41.女魔王イリスの新装備会議2(原作)
“1”ってナンバリングしていたので予想していた人もいるかもしれませんが、“2”です。
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・女魔王イリスの新装備会議2
――魔王城の会議室、幹部達が集まっている。魔王軍参謀セルシ・ボイルが苦々しい表情で口を開く。
「そんな訳で、前回は勇者の馬鹿な提案に乗っかって失敗をしてしまった訳だが、今回こそは確りと魔王様の新衣装を決めたいと思う。ワンピースを……」
が、そう言いかけたところで、こんな声が響いた。
「果たしてそうだろうか? “馬鹿な提案”と切って捨てるのは愚かだと私は思う」
皆がその異質な声に動揺し、視線を向けた。
「“ブレインストーミング”と言って、自由な発想で意見を言い合い、それにより新たなアイデアを引き出すという手法がある。一見馬鹿な意見でも、それを展開させていく事で有用なアイデアが得られるという訳だ……」
「ちょっと待て」と、セルシが言う。
「なんで、人間界の神がいるのだ?」
そう。そこにいたのは、人間達の神だったのである。
「細かいことは気にするな」
「細かくないから気にしているんだ」
「まぁ、聞きなさい。私に良き案がある」
「良き案? とても不安なんだが……」
セルシを無視して、神は語り始めた。
「“馬鹿には見えない衣”と偽って、女魔王を説得するのは確かに難しいだろう。しかし、ならば、本当に馬鹿には見えない…… いや、一部の者には見えない衣を使えば良いのではないか?」
その言葉に幹部達は反応する。
「と言うと?」
オクランが真剣な表情で尋ねた。
「フッ」と神は笑う。
「この衣は、一見、普通の衣だが、」
そこで一度止めると、懐から変わった眼鏡を取り出して続ける。
「この眼鏡を介して見ると、あら不思議、透けてしまうという代物なのだ!」
幹部達一同は驚愕の声を上げる。
「なんだってぇ!」
得意げな顔で神は続ける。
「勇者から話を聞いて思い付いたのだ。急いで開発した。苦労した」
「凄い! 物凄い、HENTAI具合だ!」
「そう褒めるでない」
褒めてるのか?
にやりと神は笑う。
「この衣を魔王に着させれば、後はこの眼鏡をかけるだけで……」
セルシは興奮していた。
「なるほど。魔王様の下着姿…… いや、下手すれば裸すら拝めるかもしれない、と。
これはやるしかないぞ! 名付けてイリス様スケスケ大計画だ!」
女魔王イリスの部屋。
機嫌良さそうにイリスが言う。
「ほー。今回は真っ当な装備ではないか」
手には新しい装備を持っていた。
「でしょう? ゆるふわ感で。さ、さっそく着てみてください」
しかし、そう応えたセルシをイリスはじっと見つめると言った。
「で、お前はどうしてそんな眼鏡をかけているんだ?」
「は? なんの話でしょう?」
彼は特徴的な分厚い眼鏡をかけていたのだ。
「いつもと違うではないか」
「イメチェンです」
疑わしそうな眼を向けるイリス。
「ちょっと貸してみろ」
「やめてください。パワハラですよ?」
「いいから!」
強引にセルシから眼鏡を奪い、それをかけると彼女は大声を上げた。
「あーなんだ、これは!! 服が透けて見えるではないか!」
……こうして、再び計画は失敗したのだった。
数日後、
「魔王様。ご報告です。人間どもが怒っています」
セルシがイリスにそう報告をした。
神を通して、イリス様スケスケ大計画を伝えられていた人間界の人々は、その計画の失敗を聞いて大きく落胆をし、そしてやがてはそれは怒りへと変わったのだった。
イリスは笑う。
「ほほう。面白いではないか」
不敵な表情。
人間どもが攻めて来るのなら、相手をしてやろうという表情。しかしそれを聞くとセルシはこう続けるのだった。
「ですが、問題があります」
「なんだ?」
「魔界の住人達も怒っています」
「え、なんで?」
そう。
それは魔界の住人達も同じなのだった。
・おまけ
セルシが提案した。
「魔王様。
もう、魔王様のグラビア写真集を出すくらいしか住人達の怒りを治める手段はありません」
――そして、イリスのグラビア撮影が決行され、目出度く写真集が販売された。写真集は魔界でも人間界でも大ヒットし、魔王城の財政は大いに潤ったのだった。
「なんで私があんな事をしなくてはならなかったのだ?」
愚痴を言うイリスにセルシは返す。
「魔王様、ノリノリだったじゃないですか……」
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これをコミカライズしたいと思います。




