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19.縦読み形式が映える話を考えてみたい

 知らなかったのですが、一部に、漫画の縦読み形式を推す動きがあるようですね。多分、スマフォで読み易い形態って事から注目されいるのでしょうが、新しい表現方法の可能性としてちょっと面白いなって思い始めてしまいました。

 (多分ですが、もし仮に手塚治虫が生きていたら、意欲的に「縦読み形式だからこそできる話」を考えていたのじゃないでしょうか?)

 

 ――そんな訳で、縦読み形式が映える(かもしれない)話を考えてみました。

 

 ***

 

 ・天使沢さんと悪魔坂さんと登校時の勇気の告白

 

 朝。

 たくさんの生徒達が、高校への道を進んでいる。時刻は後少しで8時00分。そんな中、緊張した面持ちの男子生徒が一人。二見君という。そんな彼の視線の先には内田さんという女子生徒がいて、彼は気が付いていなかったのだけど、彼女もなんだか緊張をしていた。

 そして、そんな彼女の後方には天使沢キュピ美さんがいて、彼と彼女を眺めながら嬉しそうにしている。

 実は天使沢さんは知っているのだ。これから二見君が内田さんに告白をしようとしているのを。二見君に告白をするよう勇気づけたのは彼女なのだった。

 

 ――前日、天使沢さんは二見君に話しかけた。

 「内田さんの事が気になっているのかな?」

 それは休み時間の教室で、彼は周りに気付かれないようにこっそりと横目で内田さんを見ていたところだったから、それにとても驚いてしまった。

 「な、な、なに言ってるのさ、天使沢さん」

 その反応に天使沢さんは可笑しそうに笑う。

 「わたしはね、そういうのは分かっちゃうんだな」

 ――実は彼女は少子化問題を解決すべく、天界より舞い降りた天使で、これから成立しそうなカップルを察知する能力があるのだった。彼女は続ける。

 「だからね、内田さんに告白すれば、上手くいくってことも分かるのよ?」

 動揺しまくっていた二見君だが、その言葉には如実に「ほ、本当?」と反応した。天使沢さんは言う。

 「明日の朝、8時ちょうどに学校に登校してみなさいな。あなたは内田さんに会うでしょう。そしてそこで告白すれば、あなたの恋愛は見事に成就するわ!」

 そう断言する彼女には、なんだか後光が差しているように彼には思えた。もちろん、二見君の気のせいだけど。

 「分かった! がんばってみるよ!」

 しかし、それでも二見君はその気になってそう気合を入れたのだった。

 

 同、休み時間。

 天使沢さんは内田さんの席に向かった。そして自信たっぷりの表情で彼女の目の前まで来ると話しかける。

 「内田さん」

 妙な迫力に圧されて、内田さんは思わず「はい」と応えてしまう。なんでか畏まっている。

 「明日、8時ちょうどに学校に登校して」

 そう言われて彼女はキョトンとした。

 「――え? どうして?」

 「良い事があるからよ」

 断言する天使沢さん。

 内田さんが「良い事って……」と訊こうとするのにやや被せめで天使沢さんは返す。

 「二見君関連」

 相変わらずに自信満々。笑みを湛えている。そして、その一言で、内田さんは何かを察してしまったのだった。

 ……因みに、これは天使の力とかじゃなくて、単なる力技だったりする。

 

 “これで二人は上手くいくわね”

 

 内田さんの様子を見て、天使沢さんはそう心の中で呟いて喜んでいた。

 ――がしかし、そんな彼女達を廊下の影から覗く怪しい存在があったのだった。

 

 「……甘いわねぇ、天使沢」

 

 悪魔坂デビ美。

 綺麗にそろえられた髪を揺らして、妖艶な笑みを湛え、彼女は呟く。

 「あなたの企みなど、この私が粉々に粉砕してあげましょう!」

 ――実は彼女は少子化問題を悪化させるべく、魔界よりやって来た悪魔で、カップルが成立するのを日夜邪魔しているのだった。

 「告白する直前、私が腕に抱き付けば、それだけで告白は台無しになるわ!」

 オホホホ!

 と、心の中で彼女は高笑いをした。

 

 ――そして、話は朝の登校風景に戻る。

 

 二見君は反対側から向かって来る内田さんに視線が釘付けになっている。

 “ほ、本当に8時に来た”

 天使沢さんが8時に来るように言ったからだけど。

 “よ、よし! 告白するぞ!”

 と、気合を入れる。

 が、その様子を察したのか、二見君の直ぐ後ろにいた悪魔坂さんはにやりと笑う。

 “腕に抱き付くならここね!”

 後ろから二見君の腕に手を伸ばそうとする。しかし、そこで今度は天使沢さんがにやりと笑うのだった。そして、わざとらしく大きな声で「あ、おはよー、サイトー君!」と挨拶をする。

 悪魔坂さんは固まる。

 “え? サイトー君?”

 見ると本当にサイトー君が近くを歩いている。ハッとなり天使沢さんを見ると、彼女は余裕の笑みで彼女を見ていた。

 “やられた! 諮ったわね、天使沢!”

 悪魔坂さんは、サイトー君の事が好きなのだ。それを知っている天使沢さんが、恐らくサイトー君がこの時間帯に来るように仕組んだのだろう。

 歯を食いしばる悪魔坂さん。

 “くそー! なめないでよね、天使沢”

 と、彼女は思う。

 “私は、色恋沙汰にかまけて、使命を忘れたりしないわ!”

 二見君の腕を抱きしめようと手を伸ばす。

 が、そのタイミングだった。

 「あっ 悪魔坂さん。おはよー」

 と、サイトー君が彼女に気付き挨拶をして来たのだった。

 その瞬間、彼女は使命を忘れた。

 「おはよー サイトー君!」

 と、笑顔で挨拶を返す。

 もちろん、もう二見君の告白を邪魔する気は彼女にはさらさらなかった。サイトー君の目の前で、別の男には抱き付けない。

 

 ――そして、ちょうど校門の目の前、

 二見君と内田さんが向かい合っている。

 「あの…… 内田さん」と二見君が口を開く。

 「なに?」と内田さんは返す。

 「あのね……」

 たくさんの生徒達が学校に入っていく流れの中で立ち止まり、二見君は勇気を出して口を動かした。

 天使沢さんも学校に入っていく。そして、結末を確かめていないのに、「ふふ、お仕合せに」とそっと告げたのだった。

 

 ***

 

 思ったよりも長くなっちゃいましたが、これで行こうと思います。

 ・おまけ

 挿絵(By みてみん)

夜に絵だけ描いて、通勤途中で歌詞ネタはあかん事に気が付きました。

仕事の最中に絵に合わせた別の話を考えたのですが。

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