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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第七章 ヒロインは旅立ちたい(ミカ)

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3.ヒロインと初めての魔法

 タイチと庭で別れた後、私は夢見心地で自室に戻った。


 勘違いじゃなかった! 良かった!!


 叫びたい気分だったが部屋の中で踊るだけに留める。やっぱりここは異世界だ。こんなハッピーエンドが私に訪れるなんて異世界転生しかありえない。


 さて、ドーナー家のおじさまに手紙を書かなくては。おばさまには近々お見舞いに行きたいと送ろう。私が最後にドーナー領に行ったのは三年近くまえなので丁度いいだろう。そう言えばその時もタイチが一緒だった。今と違って全然喋ってくれなくてずっと黙ったままの旅だったけど嬉しかった・・・


 連想して色んなことを思い出しそうになったが慌てて打ち消す。今やらなくてはいけないことは方々への根回しだ。こういうのは地道に根気よくやらないと後でひっくり返されるんだ、問題点は早めに潰すに限る。今一番の問題は・・・


「ルビー、だよなぁ。」


 私が命を狙われる理由は単純に王族だからであって、平民になってしまえば私はどこにでもいる女の子だ。少なくとも男が取り合うほどの絶世の美女ではない。多少の小金を持って嫁ぎたいとは思っているが、どう考えてもドーナー家の方が大金持ちなのでわざわざ私を狙ってくる人もいないだろう。タイチもいるし。


 だが例外は王家に何かの問題が起きて呼び戻された場合だ。良い想像ではないが私以外の王族が全員が死んだ場合は、おそらく私が王として城に呼ばれるだろう。これは仕方がないと思う。でも嫌だ。


 とはいえ両親が私より先に死ぬのは自然の摂理なので仕方がない。やっぱり鍵はユウマとルビーだ。そして今のこの状況からユウマを守り切れるのはルビーだけな気がする。私の平穏な平民生活はルビーの働きにかかっている。


「あれ? でもルビーってユウマのそばから離れたんじゃなかったっけ?」


「なにがー?」


 独り言に思いがけない返事が返ってきて心臓が飛び上がった。案の定、すぐ近くで銀髪の女の子が私に手を振っていた。


「・・・心臓に悪いんだけど、もうちょっと穏便に出てこれない?」


「そう? 静かに出てきてるよ?」


 ルビーはそう言いながらまた勝手にソファに座った。昨日と服が一緒だ。


「ルビーって今どこで寝泊まりしてるの?」


「えー、ないしょー。」


 ルビーは悪戯っぽく片目をつぶった。アイドルみたいに可愛い。


「・・・家がないならここで寝泊まりしてもいいよ? ソファで寝てもらうことになるけど。」


 それを聞いたルビーはちょっと驚いたように目を見開いた。さっきのわざとらしい笑顔よりそっちの方が数倍可愛いのに。


「お姉さまったら優しいー。でもソファは嫌かなあ。ベッドで一緒に寝ようよ。私、女の子もイケルよ?」


 何がイケルのか、聞きたくない。っていうかお姉さまって何だ。ルビーって私より年下なんだろうか。


「まあ困ってないならいいけど・・・それより丁度良かった、ユウマって本当に王になってくれるの? なんかあの子いまいちまだボケッとしてる気がするんだけど。」


「それは・・・まだ危機感がないからねぇ。」


 ルビーが苦笑した。確かにあれは元々の性格だから治らないか。


「っていうか、ミカが王にならないならユウマがなるしかないじゃない? 本人だってその時がきたら逃げはしないと思うよ。そんな度胸ないし。」


 鼻で笑ったルビーに少し違和感があった。ふと疑問がわいたので聞いてみる。


「ルビーって、ユウマのこと好きなんだよね?」


 素朴な疑問だったのにルビーは一瞬ひどく困った顔をしたあと笑って言った。


「好きだよ、だーいすき。お嫁さんになりたいぐらい。」


「あっそう・・・」


 確かにルビーが猫だった時は全身でユウマが好きだと言っていた。だけど人間になった今、どうにもトゲがある気がする。気のせいかもしれないけど。


「じゃあ何で今ユウマと一緒にいないの?」


「だって偶には離れないと、刺激がなくなるじゃない?」


 ルビーは意味深にクスクス笑った。どこまで本気なのか、本当なのかよくわからない。まあ弟の恋愛事情なんていいか。


「そっか。実はね、今ドーナー領に移住できないかって考えてて・・・どう思う?」


「いいんじゃない? あそこなら治安もいいし、ほぼ独立国家だもんね。」


 そう言えばルビーもユウマと一緒に何度も行ってたな。


「でもやっぱり色々気になってて・・・私だけここを離脱していいのかな。私はここで生まれたのに、逃げ出していいのかなって。」


 こんなこと、なんでルビーに相談してるんだろう。この悩みは一生私について回るものなんだろうに。


 いいんじゃないとルビーは軽く返事をした後、ふと遠い目になって言った。


「・・・前にさ、過去をくだらないって言ってくれてありがとうって言ったじゃない? その言葉を私もしばらく考えてて・・・ひょっとしたら私の過去もくだらなかったのかなって思ったんだ。でも違う、くだらないのは今だった。だから私はくだらない今を変えたいの。」


 言い終えるとルビーはにっこり笑って私を見た。この笑顔の意味はよくわからない。だけど何かを決意したことはわかった。


「だから人間になったの?」


「そうだよ。ユウマを王にして私は女王になる。楽しそうでしょ?」


 それ楽しいかなぁと思いながら私は曖昧に頷いた。ルビーは女王になりたいのか、今時そんな人もいるんだな。しかも内情を知ってるのになりたいだなんてやっぱりルビーは変わってる。


「それで? いつ駆け落ちするの?」


「え、いやまずはドーナー家の了承を貰って、ひとまずタイチのご両親の家かその近くに住む予定だからご挨拶して・・・実際に移住するのはだいぶん先だよ?」


「えーつまんなーい。早く行きなよ。」


「あのね・・・私は父を説得するのを諦めただけであって、他のことは別に諦めてないからね? 私はまだ18で、あと50年は生きるつもりなんだから。幸せな家庭を築いて最終的には家族に見守られながら死にたいんだから。今から色んなことをすっとばす訳にはいかないの!」


 そう言うとなぜかルビーは目を丸くした。そんな変な事言ってないと思うけど。


「・・・そっか。ミカはそういう人生を望んでるんだ。私には想像もつかないな。」


 割と平凡な人生目標を、想像もつかないと言い切られてしまうと逆にルビーのこれまでが心配になる。いったいこれまでどんな人生を送ってきたんだろう。


 お互いジロジロ見ていると急にルビーが笑った。なんとなくつられて私も笑った。ひょっとしたら私たちは友達になれるかもしれない。


「ルビー、その服ひょっとして何日も着てる? 私の服に着替えてみる?」


 ルビーの方が少し身長が低いけど、たぶん私と体形はそう変わらないはずだ。返事を待たずにクローゼットを開ける。ルビーが今着ているのは長袖のワンピースなので似たようなものがいいだろうか。ごそごそと探しているとルビーが後ろから面白そうにのぞき込んできた。


「あ、その黒いのがいい。」


 ルビーが指さした先に会った黒いワンピースを手に取る。シルクだしプリーツがふんだんに入っていて仕立ても美しいドレスだ。ただ正式なドレスというにはシンプル過ぎ、普段着にしては気合が入り過ぎているため、私は一度も袖を通したことがなかった。


 黒いワンピースをルビーに当ててみるとなかなか似合いそうだ。


「いいんじゃない? 着替えてみたら?」


「うん。・・・ついでにお風呂借りてもいい?」


 ルビーが上目遣いで言った。


「今からお風呂はちょっと・・・お湯ならすぐに持ってきてもらえるんだけど。」


「あ、そうじゃなくって、そっちの部屋にお風呂あるでしょう?」


 ルビーが指す方向には確かに風呂場がある。ただ誰でも魔法が使えた時代と違って、今はお湯を他所で沸かしてここまで運んでくる必要がある。よってよっぽどの事がない限り私は一階にある王族用のお風呂を使っている。しかも頻度は二日に一回で、たぶん他の貴族や大金持ちの平民とあまり変わらないと思う。


「あるけど、ひょっとしてルビー魔法でお湯溜められたりするの?」


 事も無げに頷くルビーに思わず拍手してしまった。


「すごーい! もちろんいいよ! 掃除はしてあると思うから。っていうか見てていい? 私、魔法見るの初めて!」


 ルビーは苦笑しながら服を抱えて風呂場へと移動した。風呂場は小さな窓はあるが薄暗い。明かりを取ってこようとすると、ルビーがこれまで使ったことのない場所の明かりをつけた。


「え、何それ? 魔法?」


「魔法っていうか魔石・・・光切れてたから補充しといた。これでしばらく使えるよ。ミカも使えるんじゃない?」


 そう言いながらルビーは握りこぶしほどの光を放つ石を私に渡した。手に持って戸惑っていると光が突然消えた。


「え、消えたよ?」


「うん消した。そのまま石を握って、光れって念じてみて。」


「光れ・・・?」


 よくわからないまま呟くと、石は再び眩しい光を放った。


「ついた!」


「うん、これが昔の人が使ってた魔石。石の中に光とか火とか水とかを閉じ込めるの。たぶん魔石ぐらいなら使える人はまだ沢山いると思うけど、石に魔法を入れられる人がいないんだろうね。」


 ここって本当に昔は魔法の国だったんだなあ。ますます異世界感が増した。


 感心していると浴槽から水の音が聞こえた。慌ててルビーの後ろから覗き込むと、なんとルビーの手の平から水が出ていた。しかも湯気が出ているのでお湯らしい。


「え? 手からでるの!?」


「うん」


「え? それって体液だったりしない? いっぱい出したらルビーが枯れたりしない? 大丈夫?」


 オロオロする私をルビーは笑った。


「別に体液じゃないから大丈夫。って言ってもこの水がどっから湧いてんのか私も知らないけど・・・一応飲めるよ? 飲んでみる?」


 ルビーの揶揄うような問いにぶんぶん首を振る。なんか怖いから絶対嫌だ。


 見ているとあっという間に浴槽が水で満たされた。恐る恐る水の表面を突くとちゃんと温かい。


「一緒に入る?」


 ルビーがニヤニヤしながら言ったので、慌てて魔石をルビーに渡して浴室を出た。ひとり入ったら一杯になる浴槽に家族でもない女の子と二人なんて絶対無理だ。


 タオルは中にあったけど風呂上りなら下着も変えたいだろうなあ・・・でもそんな都合よく新品あるかなあ・・・


 私は前世の記憶があるので基本的に着替えは一人でする。だけど服を用意するのはメイドの仕事なのでしたことがない。取り合えず下着が入っている引き出しを開けてみたが、どれが新しそうかもわからなかった。敢えて言うなら全部奇麗だけど、人様に渡すにはねぇ・・・


 迷った結果、新しそうなシミーズだけを持って風呂場に戻った。浴槽の方は見ないようにして下着を置いた旨だけ伝え急いで外に出る。浴室からは機嫌が良さそうなルビーの鼻歌が聞こえた。


 家族がお風呂に入っているのを待つなんて前世ぶりだ。この世界の私の家族はみんなバラバラで、あまり一緒に暮らしているという気がしない。だから私は幸せな家族というものにこだわっているのかもしれない。



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