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イベント前準備とマップ説明

[各員、これより本船は降下準備に入る。

所定の場所にて待機せよ。繰り返す……。]


[やれやれ、着任早々すぐに任務とは、傭兵部隊とは慌ただしいモノだな。]


降下船のAHM格納庫、その中で鎮座している機体のコクピット内で、ハリソンは呟く。


[そんなモンだ。

教授もすぐに慣れますよ。]


[ヘヘヘッ、アタシが前いた部隊なんざ、着いたその日にはドンパチ始めてましたぜ。]


ラルフが何でも無いように答え、スマートが茶々を入れる。

“そう言うモノなのか”と大真面目に呟くハリソンに、ファイズが苦笑いする。


[スマートさんの場合は特別ですよ。

いえ、もしかしたらそう言うことも“よくあること”かも知れませんが。

でもまぁ、大体がこんなモンです。]


[あぁ、こう言うのが普通なんだ。

アタシもこう言うのはあんま経験無いなぁ。]


バリーの言葉に、モニター上の皆の顔が静止する。

全員、その顔に“え?お前傭兵やれてたの?”という疑問が浮かび上がっていた。


[ちょ!?何だよお前等その顔!

アタシだってリントヴルム(この子)の生活費稼がなきゃなんだから、傭兵くらいやるっての!]


[ハリソン隊、喧しいぞ!

楽しいお喋りならサマーキャンプのテントの中でやれ!]


降下船のパイロットから注意受け、“おっと失礼、全体無線だったか”と、悪びれる様子もなくハリソン隊は小隊内通信に切り替えたようだ。


[副隊長、注意して下さいよ。]


「捨て置け、“雛はさえずる”ものだ。」


私は降下船パイロットの苦情を切って捨てると、通信をオフにして、作戦指令データを見返す。


「……フン、盗掘屋の救助とは、我々も地に落ちたものだ。」


画面上に表示されているのは2人の男女。

アンドリュー・ジョンソンにエマ・ジョンソンと、上半身の写真の下に表示されている。


“盗掘屋”


遺跡とは、遺失技術(ロスト・テック)とは、それ自体が過去のテクノロジーを復元させる上に置いて、全てが貴重だ。

そこにあるデータディスク1枚、いや、紙片の1枚すら、技術の復元には必要なものだ。

だが、コイツら盗掘屋はそんな事はお構いなし。

遺跡内の貴金属、AHMの部品、果ては電子回路まで、金目の物を乱暴に引き剥がし、そして闇市に売りさばく。


本来ならば唾棄すべき存在。

今回この夫婦はへまをした。

盗掘中に帝国に掴まり、そして処刑される運命だった。

彼等を救ったのは、皮肉にもその盗掘から得た“情報”。


この惑星に眠っているらしき遺跡、その情報に、帝国が反応したのだ。

帝国に潜伏させていた現地スパイからの情報では、どうやら夫妻はこの惑星に眠る遺跡の入口らしきモノを見つけたらしい。


王国もそれを聞いて躍起になる。

夫妻の命はどうでも良いが、彼等のもつその情報は帝国に渡すわけにはいかない。

正規軍を動かして全面戦争に突入することは避けたいが、帝国に重大情報が漏れるのを避けたい、あわよくば自分達がその情報を得たい。

そんな思惑から、我々に声がかかった、という、何とも下らない話だ。

だが、我々傭兵団には、こう言う仕事くらいしか流れてくることはない。

今回はそれなりに割の良い仕事ではある。


これまで偵察、潜入を得意としていた第三大隊、その交代要員。


彼等がどれだけやれるかも、ここでその真価がわかるだろう。


「よし、降下開始!

各員、無事に降りられるように、それぞれが信じる神にでも祈っておけ。」


科学技術が衰退した現代では、宇宙船は勿論、惑星に降りる降下船もほぼ生産できない。

生産できないとはつまり、修理するための部品すら事欠く場合が多いと言うことだ。

この降下船も、だましだまし使ってはいるが、運が悪ければ空中で分解することもあり得る。


……大昔、コレを作った人間達は“耐用年数を100年以上過ぎてもまだ使われている”等と言うことを、きっと夢にも思わなかったことだろう。


「大気圏内に突入しました!

逆噴射ロケット、……3、2、1、点火!

点火確認しました!」


がたつきが激しく、腰を落とさねば立っているのも危うい振動を感じながらも、どうやら今回も生きていられたらしいと安堵する。


降下船での死亡事故の殆どは、この逆噴射ロケットが破損していて点火しないか、火を付けた瞬間に漏れていたエーテル液に引火して吹き飛ぶか、だ。


周りを見れば、多くの隊員がそれぞれの宗派のやり方で神に感謝している。


機械を動かすのも神頼みとは、何とも人間は愚かしい。

いや、愛すべき我が仲間と言うところか。


「よし、進路を王国宇宙港に!

ついでに上空から偵察だ、観測班、それと各AHMパイロットに“地図作成(マッピング)せよ”と通達しろ!」




「フム、今のうちに上空からの地形を把握しておけとのことだ。

各員、機体のモニターを降下船のカメラに切り換えたまえ。」


彼等は“どーやって接続するんだよ”などと騒いでいたが、1度繋ぐとピタリと黙る。

それに少し感心しながら、私もモニターを眺める。

何となく、見たことのある地形だ。

カーブかかかった四角形、いや、台形だろうか。

昔歴史書で見た元・地球(ジ・アース)のオーストラリアだったか。

私はそれを思い出していた。

だが、少し違うのは台形の中央から左下、そこにクレーターの様な物があることだろうか。

美しい山脈が、そのクレーターによって、まるで切り取られたかのように突然崖になっている。


「不思議な地形だな……。

隕石でも落ちたのだろうか?」


[……この星の歴史データから見ると、アレは旧時代の爪痕のようだ。

この辺りでも艦隊戦が行われていたらしい。

……もしかしたら、あそこに“何か”が落ちたかもしれんな。]


ラルフ君の言葉に心が躍るのを感じていた。

おぉ、未知なる遺跡よ!

まだ解明されていない、愛おしき謎達よ!

今、私がお前達を解放してやるぞ!


[幾つか街の灯がありやすね。

えぇと、こう見ると左の3分の1が王国領で、後は帝国領って感じでやすかね?]


スマート氏が事前の情報と照らし合わせて、地図データ上に書き込んだ情報を共有してくれる。


彼の言うとおり、台形の左側、それもほぼ海に面した場所くらいしか王国は制圧出来ていないようだ。

逆に帝国は中央から右側を広く制圧している。

随分と劣勢な場所に送り込まれた物だ。


[……でも、アレですね、それ以外にも灯があるのは、ブリーフィングで言われてた“中立の民族”ですかね?]


この星には、王国、帝国の他に、現地民を名乗る人々が存在する。

彼等はどちらにも与しない代わりに、その両方に食糧などを売って生活を立てているらしい。


[確か、山の方には好戦的な現地民がいるらしい。

山には近付くな、と、言っていたな。]


あの山は怪しい。

そんな危険な蛮族めいた現地民がいるなど、ますます古代の遺跡が眠っている可能性は高い。


[アタシ、あの山登ってみたいかも。

……確か登山グッズあったよな。]


その言葉に、我々は苦笑いを漏らす。

彼女にはこの戦いはどうやらハイキングの様な物らしい。


「よし、情報収集限界時間だ。

降下後は速やかに格納庫に移動せよと女王サマからお達しだ。

皆、着陸の衝撃に備えてくれ。」


[アタシあの女嫌ーい。]


こうして、和やかな空気と共に我々の任務が幕を開ける。

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