おばけちゃん、うみに行く
ひだまり童話館さま『ゆらゆらな話』参加作品です。
おはなしにイラストがたっぷり出てきます。
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よろしくお願いします。
黒ネコもあくびをする夜ふけになると、ぱちっと窓のあかりがつきました。
立派なおばけになるためのおべんきょうをする『おばけ学校』です。
一年生のおばけクラスには、おばけ先生と五匹のかわいいおばけがいます。
まんまるおばけのまるすけ、ほそながおばけのほそやまさん、ふたごおばけのふーくんとたーくん、そして、ちいさなおばけのおばけちゃんです。
「おばけ先生、おそようございます!」
「みなさん、おそようどろん」
夜のあいさつをしたらさっそく立派なおばけになるためのおべんきょうがはじまります。
「今から、おばけらしく透明になるどろん」
「はーい!」
「お月さまの光をあびながら、『きえろよ きえろ どろろんろん』と呪文を唱えるどろん」
「はーい!」
まんまるおばけのまるすけがお月さまの光をあびると、ぴっかりと光りました。
「きえろよ きえろ どろろんろん」
まるすけが呪文を唱えると、すううと消えて透明になりました。
みんなもお月さまの光をあびようとしたら、くもさんとおはなしをはじめてしまいました。
これではお月さまの光をあびることができません。
「これはこまったどろん」
おばけ先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいものがあったどろん」
おばけ先生はひらめきました。
たぷんたぷん揺れる液体のはいったビンをもってきました。
「これは、透明人間さんにもらった透明になる薬だどろん。これを飲めば透明になるんだどろん」
ちゃぽちゃぽ揺れる透明になる薬をほそやまさんが飲むと、すううと透明になりました。
ふーくんとたーくん、それからおばけちゃんも透明になる薬を飲もうとしたら、空っぽになってしまいました。
これでは透明になることができません。
「これはこまったどろん」
おばけ先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいものがあったどろん」
おばけ先生はひらめきました。
ゆらゆら揺れる火の玉のついた釣り竿をもってきました。
「これは、おばけ釣り竿どろん。おばけ海にいる透明なおばけイカを釣りあげて食べるどろん。イカは灯りによってくるんだどろん」
おばけ先生がゆらゆら揺れる火の玉をおばけ海にちゃぽんとたらすと、釣り竿が大きくうごきました。おばけ先生が透明なイカをつりあげようとしたときです。
「ひっぱらないでどろん――!」
おばけ先生がおばけイカに釣りあげられて、びゅーんととおくの海まで連れていかれてしまいました。
「おばけ先生がいなくなっちゃった!」
五匹のおばけたちがぽかんとしていると声がきこえました。
「おばけ先生はどうしたんでござる?」
「あっ、ニンジャ先生!」
ニンジャ先生は、ニンジャの里に伝わる秘伝の術をおばけたちに教えるために、おばけ学校の先生をしています。
ほそやまさんは、ニンジャ先生におばけ先生が海の遠くまで行ってしまったことを言いました。
これでは透明イカを食べることができません。
「これはこまったでござる」
ニンジャ先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいことをおもいついたでござる」
ニンジャ先生はひらめきました。
まだ浮かんでいないふーくんとたーくん、おばけちゃんに風呂敷を渡しました。
「おばけたちに、とっておきの忍法をおしえるでござる」
ふーくんとたーくん、おばけちゃんが、ワクワクしながらニンジャ先生の風呂敷を持ちました。
「忍法かくれみの!」
ニンジャ先生が風呂敷を広げると、ニンジャ先生が消えてしまいました。ふーくんとたーくん、おばけちゃんもマネしてやってみます。
「できた──!」
「きえた──!」
「きゃあ──!」
ふーくんとたーくんは上手に風呂敷をひろげたので、どろんと消えます。
ところが小さなおばけちゃんは、風呂敷にからまって海にぽちゃんと落っこちてしまいました。
ニンジャ先生が忍法ミズグモの術で海に落ちたおばけちゃんと、おばけ先生をつれもどしてきました。ふーくんとたーくんは、おばけちゃんのリボンがぬれて泣いていることを言いました。
これでは、授業のつづきができません。
「これはこまったどろん」
「これはこまったでござる」
おばけ先生とニンジャ先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいことをおもいついたでござる」
ニンジャ先生はひらめきました。
「びしょびしょおばけは、おばけ火の玉で乾くでござる」
しくしくおばけちゃんとみんなで、おばけ火の玉のたき火をします。
「もえるばけ〜もえるばけ〜火の玉よ、もえるばけ〜」
おばけたちで歌うと、おばけちゃんのリボンはすっかり乾きましたが、おばけちゃんだけ透明になることができません。
これではおばけらしくありません。
「これはこまったどろん」
「これはこまったでござる」
おばけ先生とニンジャ先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいことをおもいついたどろん」
おばけ先生はひらめきました。
おばけ先生がおばけ巻物をしゅるりとひろげます。
「秘伝のおばけレシピがのっているどろん」
ニンジャ先生も横からのぞいて、ふむふむうなずいています。
「透明イカのイカ墨で透明になるおばけインクを作って塗れば、どんなおばけも透明になるんだどろん」
みんなで透明インクを作ります。
まぜまぜ、ぐるぐる、かきまぜるどろん。
まぜまぜ、ぐるぐる、かきまぜるどろん。
大きなボールにイカスミを入れるどろん。
お月さまの光をぴっかり浴びた透明草をちぎってどろん。
ちょろっと残った透明薬もポタンどろん。
ニンジャ先生の風呂敷でパタパタ風をおくるでござる。
最後に透明イカにまぜてもらうどろん。
まぜまぜ、ぐるぐる、かきまぜるどろん。
まぜまぜ、ぐるぐる、かきまぜるどろん。
「あとはおばけたき火で煮るだけどろん」
おばけたき火で煮たおばけインクから、もこもこ、ふわふわゆげがあがっていきます。
あちあち、あつあつのおばけインクをさまして、おばけちゃんにぬりぬりすれば。
「わあああ〜きえた〜」
おばけインクを塗ったおばけちゃんは、夜空に消えてしまいます。
「おおお〜だいせいこうだどろん〜」
「うむうむ〜すごいでござる〜」
おばけ先生もニンジャ先生もまるすけ、ほそやまさん、それにふーくんとたーくんもおばけインクを塗るとすううと夜空に消えていきました。
一年生のおばけたちは、みんなおばけらしく透明になることができました。
もう困ったことはありません。
みんなでかえりの会をはじめます。
「みなさん、朝ふかししないようにねるどろん」
「はーい! おばけ先生、ニンジャ先生、さようなら」
「さようならどろん」
「さようならでござる」
今日のおばけ学校はこれでおしまいです。
みなさん、朝ふかししないようにおやすみなさい──。
おしまいどろん
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