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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第十章 握ったこぶしを(ルビー)

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5.必ず手に入れたいものは

「お疲れさん。」


 そう言って隣に現れたのはパルだった。別に呼んでないのにちゃんと見物に来ていたらしい。


「・・・疲れたよ。」


 私はぼやいてため息をついた。なんだか力が抜けてしまったようだ。別に気負ってるつもりも緊張しているつもりもなかったけれど。


「しかしあの子、泣きも怒りもしなかったね。あれは悪魔にならないね。」


 なぜかパルは楽しそうだ。うるさいとは思ったけれど追い払う元気はなかった。


「ねえ、最後にユウマに何て言ったの? あの時だけ怯えた顔してたよね、あんなに大勢の人に死ねって言われても動じてなかったのに。」


「うるさいな。なんでそんなに楽しそうなの?」


「だって面白かったもん。ほんっと人間ってクソだよね。」


 パルは笑って言ったが、奥底に人間への憎悪が見えた。そう、これが悪魔が悪魔たる所以だ。人間に虐げられ涙を枯らし人間をひたすら恨んだ奴が悪魔になる。だから悪魔は泣かない。ただ少し悲しくなるだけだ。


「・・・あーあ、また生まれるまで百年ぐらい待たなくちゃ。めんどくさ。」


「いいじゃないルビーは生まれ変わった相手でも見つけられるんだから。僕には魂の見分けなんてつかないよ。」


「ユマの魂は特別だもん。」


「羨ましいよ。」


 夕日は沈んで徐々に辺りは薄暗くなっていった。だが町はまだ騒めいている。きっとしばらくはお祭り騒ぎなんだろう。


「ねえ、パルは人を好きになったことある?」


「それなりに。」


 そう言ってパルはチラッと私を見た。あれ? ひょっとして私の事だろうか。


「・・・好きな人を殺した事は?」


「ない」


「愛と殺意は紙一重だと思う?」


「思わない。・・・なんなのこの質問。」


「凹んでんのよ。くだらない話しようよ。」


 パルはため息をついたが居なくなりはしなかった。優しいなあ。師匠ならとっくに消えてるに違いない。


「・・・私はね、信じてんの。ユマの魂をもつ人間といつか愛し合えるって。それってそんなにいけない事?」


「妄想は勝手じゃない?」


「妄想じゃないよ!」


「叶うかどうか自分でもわからないんだろ? 信じられなくなってきたんならもうやめたら?」


 図星を指されて口ごもる。だってユマの魂を追いかけ続けてもう400年近くになる。また今回みたいに感情の一部が欠落した人間にユマの魂が宿っていたら、次もまたきっと殺してしまう。


「・・・もう殺したくない。」


 顔を覆って呟く。泣けるものなら泣きたかった。けれど涙は一滴も出ない。


「不思議なもんだよね。強い魔力があってどんな魔法を使えるのに、手に入らないものがあるなんて。」


「パルが欲しいものってなに?」


「何だろうね・・・ずっと姉の血縁に拘ってきたけど、最近はもういいやって気もしてる。なんせ相手は250年以上前に死んでるしね、僕がしてることは何の意味もないんだよ。」


「自分の気が済むならいいんじゃないの?」


「・・・誰を幸せにすることも不幸にすることもないなんて、生きてる意味あるのかな?」


 私が凹んでるって言ってるのにパルまで面倒なことを言い始めた。


「自分がいいならいいじゃない。」


 投げやりに言うとパルは苦笑した。


「いいと思えるならね・・・ルビーはどうなの? いい加減あきらめようとは思わない?」


「・・・わからない。自分が信じた道を突き進んで、進んで、進んで、でもまだ手に入らない。それでも諦めきれない。引き返して違う道に行くべきなのかもしれない、全部忘れて新しい恋を探してた方がいいのかもしれない。・・・それでも、私はユマが欲しい。私の魂はユマの所にあるの。」


 自分で喋ってて眩暈がした。そんな自分が笑える。私は一体何をやっているんだろう。なんの根拠もないのに大昔の恋を大事に抱えて、いつか叶うと信じている。


「まあ、キリ良く諦められたら悪魔じゃないか。」


 パルはそう言って濡らしたハンカチで顔を拭ってくれた。白いハンカチが赤く染まったのを見て、ユウマの血だと思った。


「その服もいい加減着替えたら? 血生臭いよ?」


「・・・思ったより血を浴びなかったから大丈夫かと思ったんだけど、臭い?」


「ちょっとね。新しい服でも買ってあげようか? それとも作ってあげようか? 久しぶりに針持ったら面白かったし。」


「いいね。でもしばらくは大人しくするつもりだから派手な服は着られないなー。パルが作る無駄に豪華な服好きなんだけど。」


「無駄って言うな。まあ、貴族にしか着られない服だったね。この国じゃもう無理かも。」


 この国の基礎であった王家が消え、次は貴族が消されるだろう。しばらくこの地は荒れるに違いない、きっと悪魔もまた沢山生まれるだろう。それはちょっと面白そうだ。


「そう言えばミカって今どこにいるの?」


「南の国。言わなかったっけ?」


「南の国ってどこにあんの?」


「南の方・・・まあ行けばわかるよ。行く?」


 頷くとパルは立ち上がって私に手を差し伸べた。手を握り返すと一瞬で景色が変わった。暗闇の中から取り囲むように水の音がする。


「何コレ」


「海だよ。魚が沢山いて果てがない。あとしょっぱいから飲まない方がいい。」


 よくわからなかったけどパルに手を引かれるまま一軒の家に入った。どうやら今のパルの住処らしい。


「おかえり、ルビー。」



なぜかYAH YAH YAHな章でした。

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