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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第六章 天才で美少女で、魔女(ルビー)

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2愛したものは・・・

 次の日の移動は昼で終わった。護衛たちは馬の調子が悪いという。私が見た所まったく問題ないようだったが、ユウマが黙っていたので何も言わなかった。


「ユウマ、さすがに今回の警備は目に余るよ。ドーナー家からも口添えするから彼らはクビにした方がいい。経費だっていって自分たちはお金を使いまくってるくせに、俺たちには食事の一つも寄越さないじゃないか!」


 シャルルが怒るのは当然だ。朝は携帯食料、昼はサンドイッチ。しかもこのサンドイッチはドーナー家の護衛が自費で差し入れてくれたものらしい。さすがに宿はとってくれたが、警備のためだといって宿の人を一切寄せ付けず、私たちにも外に出るなという徹底ぶりだ。


「でももう警備の成り手がいないんだ。彼らをクビにしたら一緒に辞める人間もでてきてきっと収拾がつかなくなる。」


「だったらドーナー家の警備を貸すよ! 王族にこんな扱いは間違ってる!」


 少し前ならシャルルの言う事が当たり前だったし、ドーナー家は今も親王派だからそう思うんだろう。だけどユウマは笑っただけだった。


「・・・とりあえず何か食べるものを買ってくるよ。ユウマはここで待ってて。ルビー頼んだよ。」


 シャルルはそう言って部屋を出て行った。宿だけは王族が泊っても遜色ないほど高級だが、到着時に護衛が宿の人たちに「お前らのような者が王族を直接見ることまからん」などど喧嘩を売ったためここでの食事は期待できない。シャルルは少し離れた町中まで買いに行く必要があるだろう。


「明日さ、入学式なんだよね。」


 ソファに座ったユウマがぽつりと言った。


「もう4月か・・・」


「うん。新入生代表で挨拶する予定だったんだけどな。」


 ユウマはつまらなさそうに言った。


「まあ、仕方ないんじゃない。」


「わかってるけどさ。」


 ユウマはソファに座ったまま動かない。私に頼めば別に入学式ぐらいいくらでも連れて行ってあげるのに。


「入学式楽しみにしてたの?」


「うん・・・昔の本ではみんな学園生活楽しいって書いてたから楽しいんだろうなって。でも初っ端からこれじゃダメだな。先が思いやられるよ。」


 なんでこの子は私の手を取らないんだろう。ひょっとして文句だけ言って何もしないタイプ?


「ねえユウマ。ユウマが今一番したいことってなに?」


「一番したいこと・・・普通の暮らしかな。」


 儚げに笑うユウマはやっぱり可愛い。でも。


「それを自分の力で勝ち取る気はない?」


「・・・王族に生まれたからには義務を果たすつもりだよ。逃げるなんて許されないよ。」


 なんかカッコよく言ってるけど、それって何もしないのと同じではないだろうか。


「私に頼めば、私はユウマの為なら世界だって滅ぼしてみせるのに。」


「滅ぼしちゃダメだよ。」


 優しく笑うユウマの顔が大好きだ。


 だけど、ひょっとして私、ユウマの中身は好きじゃない、かも?


「・・・ユウマってどんな女の子が好きなの?」


「女の子!? そうだなぁ・・・優しく僕を癒してくれる子がいいな。僕の人生は疲れる事が多そうだから。」


 それって私じゃダメなんですかね。それとも自分より弱い者を見て安心したいって事なんですかね。


「ユウマ、私のこと好き?」


「好きだよ。でもなんかルビーはお母さんみたいだよね。」


 そう言って笑うユウマを見て、何が面白いんだと思った。私はこんなにも長年恋心を捧げているのに、それを対象外だと笑うのか。


「・・・そっか。じゃあ私、隣の部屋にいるね。」


 ユウマが笑うから私も笑ってみた。隣の部屋に移動してドアを閉める。


 今回もまた失敗だ。一目ぼれした魂を追いかけて何度も愛されようとしたけれど、また今回も失敗だ。私のすべてをあげるって言ってるのに、どうして受け取ってくれないんだろう。



 次の日も、その次の日も移動は遅々として進まなかった。私は黙って馬車に揺られながらずっと考えていた。このままユウマが老いて死んで、また生まれ変わるのを待てばいいんだろうか。でもいつまで待てばいいんだ? 次の体が私を愛してくれるとは限らないのに。


 いっそ私がユウマを殺そうかなとも考えた。でもそれに大した意味はないだろう。変に怯えさせてまた魂が壊れかければ、当分恋愛どころじゃなくなってしまう。同じ過ちは避けたい。


 馬車はようやく王都の端に入った。普通ならここから半日も経たず王城に着くはずだ。なのに私はまだ何も決められていなかった。このまま猫の様に話し相手としてそばにいるのか、諦めて次の生まれ変わりを待つのか。一緒に学園に通って恋をするという選択肢はもう消した。現実を見ないといけない。


 王都に着いたことがわかってからユウマとシャルルは口数が多くなった。二人とも二日も風呂に入ってないから頭が痒いと笑っている。何日も同じ服を着るなんてこの二人には初めての経験だろう。それでもこの二人に悲壮感がなかったのは、きっと私がいたからだ。最終的には私がなんとかしてくれると思っていたんだろう。


 でも私は何のためにこの二人を守っていたのだろう。私のことを絶対的な保護者としか思っていない二人の為に、生まれた時から大人が守ってくれるのが当たり前の二人の為に、そして決して愛してはくれない男の為に、私は一体なぜ。


「ルビーは城に戻ったらどうする? 小さな部屋なら用意できると思うけど。」


 ユウマがニコニコと私に言った。


 それって使用人用の部屋?


 口から零れそうになった言葉を唇を噛んで誤魔化す。隣に居るのに、ユウマが生まれた時から一緒にいるのに、この少年はごく自然に私を目下として認識している。同等の人間ではないと。


「あ」


 私の声に二人が振り返った。慌てて何でもないと誤魔化して窓の外を見る。だが頭の中は今思いついたことで一杯だった。


 私は魔女だからユウマと同等じゃない。私は人間じゃなかった。私は魔女で美少女で天才だった。気に入らない男を無理に好きになる必要はない。私が好きになった女の子の魂は、今もまだ輝いてユウマの中にある。ならばそれだけを取り出そう。気に食わない外側なんて放っておいて。


 気がついてしまえば単純な事だった。馬車の外は人通りも多く家の間隔も狭い。活気があって好きなエリアだ。


「私ここで降りるわ。」


 そう言って御者に馬車を止めるよう合図した。ユウマとシャルルは目を丸くした。


「どうしたの?」「え、もうすぐ着くのに?」


 いいのいいのと手を振って私は一人で馬車を降りた。そしてそのまま発車させた。ここからなら流石に何事もなく帰れるだろう。別に御守役がいなくても。そうだ、なんで天才美少女魔女ルビーが子どもの御守なんてしてたんだ。なんの見返りもないのに。


 肩をすくめてなんとなく道を歩き出す。その時やっと北の国の悪魔?が消えていることに気が付いた。師匠もいつの間にか元の東の家に戻っている。


「え、殺したの?」


 思わず呟いて立ち止まった。有難いけどまさか師匠がやってくれるとは思わなかった。いや、今後を考えるとむしろ殺さないでいてくれた方が良かったような?


 取り合えず聞きに行こう。


 私は少しずつ気配を消しながら角を曲がったところで師匠の家に飛んだ。



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