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魔令嬢ダムナティオメモリアエ  作者: はすたー
2/5

第一話 魔族でもいいのか?

「ボロ布のようなワンピースは分かる。しかし、鎧なんて身につけた覚えがないぞ……ったく、重いなぁ」


 ボロ布というかボロ雑巾だな。

 そんなボロボロのワンピースが、俺の一張羅であるのだが、いつの間にかーー気づいたら、そんな一張羅の上から、豪奢な装飾が施された胸鎧を身に付けていた。


「うーん、こんな指輪も知らん。自分で言うのもなんだが、ファッションに関しては無頓着なつもりなんだけど……」


 豪奢な胸鎧もだが、両手の五指にも指輪がーーまったく記憶ないぞ!?


 それはともかく、俺はエフェポスというそこそこ大きな町へ流れ着く。

 ブルーノワールと呼ばれる世界においてもっとも広大な大陸であるアルシュバン大陸の東方の僻地に点在する町のひとつである。

 まあ、そこまでは大丈夫であるが、肝心なのはその後である。

 何せ、俺は人畜有害な種族、魔王の眷族なんて言われ忌み嫌われる魔族なわけでーー。


「あの女、魔族だ!」


「うん、頭に生えている禍々しい角なんて魔族の象徴だしな!」


「見た目は十四、五歳くらいの小娘だが、そんの見た目に騙されるなよ、お前ら!」


「分かっている。魔族はエルフ並みに長寿らしいからな。きっと実年齢は百歳以上のババアのはずだしな」


「…………」


 うわぁ、色々言ってくれちゃって……。

 魔族とは、そんなに嫌われる存在なのか!?

 とにかく、イラっとしたのでごちゃごちゃと因縁をつけてきた男達のもとに俺は反論すべく歩み寄る。


「魔族だが何か問題でも? それにいいのかぁ、俺だからって差別しても?」


「む、むう! そういわけでは……」


「おい、行くぞ。そんな奴、構うな!」


「あ、逃げたな。やれやれ……」


 男達はヒィと喉の奥で悲鳴をあげながら逃げ出す。

 むう、逃げるなら最初からごちゃごちゃと因縁をつけてくるんじゃあないって話だ。


「俺のことが怖かったのか? しかし、この外見を怖がるものがいるとは意外だ」


「ハハハ、意外もクソもないさ。アイツらのような意気地のないくせに冒険者を気取ってる輩が、この町には数多いるし、それ以上にアールマティ女王が怖いだろうさ」


「ん、そうなのか……って誰だよ、アンタ?」


「ああ、僕は旅の僧侶さ。んで、名前はマリウス。そんなわけでよろしく魔族のお嬢さん☆」


「あ、ああ、よろしく……」


 などと語りかけてくるマリウスと名乗る如何にもキザな色男が、フッと前髪をかけあげながら現れる。


「アールマティ女王のことを知っているだろう?」


「え、誰かな……かな?」


「おいおい、魔族の君が知らないはずがないだろう。僕らが今いるエフェポスの町も領土内に含むマーテル王国の現最高国家元首様のことさ。ついでに、あの方は君と同じ魔族だってウワサらしい」


「ふーん、そうなんだ……って、なるほどね! そんなアールマティ女王が同じ魔族を差別するものに対し、目を光らせているってところかな?」


「間違ってはいないね。あの方の庇護の下、マーテル王国の領土内に暮らす魔族は、他国よりも自由が利くのさ」


 へえ、今いるエフェポスの町は、俺と同じ魔族だウワサされるアールマティ女王とやらが支配するマーテル王国の領土内にある町のひとつのようだ。

 故に、魔族は庇護の対象ーー差別行為を行ったものに対し、何かしらの処罰が下される可能性があるわけか!?

 ああ、それであの男達はごちゃごちゃ言いまくっていたくせに、いざ俺が歩み寄ると何もせずに逃げ出したのかな?


「この町で魔族を大っぴらに批判する連中がいるとしたら、空気が読めないアホか、この国のことを何も知らない他国からやって来た余所者さ。おっと、それどうでもいいが君は似ているんだよなぁ。まさに瓜二つってくらい!」


「ん、今度はなんだ? 誰に似ているって言うんだ?」


「ハハハ、済まない。知人のつい先日、亡くなった娘さんにさ」


「へえ、気になるじゃない。話してくれよ」


 マリウスと名乗る色男だが、今度は何を言い出すかと思えばーーが、なんだかんだと気になるので、その理由を訊いてみるとしよう。

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