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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第十一章 ヒロインは幸せに暮らしました(ミカ)

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4.ヒロインの考察

 それからタイチは食事を作ってくれて、食べ終えると農作業の為に家を出て行った。私もちゃんと後片付けをして、次の食事作りについて考えた。今食べたのは朝食と昼食を兼ねてたから、今日は少し早い時間に夕食を食べよう。買いものには行きたくないから家にある野菜をトマトで煮こんで・・・


 目の前の事だけを考えようとするのに、手も頭もいつの間にか止まってしまう。家族のいい瞬間だけが頭に浮かぶ。母がまだ引きこもらずに王妃として立派に務めを果たしていた頃、母はとても美しかった。父は多少気分屋ではあったが、貫禄があり優しくて大好きだった。弟も可愛くて、姉さまなんて言って抱きついてきたりして・・・


 気が付けばまた涙が溢れていた。どうしてこんな事になったのだろう、私が何かを間違えたのか。私は前世の記憶を持つ異世界転生者で、チートはないけれどあり得ないほど素敵な恋人と結ばれた。きっと乙女ゲームだった筈だ、なのにどうして”いつまでも幸せに暮らしました”とはならなかったのか。こんな鬱エンドおかしいだろ。


 何度も手を止めながら食材を切り鍋に放り込む。今日はトマトを沢山いれたので水分が多い。このまま煮込んだらハッシュドビーフにならないかな。ビーフ入ってないけど。赤ワイン入れたらそれっぽくなるだろうか。でも真夏に煮込み料理ってどうなんだろう。


 鍋をかき混ぜながら考える。選んだ相手が悪かったんだろうか。タイチを選ぶと国が傾く設定だったんだろうか。仮にドーナー家の長男を選んでいれば王家が倒されることもなく貴族も増々栄えたんだろうか。だって私が知る限りあの国の貴族が領地でひどい圧政を行ったという記録はない。革命が起きるほどのことなんてなかった筈だ。なのに何故。


 煮詰まってきた鍋を眺めて赤ワインを投入する。なんだかそれっぽくなってきた。焚火もいい感じで炭化してきたので、鍋に水を追加し火のそばから離れた。日陰に椅子を置いてぼんやりと水を飲む。


 でもゲームならタイチを選んだら鬱エンドというのはおかしい。絶対に救済措置があるはずだ、だってタイチはカッコいいし絶対ファンも多い。不幸にしかならないなんてそんなの許されるわけがない。そうであればやはり私が選択肢を間違えたのか・・・どこだった? 分岐はどこにあった? フラグを立て損ねたのかな。ハッピーエンドには何が必要だった?


 じっとりと汗ばんでくる額を拭う。離れていても火のそばは暑い。やはり真夏に煮込み料理なんてするもんじゃないな。けれどぐつぐつと料理が煮える音は良いものだ。


 しばらくぼんやりしてしまい慌てて立ち上がった。炎は出ていないけれどまだまだ高温なかまどを掻き回し鍋に蓋をする。台所に行って小麦粉を練り冷暗所に放置する。これで夕食の支度は終わりだ。少し休憩しよう。


 かまど近くの椅子に座ってまた考える。平等主義の流れは私が止められるものではなかった、と思う。ひょっとしたら攻略対象に平等主義のリーダーとかがいたのかもしれないな。そいつの好感度を上げれば止められたのかもしれない。でもそもそも出会ってないしな・・・家と学校の往復しかしなかったのが悪かったんだろうか。街中で偶然知り合った相手が実は、とかだったのなら私には無理だ。私は知らない人と話さなかったから。王女ってそういうものだし。


 ユウマはその男に首を落とされたんだろうか。人が沢山いる広場で怒声を浴びながら・・・想像しただけで身震いした。あれ、でも何か変だな。ルビーはその時何をしてたんだろう。


 昨夜の私はなぜか脳裏にはっきりと、ルビーがユウマの首を切り落とす瞬間が見えていた。だからルビーが全て悪いと思って飛びかかった。父も母も、全部ルビーが手にかけたんだと。でもそんな事ルビーは言ってなかった・・・?


 頭を押さえて考え続けるが、混乱し過ぎてまったく考えがまとまらない。


 ルビーは女だ、だから攻略対象ではない。


 ルビーがみんなを殺した。魔女だからそれは可能だった。


 平等主義のリーダーがユウマの首を切り落とした。


 平等主義のリーダーは・・・誰だ?


 この頭の中にはっきりとある”断頭台の上で裁かれる王族”の絵はなんだ? 違うゲームやアニメと勘違いしている? 確かによくあるシーンだ。でも、黒いドレスを着て銀髪をなびかせ手を振り下ろすあの女は。


 間違いなくルビーだ。


 黒いドレスは私があげたもの、右手の青い指輪は私がパルに渡したもの。


 なんだか馬鹿馬鹿しくなって笑いがこみ上げた。今までどうでもいい黒歴史しか思い出せなかったのに、唯一思い出せたのがこの場面か。友人が弟を手にかける瞬間か。友人ではなかったかもしれないけれど、私はルビーが好きだった。猫のルビーはいつだってユウマを大好きだった。見ていて少しユウマが羨ましくなるほどに。


「くだらねー・・・」


 顔を覆って呟く。もう涙は出なかった。私はもっと考えなくてはいけない。


『平等主義のリーダーがユウマの首を落とした』とルビーは言った。ユウマの首を落としたのがルビーだとしたら、ルビーが平等主義のリーダーだ。つまり私はルビーの好感度を上げ損ねたのか。ならなんでルビーは私たちを逃がしてくれたんだろう。わからない。


 それにずっとユウマのそばにいながら平等主義のリーダーをしてたなんてちょっとおかしくはないだろうか。猫の姿でリーダーしてたの?


 ちょっと馬鹿馬鹿しくなって手足を投げ出す。こんな風にだらしなく座っているのを見られたら大目玉だ。あの行儀の先生は・・・まあ長い間王城に来てなかったから無事だろう。でも王族が消されたという事は次は貴族に矛先が向くに違いない。大丈夫かなあ。みんな死ななきゃいいけど。 


 他人事のように思って空を見上げた。今日もいい天気だ。空が青い、全然雨降りそうもないねタイチ。


 立ち上がって鍋をかき混ぜる。なかなかいい感じだ。唐辛子とか入れても美味しいだろうな、でも食べたら暑くなるか。ただでさえ暑いのに。


 また鍋に蓋をして椅子に戻った。どこまで考えたっけ。ルビーが全部の黒幕ってことなんだったけ。でもそれもしっくりこないなぁ。やっぱりもっとゲームの事思い出さないと。


 ゲーム、これはゲームだ。そうじゃないと色々おかしい。


 でもリセットはできないんだろうなぁ・・・それにできたとしても私は以前と別の行動をとらないといけなくなる。タイチと過ごしたあの素晴らしい時間がなくなったり減ってしまったりするのは嫌だ。そりゃ今思い出せば昔の黒歴史なみに奇声を上げて転がりたくなることもあるけれど、全部大事な思い出だ。あの恋愛漫画の恥ずかしい主人公のようだった私を、タイチは大きな手で全て肯定してくれた。あれをなかった事にするなんて無理だ。


「・・・あれ? 結局私が悪いの?」


 嫌な結論に達してしまった。私がちゃんとクリアしなかったから悪いの? だって好きな人と結ばれたらそれで大円団だと思ってたんだもん。それ以外にやる事があるなんて思ってなかったし、それならそうと先に言っといてくれないと・・・ねぇ?


 絵の具で塗ったような空を見上げる。もうこのゲームはエンディングを迎えちゃってるのかな。でもヒロインが真犯人?を殴ってENDてなんか変だよね。それに猫がリーダーの謎も解けてないし・・・やっぱりまだ真エンディングがあるんじゃない? これから大逆転とか、できるんじゃない?


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