26.まだまだ練習じゃー
そんな訳で、今回は元ネタを書きます。
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・どうして悪魔坂デビ美はサイトー君を好きになったのか
街中の喫茶店、天使沢キュピ美が不意に悪魔坂デビ美に尋ねる。
「ね、あなた、どうしてあんなにサイトー君が好きなの?」
どうやら二人でショッピングを楽しんでいるらしかった。意外に普段は仲が良いみたい。
「何がよ?」
「何がよ、じゃくて」
ちょっと止まる。
「あ、サイトー君」と、天使沢さんが窓の外を見ると、それに釣られて悪魔坂さんも外を見た。
サイトー君はいない。
また、間。
「……どうやら誤魔化せないようね」と、悪魔坂さんは言う。
「この期に及んで誤魔化せると思っているあなたの脳細胞が信じられないわよ」と、それに天使沢さん。
とにもかくにも、悪魔坂さんはサイトー君を好きになった訳を話し始めたのだった。
「――あれは私がまだこの世界に来たばかりの頃だったわ。早速、エクソシストに見つかっちゃってね」
悪魔坂さんの説明に天使沢さんはやや感心する。
「へー、あんたのカバーを見抜くなんて、腕の立つエクソシストだったのね」
「リサーチが甘くてね。人間に尻尾や角が生えていないなんて知らなかったのよ」
「……まぁ、いいけど」
街中の道、エクソシストが叫ぶ。
「おのれ、悪魔め! 人間の社会に悪さをしに来よったか!」
エクソシストはなんかサングラスをかけたやたら元気そうなお爺さんだった。悪魔坂さんに向けて数珠を握りしめて殴りかかって来る。
「――ちょっと待って」
と、そこで天使沢さん。
「エクソシストなのに、数珠?」
「そうよ? 何か間違っているの?」
「いや、まぁ、良いけど」
「私は不覚にも心底恐怖したわ」
「そりゃ、サングラスをかけたファンキーなお爺ちゃんが数珠を握りしめて殴りかかってくればね」
「それを助けてくれたのが、サイトー君だったのよ」
「何をしているんですか!」
悪魔坂さんが殴られる寸前だった。叫び声と共に、彼女の目の前にサイトー君が現れたのだった。
「とりゃ!」と言いつつ、彼はエクソシストを引っ叩いた。そしてこう言う。
「暴力はいけません。何があっても!」
「――自分は叩いているのに?」
と、それを聞いて天使沢は言った。
「そうよ」と何でもない事のように悪魔坂さん。
「……まぁ、良いけど」
「何を言っておるのだ、お前は! その女の姿が見えんのか!」
エクソシストからそう言われると「姿?」と首を傾げてからサイトー君は悪魔坂さんを見やる。
「コスプレイヤーに恨みでもあるのですか?」
「違うわー! そやつは悪魔なのだぞ! うち滅ぼさなくてはならんのだ!」
そう言いながら、再びエクソシストは数珠を握りしめて悪魔坂さんに殴りかかろうとする。
すると、サイトー君は「こんちくしょうめ!」とまたエクソシストを引っ叩いた。
「だから、何があっても暴力はいけないと言っているでしょうが! 叩いちゃダメです!」
「お前は叩いとるじゃないかぁ」
「そんな彼を見ながら、私は思ったのよ」と悪魔坂さんは言った。
「――この男を味方にすれば、色々と役に立つ」
悪魔坂さんはサイトー君の手にそっと触れた。もちろん、色仕掛けてサイトー君を落とすつもりだ。
ところがそれを受けると、彼はこう言ったのだった。ニッコリと笑いつつ。
「大丈夫だよ。よっぽど怖かったんだね。そんな事しなくても僕が守るから。例え君が悪魔でも」
その時、
トスン
と、ハートを射抜かれた音を悪魔坂さんは聞いたのだった。
「――なるほどねぇ」
と、天使沢さん。
「それは確かに好きになっちゃうかもね。因みに、その後、エクソシストはどうなったの?」
「警察に連行されていったわ。きっとサイトー君が“コスプレイヤーに恨みのある人です”って説明してくれたからね」
「……まぁ、良いけど」
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これをコミカライズします。




