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彼等の事情⑤

【スマート氏のスマートでない半生】



「ヘへへ、ありがとうごぜぇます。」


見も知らぬ依頼主からクレジットが振り込まれているのを確認し、独り呟く。

簡単な仕事だった。

不満を持つ労働者達の輪に入り、誰がリーダー格なのかを雇用主に密告(チンコロ)する。

親しげな顔で近付き、本音を聞き出してそれを必要とする誰かに教えてやる。

入り込む元手は依頼主持ち、当然、ヤバい橋を渡るのだから、報酬もボロい。

報酬を渋れば、手持ちのAHMをけしかけると脅す。


「とは言え、そろそろ潮時かねぇ。」


ここ最近、AHMの修理費を稼ごうと少し派手にやり過ぎた。

幾つかの組織からはマークされだしてるのも理解していた。


(昔は、こうじゃなかったんだかなぁ……。)


ウイスキーを煽り、まどろみの中で過去を夢見る。



夢の中で自分はまだ10代、こんな事になるとは知らず、幸せの絶頂期にいた。




「ハハハ!どうだ!まいったか!」


「流石スマート坊ちゃん!

AHMの操作も、もはや大人顔負けですな!」

「左様で御座いますな、これなら、我がエコ家も安泰というモノです。」


執事達が次々と褒め、ますます自信をつけて威張り散らす。

今の自分から見て、世間知らずの馬鹿なガキだと思う。


「父上!次の戦場では私もご一緒したいです!」


「ハハハ、スマート、逸る気持ちもわかるが、お前のデビュー戦はもう少し先だ。

次の戦場はこの父、デイジーズ・エス・エコに任せておきなさい。」


記憶の中で、父の顔はぼやけていてよく見えない。

あまり父親の顔は見ていなかった。




「た、大変ですスマート坊ちゃま!ご当主様が!!」


ある日の午後、いつも通りAHMのシミュレーター訓練で遊んでいたところで、蒼白の執事が駆け込んでくる。


父の死を告げるモノだった。


否、それだけではない。

エコ家伝来のAHM、80tクラス智天使(ケルディム)級AHM、“クレマーティス”を全損させたのだ。

胴体の弾薬に引火し、残骸も残らぬほど爆発四散した、と、執事は語る。


「現状を確認しておりますが、これは覆しようのない事実と思われます……。」


この世界で貴族が貴族たらしめているのは、その所持AHMに依るところが強い。

重量が重いAHMを所持していればしているほど、戦場での要となる。


“ノブレス・オブリージュ”


より難しい戦場を任せるからこそ、身分はより強いモノとなるのだ。

裏を返せば、80tクラスを失うと言うことは、今後その責務を果たすことが出来ないと言うことであり、領地没収、貴族としての格下げへと繫がる。


エコ家は他の貴族としては珍しく、2機のAHMを所持していた。

まだ60tクラス主天使(ドミニオン)級AHM、“ライコウ”が残っていた。

しかし、領地全体を見ると、浪費散財を繰り返しており、借金は膨大な額に跳ね上がっていた。


必然、領地の大半は没収され、御家お取り潰しの事態となる。

ここで、エコ家は“ライコウ”も王国に献上し、借金返済の一部に当てようとした。


スマートには、それが我慢ならなかった。


“アレは自分のおもちゃだ。”


傲り高ぶった貴族としての自尊心が、手放すことを良しとしなかったのだ。


口先での論争には自信があった。

そこで、長男に喧嘩を売り、AHMを奪い取ってエコ家から逃げた。

後のことなど知ったことでは無かった。


逃げ回り、時に傭兵として各地を転戦し、少しはまともに生きようとした。

だが、所属した傭兵団も壊滅し、残ったのは半壊のAHMと、幾ばくかの小銭のみ。


この時、初めて商人の家に盗みに入った。


初めてだったからだろうか、盗みは思いのほか上手く行った。


AHMの修理費どころか、それを払った上で更に少しの間は遊んで暮らせるほどの金を得ることが出来た。


ここで、人生の転換を迎える。


“戦争よりも楽に儲かる”


次々に盗みに入り、そして得意だった話術を用いて詐欺の類いも散々行った。


気付けば、その界隈では一端の悪党になっていた。


その話術を生かして、あの組織を潰して欲しい。

あの組織の弱みを握って欲しい。

あそこに潜入できないか?


どれも簡単な仕事だった。

そしてある時、やればやるほど、この胸に虚しさが広がっている事に気付いた。


(……久々に、まともに生きてみるかなぁ。)


まどろみから醒めたスマートの脳裏に浮かぶ、他愛ない想い。

何気ない気持ちで、久々に傭兵団の募集を見てみれば“AHMを所持していること”という条件以外は割と待遇の良さそうな募集が目に入る。


(天運、ってヤツなのかねぇ。)


この募集を見たとき、スマートの中で何か引っかかる気持ちがあった。

この感性で今まで生きてきた。

ならば、この勘に従うのも悪くない。


無意識に注ごうとしていたウイスキーに気付き、手を止める。

“応募は素面でやらなきゃダメだ、どんな厄介な条項があるかわからねぇからな。”

独りニヤつきながら、募集項目を見る。


スマートの中で、新しい何かが始まろうとしていた。

最後の5人目。

最初にキャラ名「e=スマート」と貰った時の衝撃たるや、という感じです。


スマート・エコ

勘当同然のため、ミドルネームなし

外見年齢40歳くらいの男性

職業は、スカウトと言えば聞こえは良いが、実際はただの盗賊(潜入等は得意)

かつてはダウィフェッド王国の貴族だったが80tクラスを失ったことと、それまでの借金が祟り御家お取り潰しとなる。

AHMは全て返上予定だったが、長男との諍いにより強奪同然で奪い取り逃走する。

今まで甘やかされて育った為、貴族のプライドが邪魔してまともな職に就けなかったため、盗賊として暫く生きていたがここで一念発起、傭兵団の募集に申し込む。

エコ家伝来のAHMで、60tクラス主天使(ドミニオン)級AHM“ライコウ”を所持。


いやはや、凄ぇの来ちゃったな、という感じです。

この人シンプル屑だよね……?




後1~2話を何処かで書いて、一旦キャラメイク編は終わりとなります。

次はまた皆で遊んだら、タイミングあるときに更新します。

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