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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第四章 北の国事変(パル)

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北の国事変⑤

 近づいた町はさっきみた侵入者と同じような服を着た人で溢れていた。ほとんどが女か子どもなので、男は全員戦いに駆り出されているのだろう。


 気配を消して歩いて町で一番大きな建物の前で立ち止まった。建物の前には誰もいないが、中から血の匂いがする。ルビーが先に来て色々やったんだろう。ため息をつきながら扉を開け中に入ると案の定、中は血だらけだった。生きてる奴がいないじゃないか。


 死体を跨ぎながら奥へと進む。一番偉い奴は一番奥の部屋にいると相場が決まっている。ひと際立派な、でも壊されている扉の中に入るとルビーはいた。目の青い女と対峙している。


「相変わらず・・・私から全てを奪うのね。」


 青い目の女は震える声で言った。この女はきっとユマだ。ルビーが愛した唯一の人。


「そうだな。お前が私を欲するようになるまでな。」


 ルビーの声はとても静かだった。それじゃ伝わらないだろうに。


「死ねぇっ!」


 ユマが叫び声と共にルビーに斬りかかった。ルビーは手から何かを出してユマの胴体を上下真っ二つに切り離した。えげつないことしやがる。あれじゃ死んじゃうじゃないか。


 ユマの上半身と剣と下半身はバラバラに倒れた。ルビーはゆっくりとしゃがみ込んでユマの上半身を抱え起こした。


「殺す必要あった?」


 僕の問いかけに相変わらずルビーは返事しなかった。ただユマの顔を何度も撫でていた。


「・・・ユマは、生まれ変わっても私が怖かったらしい。」


 ぽつりとルビーが言った。


「僕はルビーの恋人なんて興味ないけど、その子の魂が魔女に犯されてたことだけはわかるよ。それだけの恐怖を与えたんだろ?」


「きょうふ?」


 ルビーが子どものような目で僕を見た。ああ、ルビーが壊れかけている。


 僕は傍らにしゃがみこんで死んでいるユマの顔を見た。目も口も開いたままで、涙の跡も見える。どうやらユマは最後は人間だったらしい。本当に、悪魔が愛した人間はろくな死に方をしない。


「ルビー、終わったんだから帰ろう。」


「どこに?」


 ルビーの目が赤いガラス玉みたいに光った。それでもルビーが泣くことはない。魔女は泣けないから。どんなに悲しくてもすべてが怒りに変わってしまうのが魔女であり悪魔だ。


「どこでもいいよ。疲れただろ? またしばらく眠ろうか。」


「ねむくない・・・」


 ルビーはそう言って首を振ったあと動かなくなった。何を話しかけても微動だにしない。僕は諦めて一人で戻ることにした。別に一人にしても死にはしないだろう。


 建物の外に出るともう陽が落ちていた。さて、ユマがこの戦いを扇動したのであれば、もう戦いは終わるだろうか。見た感じ二十代半ばのように見えたが、そんな女が一人で戦いを起こしたと考えるのは無理があるんじゃないだろうか。


 少し考えてこの町の様子を窺うことにした。気配を消して人通りが多い道に座って聞き耳を立てていると色々なことがわかった。どうやらユマはこの国の巫女として神の言葉を人々に伝える役目を負っていたようだ。そしてこの国の王は別にいた。ユマは何かに焦って勝手に隣の国へ攻め込む号令をかけてしまったので、今大慌てで国の軍がこちらに向かっているそうだ。なんて厄介なんだろう。


 しばらくするとルビーがいる建物の方が騒がしくなった。どこから湧いて出たのか帯剣した男たちが全員家の中に入るように叫んで周り、辺りはあっという間に誰もいなくなった。僕は少し考えたが、最終的には知らない家の屋根の上で眠った。夏でよかった。明日はきっと長い一日になるだろう。


 昼前、沢山の足音で目が覚めた。屋根の上から覗いてみると様々な武器を携えた男たちが行進していた。これからきっと山を登ってとなりの国へ攻め込むのだろう。数は・・・結構いそうだ。隣の山の中からどんどんこちらに出てきて最後尾が見えない。なんだよ、かなり大きな国じゃないか。


 なんとなく不貞腐れた気分で行進を眺める。国境である山に入られると厄介なのでその前に仕留めなくてはならない。ああ面倒くさい。


 僕は街外れに飛ぶと見える範囲の行進に火を放った。一部が民家にも燃え移ってしまったが、悪いけど諦めて欲しい。戦いなので。


 行進は一瞬怯んだが、すぐに何人かが僕めがけて飛びかかってきた。とりあえず風や水でぶった切る。そうこうしていると、敵が落とした剣に風の勢いを乗せて斬るのが一番楽だと気が付いた。


 あっという間に辺りは死体の山となった。嫌だなあ。疲れるしさあ・・・少しずつ場所を移動しながら僕は戦い続けた。途中で避けるのが面倒になって矢に何本か当たった。矢じりがついているので抜こうとすると痛い。仕方なく矢が突き刺さったまま戦っていたら、地面に落ちた影がひどく滑稽な形をしていた。ああ馬鹿馬鹿しい。


 血と汗でドロドロになった体を手から出した水で拭う。目の前にはひと際大柄な男が立っていた。服装や周りの態度を見るに、どうやら大将のようだ。


「わたしの妻を殺したのはお前か?」


 大将が大声で言った。 


「・・・ひょっとしてユマって子?」


 時間が出来たので矢を抜きながら聞き返す。ああ痛ったいなぁ、もう。


「そうだ。なぜ女を殺す必要があった!!」


 殺したの僕じゃないからなあ・・・でも僕でも殺したかもね。事の発端だし。あとこいつを殺さないと、すぐにまた攻めてくることもわかる。世知辛いね。でも終わらせなきゃね。


「僕は山の向こうを守る悪魔だ。貴様らが戦おうとするのであれば、何度でも叩き潰す。」


 周りの人間がどよめいた。


「お前らは危険だ。攻め込まれる前に攻めるまでだ。」


 あらー、話にならないね。大将が剣を持って飛びかかってくるのを避け、燃やしてみた。髪や服は燃えているのに大将の動きは止まらなかった。こわっ。


 攻撃を躱しながらせっせと水やら火やら風やらで向こうの体力を削り続けた。普通の人間なら三回死んでるぐらいまで叩きのめすと、やっと大将は倒れて動かなくなった。取り囲んでいた周りを見渡すと、誰もかれもみな戦意を喪失しているようだった。僕の勝ちだ。


「もう一度言う。山の向こうには手を出すな。国が亡びると思え。」


 そう言って僕は瞬間移動でその場から姿を消した。飛んだ先はどこかの山の中だった。どこでもいい。さすがに疲れたからちょっと眠りたい。 




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