3話目:リアルになるほど身体が重い
#脳みそ
登場人物:わたし
泳ぐ。海に
(脳みそに)
潜る。脳に
(広い海に)
どぼん
わたし:また来ちゃった……
この前の泳ぎで気付いた
海に足りないもの……
色々考えてみたけど、音が足りないんだ。
今日は久しぶりにお家に帰れたので、スマートフォンで海の音(Yo〇Tub〇)を事前にセットしてから、ハートの風船をもって潜ってみました。病院では寝るときYouTubeとかナースさんに禁止されてるからね。ちなみに服はいつもの白いワンピース。
うん、今日もかわいいね
だから海に潜っちゃおう。
浜辺から躍り出ると、わたしは海に飛び込んだ。
リスポーンしてさっそく深い心底にご到着。
まずは風船を頼りに、上に昇ってみようか。
みんなを探しに……
あれ
わたし:何かが変
辺りを見渡してみると、
なぜか"かわいい"がなくて、幻想的な海が目の前に広がっている。
なぜだろう?
いつもなら人形とか、
黒い魚が眠っているはずなのに。
いつものみんなが誰もいない。
それどころか妙にリアルな魚が辺りを彷徨い続けている。
わたし: ?
考える
割とすぐ気付いた。
原因は音だ。現実の音の影響で、頭の中もかなり変化を受けているみたい。今まではピンクだけの背景に、泡を詰め込んだ無空間を泳いでいたのに。
音が海の解像度を引き上げてしまった。
わたしだけ2次元のポリゴンのままなのに、
周りはリアリティのある海の中が広がっていている。この光景はすごくアンバランス!
脳じゃない、本当の海に潜っているみたいだ。
色もピンクから暗い青色に。身体も重い。
人間は海の中では浮くはずだけど、
わたしは犯した罪が重すぎた。
夢の中なのでそのまま沈んでいく。
頑張れば色くらいなら変えれるけど、
それも長く続かなくてすぐ現実的すぎる色と暗闇になってしまう。
脳が上手く操れない。
今のわたしは2次元だから、
3次元な現実に変化をもたらすなんてことできないんだ。
だけど海は勝手に変化し続ける。
夢だけど、解像度は高いから。
海の流れとか、重力とか色んな理由はあるけれど。
これは……
わたしだけ、置いてきぼり。
……
……
沈む
あ、これすごくこわい
今のわたしは海で溺れた人間状態?
それはかわいくないなあ
助けを呼ぶ
わたし:海よ。脳よ。わたしをおいていかないで、これすごくこわい、元に戻して
「ダメ。」
わたし:どうして?多分このままだと戻れないよ、たすけて。
「この音が流れているかぎりはむりかもしれないね」
そんなあ
ああ、これはもう無理かもしれない……
音という現実が外部から接触して、脳自体に変化をもたらしてしまった。
この音を消さない限り、わたしは海の中では自由になれないらしい。だから、なんとか音楽を消そうと頑張ったけど……体が重いので消せなかった。
スマホが遠くにあって手が届かないよ。
わたし:あはは……
あたまのリボンだけが上に昇っていく。
リボンだけは希望を見ているんだね。
おわりだ……。
沈んでいく。
こわい。
こわいけど、でもこの海、凄く幻想的だ。
それに不思議と苦しくない、息ができる。
というか海の中に潜ったことがないから、
そもそも息ができないものだって今まで知らなかった。気付きを得たな。
うーん、でも息ができるなら、苦しくないし、このままでいいのかなあ……。
ここなら死んでもいいや。
上を見上げると、綺麗な綺麗なお星さまが浮かんでいる。へえ、きれいだ。
星は海の上のさらに上に、地球の上に生きている。
けれども星も神には届かない。
けれど神にわりと近い存在。それがお星さま。
星たちは堕ちるだけのわたしを優しく見守ってくれている。
幻想的……。
ぷかぷか
これ、結構楽しいかも……。
堕ちるってこんなにも気持ちいのか
今のわたしには何もできない。
なら
あとは堕ちるだけ堕ちてみようか?
終わりのない海に
・
・
・
・
・
・
と思ったら
ずぽん
!
わたし:あ
わたしが堕ちる前に、
スマホのバッテリーが沈み終わってしまった。
わたし:なんて呆気ない終わり方……
音も消えて、身体を起こすといつの間にかわたしの脳もいつものピンク色に戻っていた。
安心というか、なんというか……。
人形たちが出迎えて手を振ってくれてる、
嬉しいけど、挨拶だけして今は現実を優先した。
身体の重力も戻ったのでスマホを充電する。
ふう
朝の8時。
重力と一緒に、
疲労までも現実世界にやって来てしまった。
綺麗だったけど、もう二度とあそこには沈みたくないかな。
疲れたあ
今日はもうちょっと寝かして……
おやすみなさい………
さようなら……
寿命が決まってるけどたまに家に帰れる病気ってなんでしょう。謎です