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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第八章 悪魔の善行(パル)

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1.面倒なやつら

 自称神というシバの家から、僕はナミという町へ移動した。王都の南に位置する町でそれなりに人口も多く栄えているが、ちょっと荒っぽい人間が多いのが特徴だ。別にこの町に用事があったわけではない。知り合いがいないところに行きたかっただけだ。


 周りを見て取り合えず場に馴染む簡素な服を買って着替えた。そして安い宿に泊まり安い居酒屋で暇を潰して日々を過ごした。たまに酔っ払いに絡まれて愚痴を聞いたり、一晩自慢話を聞かされることもあった。


 特に楽しい訳でもない無意味な生活。ただ毎日、人間ってたくさんいるんだなあと思っていた。こんなに沢山の声に囲まれるのは随分と久しぶりだ。僕は少し人恋しいのかもしれない。


 さっきまで騒がしくて隣の人間の声も聞こえなかった店内が、突然静まり返った。その中を一人の女が僕に近づいてくる。真っ黒なドレスを着て、銀髪を揺らして。


「何してんの、パル。」


 ルビーのまき散らす妙な迫力に店の全員が注目していた。取り合えず文句を返した。


「来るの早いよ。」


「いいから行くよ。」


 急かされて僕は仕方なく金をテーブルに置いて立ち上がった。相変わらず店内は誰も喋らない。その中を奇麗な女に連れられて歩くのは少し優越感があった。


 僕たちが店の外に出ると、やっと店内に話し声が戻っていった。


「・・・そのドレスいいな。」


「でしょ? 貰ったの。」


 ルビーが振り返って笑う。夜だからよく見えないが、シルクのかなり手のこんだ仕立ての服だ。高いだろう。


「それで? 何か用?」


「私ちょっと王様殺すから、パルも手伝って。」


「嫌だよ。」


「じゃあミカを逃がすのだけ手伝って。」


「ミカって誰?」


「ユウマの姉。」


 薄暗い道を二人で歩きながら淡々と話す。疑問は沢山あるが、それを全部ルビーに聞いたところでまともな答えが返ってこないことを僕は知っている。


「・・・なんでミカを逃がすの?」


「あの子はお姉さまに似てるから。」


 ルビーに姉なんていたっけな。聞いたことないけど。


「それに、この服も貰ったし。」


 ルビーがちょっと自慢げに黒のドレスを撫でた。その仕草に少し微笑んでしまう。


「確かにいいドレスだね。僕が作る服に似てる。」


「でしょ?」


 そう言って得意げに笑う女は、僕の妻だった女に似ていた。


「・・・それで、具体的に何をして欲しいの?」


「明日の午前中城を攻撃するからその隙にミカをどこかへ飛ばして。」


「そのミカって子はどこにいてどんな子なの?」


「金髪で目は青い。自分の部屋にいるんじゃないかな。」


「自分の部屋ってどこだよ。僕、城はほとんど行ったことがないからわかんないよ。」


「えー・・・じゃあ、どこならわかんのよ?」


「城の前とか。あ、あとドーナー家ならわかる。」


「じゃあドーナー家の訓練場にいて! ミカは彼氏と一緒に行くからよろしくね!」


 ルビーは自分が言いたいことだけ言うとパッと姿を消してしまった。まだ宿にもついていないというのに。どこかで飲みなおそうかと思ったが面倒になってそのまま宿へ戻った。


 ギシギシきしむ階段を上っているとどこかの部屋からうるせぇ!という怒号が飛んだ。安宿にはお似合いの治安だ。泊まっているのは屋根裏のような狭い部屋だが個室なので気に入って長居している。でもどうやら潮時らしい。


 明日国王を殺すという事はユウマを王にするということだろう。つまりルビーが国王の妻になるのか。独裁政治でも始めそうだな。国が終わらないといいけどな。


 翌日目を覚ましたあと宿を出て屋台で朝食をとった。安くて不味いそれをみんな飲むように口に流してそれぞれの仕事に出かけていく。僕も仕事だ。何の為かはわからないけど。


 朝の王都のドーナー家では、警備隊が庭で訓練をしていた。ご苦労なことだ。気配を消してぼんやり眺めていたが一向に何も起こる気配がない。そう言えばルビーは午前中とだけ行っていたので、最悪昼までここで待たなくてはいけないらしい。


 僕はせっかちだし、ルビーは自分の気が向かないと行動しない。なんであんなに一緒にいたんだろうな。


 訓練場の隅に寝転んで僕は事が起こるのを待った。そしていつの間にか眠ってしまったらしい。近づいてくる足音に目を開けると、怪訝な顔をしたシャルルが立っていた。


「何してんの?」


 そう言われて何してたんだっけと思いながら体を起こす。


「・・・人を待ってる。」


「人んちの庭で? 誰を?」


 これ言っていいんだったかなぁと思いながら僕は欠伸して言った。


「女」


「人んちの庭で?」


 しつこいなあと思老いながらシャルルをよく見ると汗だくだった。どうやら訓練に混ざっていたらしい。眠っていたのは短い時間だったようだ。


「・・・元気そうだね。」


「どうも。ドーナー家は常に戦いに備えてるんでね。」


 良い事だ。すぐに役に立つだろう。


「それよりなんで旅の途中で消えちゃったんだよ。一人で帰って来られたの?」


 シャルルは寝起きの頭に優しいなあ。眠くなる。


「・・・そう言えばさあ、僕むかしのドーナー家当主と賭けをしてたんだよね。たぶん勝ってると思うから、その内取り立てに行くよ。」


「賭け? 何を賭けてたの?」


「何でも言う事をきかせる権利。もし僕が負けてたらシャルルが命令してもいいよ。」


「命令? 俺、そういうのは別に・・・」


 興味がなさそうなシャルルを背後から誰かが呼んだ。素直に返事をして走っていくところを見ると仲がいいのだろう。僕もシャルルとまともに会話する気ないけど、シャルルだって僕にあんまり興味ないよな。でもそれでいい。あのぽやぽやした顔を見てるとイラっとして手を出したくなる。


 シャルルは警備隊の集団と共にどこかへ消えて行った。太陽の位置から察するにもう昼前だ。もうひと眠りした方がいいか考えていると、王城の方から爆発音が聞こえた。始まったらしい。全く見えないし聞こえない距離だが、誰かの悲鳴が聞こえた気がした。ルビーが暴れてるんだろう。たかが一人の男の為によくやるよ。


 だが最初に爆発音が一度聞こえただけで後は何の物音もしなかった。ドーナー家にも表面上は変化がない。あれ? これ、いつまで待てばいいんだろう。


 手持ち無沙汰に立ち上がって城を眺めながら少し近づいてみた。角度を変えて見ると煙が上がっているのが見えた。石造りの城だった筈だから燃え落ちはしないだろうけど。


 しかししばらく待っても相変わらず誰も来ない。仕方なく足元の石を蹴っていたらやっとドーナー家と王城の間の森から一組の男女がやってきた。男は女を抱えるようにして歩いている。女の長い金髪が見えるのであれがミカなんだろう。


「遅かったね。」


 近づいて声をかけると女が顔を上げた。青い目なので間違いない。女を抱えていた男が叫んだ。


「約束通りきたぞ!」


 男は近衛の恰好をしている。王女と近衛の恋か、なるほどねぇ。ルビーが好きそうだ。


「僕がした約束じゃないんだけどな・・・まあいいや。どこに行きたい?」


「どこか遠くへ! 誰も俺たちを知らない場所がいい。」


「了解」


 僕はそう言って男と女の腕をそれぞれ掴んだ。男は一瞬嫌がったが、僕は問答無用で瞬間移動を発動し三人まとめて飛んだ。



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