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生まれ変わった**は笑う ~三人の悪魔と一人の異世界転生者~  作者: 紫藤しと
第三章 ヒロインの出番は終わりました(ミカ)

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1.ここが創作された世界である根拠その一

 自分は以前に今とは違う人生を歩んでいた、ということに気が付いたのはいつだっただろう。昔は誰かが読み聞かせてくれた本の内容を思い出しているのかと思っていたが、いつの頃からかあれらは実際にあった出来事だった気がしてきた。何故なら今の世界には存在しないものが沢山あるし、何よりもその記憶の中では私は大人だったり働いていたりしたからだ。


 今の私は国王の娘なのでこの先きっと働くことはない。働いたとしてもやる気のない後輩の代わりに残業したりすることはない気がする。というかしたくない。着られると思い込んでMサイズを試着したら全くファスナーが上がらず逃げるように帰ったりたりすることもない気がする。部屋に入ったらそれまで盛り上がっていた会話がピタリと止まって気まずい思いをすることもないはずだ。親に食べたいと強請って買ってもらったアイスを一口も食べることなく地面に落として怒られたり、職場のお菓子配りで「これ美味しくなさそうだから**さんにあげよー」とか言われたりすることもきっとないはずだ・・・


 止めよう。ツライ。


 なぜか私が思い出す前世の記憶は黒歴史的なことばかりだ。この世界で生きていくのに有益な情報は全く思い出せない。というかそもそも記憶にない可能性が高い。電気が便利なことは覚えてるけど、電気が一体何エネルギーなのかも知らない。あれって何なの? 熱エネルギー? 運動エネルギー? 振動? 音波? 電波? 静電気?


 まあそんな感じでどちらかというと忘れたい過去を無駄に背負って18年間生きてきた。そして最近ひょっとして私、恋愛系の異世界転生してる?と思うようになった。根拠はいくつかあるのだ。


 ここが創作された世界である根拠その一:やたらとイケメンに絡まれる。


 15歳になるとこの国の貴族と王族は王立学園に入園することになっている。王立学園とは貴族と平民が共に勉学に励むことで相互理解を深めより良い国へと発展させるために創設された学校だ。昔は貴族が8割で超優秀な平民のみが通える学校だったが、今では貴族の数が減ったため、貴族は半分しかない。残りは金持ちな平民と奨学金がでるような超優秀な平民の為の学校となっている。


 元々は貴族が結婚する前に貴重な青春を過ごすための学校だった筈だが、今じゃすっかり勉強するための場所だ。正直勉強だけなら城に教師を呼べばいいと思うのだが、多様な生徒の中で学ぶことに意味があるらしい。仕方なく通い始めて1か月後、私は青い髪の貴族の男に絡まれた。


 自慢じゃないが私は王女だ。指導されることはあっても難癖をつけられたことはなかった。だがその男は私を憎々し気に睨みながらこう言った。


「偉そうに、何様のつもりだ。」


 王女様である。だが私は黙ってその男を見つめ返すことしかできなかった。男はこの世界でも珍しい真っ青な髪と目をしていた。そしてとてもイケメンだった。男は私が何も言わないのを見ると舌打ちをして教室から出て行った。その日以来私は彼の姿を見ていない。別に私が何かをした訳ではないが一連の様子を見ていた誰かが何かをしたのだろう。だって私王女だし。


 そもそも私がペンを落とし、彼が拾ってくれたので礼を言った。ただそれだけのことだ。礼を言わなかったのなら詰られても仕方ないが、礼を言ったのに怒られる意味がわからない。なのでこの男のことはすぐに忘れてしまった。もちろん彼の父親である領主のことや今年のその領地の税収などは今も覚えているが、別に彼が領主でないのなら関係ない。どこの家にもおかしな子どもの一人や二人はいるものだ。


 だが夏になると、今度は一学年上の赤髪の男が絡んでくるようになった。こちらは昔からよく知るドーナー家の長男だ。歳が近いので周りが勝手にくっつくのではと盛り上がっていたこともあって、お互いこれまであまり話をしてこなかった。だが急に向こうから話しかけてくるようになった。優しいし顔もいいし正直良い奴だなと思った。でもそれだけだ。私メンクイじゃないし。


 二年生になると今度は緑髪の下級生がよく話しかけてくるようになった。この男も顔がよかった。でも可愛いなと思っただけだ。私メンクイじゃないし。


 白状しよう。色とりどりのイケメンが目に入らなかったのは、私は自分の護衛に夢中だったからだ。王女が平民もいる王立学園に通うという事で私にだけ特別に護衛がついていた。周りに威圧感を与えないように学園の制服を着て常にそばにいる為、護衛は私より一つ年上の男の子が選ばれた。私は恥ずかしいほど彼に夢中だった。そして卒業前に見事彼に好きだと言わせることに成功した。


 振り返るとこの三年間、私がとった行動は実に恥ずかしい事だらけだった。思い出したくもない。なぜ私は生まれ変わったのに新たに黒歴史を作ってしまったのか・・・でも黒歴史と引き換えに彼が私のそばにいるならば仕方がない事だったと言える。そうだ、早く忘れてしまえばいい。そうしよう。


 私は今18歳で先週卒業式を終えたばかりだ。王立学園を卒業した貴族はだいたい結婚準備に入るのが通例だ。私もそうするつもりだった。だって相手もずっと一緒にいてくれるって言ったし、相手は平民だけど王族と平民の結婚は過去にもあった。むしろ今この国では平等主義というものが流行っており、王族と平民の結婚は好意的に受け止められるはずだった。


 なのに父は「結婚は五年待て」と言った。弟であるユウマが二十歳になるのを待って私とユウマどちらが国王に相応しいかを見極めるまで結婚するなという意味だった。


 いやいや、見極めずともユウマがやればよくない?という私の意見は却下された。この国では王を継ぐのは王の子であれば誰でもいい。順番はない。だから私は彼氏ができた時点で降嫁して平民になる気満々だった。弟はちょっと変わっているが悪い人間ではない。立派ではなくてもそれなりの国王にはなれるだろう。そもそもこの国はもう王族に期待している人間なんていないし、これから先ますます王家の権力は縮小されていくだろう。前世が平民だった私からすれば別にどうってことのない話だ。


 18歳から23歳という花のような時間を、父はただ王族の仕事をしながら過ごせと言う。その間結婚したり子作りをしたりしてはいけないという。私は激怒した。必ず、好きな男と結婚して国とか気にせず幸せにならなければならぬと決意した。私には王の面子がわからぬ。私はただの恋する女である。前世を含めても初めての恋人に夢中なただの女である。今度こそ黒歴史ではなく好いた男と家族を作るのだ。あんな30半ばで泣きながら自分の誕生日を一人祝った人生を二度と繰り返さないために。



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