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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第五章 魔女と神様(マリア)

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2.大昔に死んだ男

 北の国なんて昔はなかった、と思う。だが100年ほど前私がまた生まれた時には、ずっと昔からあるものと認識されていた。よくわからないが直接関りがないのであまり気にしていなかった。


 だが20年ほど前、北の国で新しい天使と悪魔が生まれた。天使と悪魔は同一人物としか考えられないほど常にピッタリと重なっていた。


 天使と悪魔はどちらも強い魔力を持つが、全く別の性質だ。天使は生まれながらに天使だし、悪魔は最初人間として生まれ後に悪魔となる。新しく生まれた不可解な存在に興味を惹かれはしたが、私は会いに行こうとは思わなかった。天使や悪魔はなぜか出会うようになっているからだ。その証拠に私は今生のルビーに興味がなかったのに向こうから勝手に来たし、なぜか初対面の悪魔も一緒にやってきた。呼んでないのに。


 そして私は今、夜明けが近い北の国で天使だか悪魔だかを探している。運命だなんて言葉は嫌いだが、きっと我々はこういう生き物なんだろう。


 北の国は夜中で静かだった。少し傾いた月が眩しい。ふらふらと家々の間を歩いていると巨大な桜があった。強い魔力を持つ者同士は互いの場所がなんとなくわかるが、そこまで正確ではない。だけれど私は気にしていなかった。出会う必要があれば出会う。出会いたくなくても出会ってしまう、いつだってそうだった。


「ごきげんよう、いい夜ですね。美しい人が会いに来てくれるなんて。」


 男の声は軽く歌うようだった。背は高く髪は長い。変わった服を着て少し離れた所から私を見ていた。


「どうも。あんたが天使兼悪魔?」


「見事な桜でしょう? ちょうと見ごろなんですよ、こちらへどうぞ。」


 私の質問など聞こえなかったかのように男は背を見せるとついてくるように促した。私はすぐに男の後を追った。考えるだけ無駄だ。

 

 桜の木は男の家の庭に植わったものだった。屋敷の外廊下に腰かけると、ちょうど満開の桜が正面に見えた。


「奇麗ね」


 私がそう言うと男は黙って微笑んだ。


 2m先に大昔に死んだ男が微笑んでいる。背が高く長い黒髪を持ち、顔が女のようにきれいだ。声は少し高いが体はがっしりとしている。人が殺されるのが嫌いな男だった。奪われるのが嫌いな男だった。全ての人を救おうとして悪魔になった男だった。そして魔力を使い果たして死んだ。


「今回は目が青いんだね。前は黒だったけど。」


 私の言葉に男は首を傾げた。


「前、とは?」


「覚えてないの?」


「前というと・・・生まれる前ですか? 生まれる前に出会っていたなんてロマンチックですね。」


 男はそう言って微笑んだ。男の胸元には確かに黒い炎のような石がある。だが全体から受ける印象は天使だ。そうか、似てるけど違う男なのか。


「まあいいや。・・・名前は?」


「シバです。あなたは?」


「マリア」


 短く答えた後、私は黙って出された酒を飲んだ。飲みながら大昔に死んだ男はシヴァという名前だったことを数百年ぶりに思い出した。たぶんこの男は半分はシヴァだ。けれど半分は知らない魂だ。この男の魔力はかなり強いので今の私では勝てないかもしれない。この先戦うかどうかはわからないけど。


 桜の木がゆるい風にあおられて花を揺らす。まるで何かの生き物のようだ。


「・・・マリア、私と結婚してここに住みませんか?」


 気が付くとシバは私の顔を見ていた。奇麗な顔だが青い目がどうしても気にかかる。


「急だね。」


「ええ、一目惚れしたんです。」


 そう言って微笑む姿は昔の夫にも似ていた。


 ------一目惚れしたんです。あなたは私の女神だ!


 遠い幻聴を首を振って払う。あの男はただの人間だったのでもう生き返らない。あれもまた大昔に死んだ男だ。


「断ったらどうする? 殺す?」


「まさか! ・・・愛されるように努力します。」


 邪気のない笑顔でにこにこと微笑む男を、知っているような知らないような。


「あっそ」


 私はそう言って杯を呷った。飲んだことのない酒だった。空は少しずつ明るくなり、周りの家から少しずつ人が起きだす気配がした。


「・・・今日は来客が多い日だ。」


 シバはそう言って立ち上がるとどこかへ行ってしまった。あの悪魔の坊主を迎えに行ったんだろう。パルは何しに来たんだろう。というか私も何しに来たんだっけ。


 腰かけていた木の廊下にごろんと転がる。桜は今も揺れている。目を閉じると私も揺れていた。記憶の向こうで死んだ男たちが笑っていた。どっちがどっちだかよくわからなかったけれど、嬉しかった。


短いので二話更新

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