模のダンジョン。


通称――

旧湾岸深層坑。


 



 


「ここ、

 前より空気が重い」


くるみが、

魔力計を見つめる。


「数値、

 通常の一・五倍」


 



 


「無理はしない」


雨宮が、

全員に目を向ける。


「異変を確認したら、

 即撤退」


 



 


だが――

深層に進むにつれ、

空間は歪み始めた。


壁が、

脈打つように動いている。


 



 


「……生きてるみたいだ」


佐野が、

吐き捨てるように言う。


 



 


魔物出現。


今までとは、

明らかに違う。


 



 


「……魔族寄りだ」


ライムは、

即座に判断した。


「思考がある」


 



 


戦闘。


連携は、

完璧だった。


だが――

敵が、しぶとい。


 



 


「くそっ……!」


佐野の盾に、

深い亀裂が入る。


「これ以上は――」


 



 


「下がれ!」


ライムが、前に出た。


 


雷を、

静かに集める。


 



 


「――《雷装・深化》」


雷装の上位応用。


※雷を皮膚の内側にまで巡らせ、

 反応速度と魔力制御を極限まで高める技


 



 


世界が、

スローモーションになる。


 



 


魔物の動きが、

手に取るように見えた。


 



 


「……遅い」


 


一歩。


二歩。


 


雷が、

閃いた。


 



 


魔物は、

抵抗する間もなく、

消滅した。


 



 


だが――

安堵は、なかった。


 



 


深層最奥。


そこにあったのは――

巨大な“門”。


 



 


異世界で見たものと、

同じ構造。


だが、

完全ではない。


 



 


「……途中まで、

 開いてる」


雨宮の声が、震える。


 



 


門の向こうから、

声が響いた。


 


『雷の子よ』


 



 


全員が、

息を呑む。


 



 


『よくぞ、

 ここまで来た』


 



 


ライムは、

一歩前に出た。


「……ドラグ」


 



 


『ほう。

 覚えていたか』


 



 


異世界で聞いた、

低く、粘つく声。


間違いない。


 



 


「お前が、

 この世界を狙っている理由は?」


 



 


『理由?』


ドラグが、

嗤う。


 


『世界など、

 どこでもよい』


『雷よ』


『お前が、

 ここにいることが、

 気に食わぬだけだ』


 



 


「……俺を、

 追ってきたのか」


 



 


『逃げたと思ったか?』


『違う』


『お前は――

 ここで根を張った』


 



 


ドラグの声が、

低くなる。


 


『ならば、

 ここを――

 戦場にする』


 



 


門が、

大きく脈打つ。


 



 


「撤退だ!」


雨宮が、叫ぶ。


「今は、

 まだ早い!」


 



 


全員が、

即座に動く。


だが――

ライムだけが、

一瞬、立ち止まった。


 



 


「……俺は」


 



 


異世界では、

逃げた。


命を守るために。


 


だが――

今は違う。


 



 


「次は、

 逃げない」


 



 


雷が、

小さく鳴った。


 



 


地上。


夜の街。


人々は、

何も知らずに眠っている。


 



 


ライムは、

空を見上げた。


 



 


「……必ず、

 終わらせる」


 


視界に、

光が浮かぶ。


 


【ステータス更新】


名前:ライム

レベル:14


魔力:大幅向上

耐久:向上

敏捷:大幅向上


スキル

・雷魔法(中級)

・雷装

・雷装・深化

・接触雷

・ライトスパーク・バースト


 


雷は、

もはや逃走のための力ではない。


守るために――

敵と向き合うためにある。


そして深層で、

魔族ドラグは、

確信していた。


この雷は、

必ず自分の前に立つ、と。


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