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模擬戦(決着)

AIの奇行は続く。


それまで有利な位置をとり続けるように動いていたスナイパーマンまでもが、動きの悪くなったバリー機を狙おうと遮蔽物等の有利を無視して前進し始める。


[よし、敵フィーニクスが転倒した!]


[ぶっ込めぶっ込め!]


ラルフ機に飛び降りを仕掛け、見事に外したフィーニクスが着地に失敗し、激しく転倒する。

その隙を逃す2人では無い。

あのフィーニクスの擱座判定が出るのも時間の問題だろう。

戦場中央では、ハリソン機とスマート機の集中砲火を受けて、ドラゴンフライがほぼスクラップ同然になっていた。

それでも最後までバリー機を狙おうとしたところを、ハリソン機の蹴りを受けて転倒、遂に沈黙する。


1度崩れればもう崩壊は止まらない。


ドラゴンフライの後を追うように接近していたカーズウァ近接型も、同じくバリー機を撃墜しようと無理をし過ぎて火だるまになっている。


(おかしい、崩れ方が不自然すぎる。)


「スマート、何をした?」


私はたまらず、スマート機に通信を入れる。

スマートが何か言ってから、突然AI機の動きがおかしくなった。

異常は検知できなかったが、何かしたことは明白だ。


[ハハハ、何を仰る。

俺は何もしてませんよ?

俺は何も(・・・・)、ね。

まぁ、強いて上げれば、模擬戦を“コンピュータゲーム”にしたのはマズかったですな。]


タイミングを崩されたスナイパーマンが、無謀な中央突撃を行う。

あれは最早、戦う場所を完全に狂わされた死に兵だ。

スナイパーマンは狂ったように全ての弾薬を吐き散らす。

この劣勢状況にせめて一矢報いるため、自身の状態異常も見向きもせず、ムキになって全力全開の射撃を繰り返す。


コンソールに映るパラメータは、次々と各部位が異常過熱していると警告を出す。

その警告を無視して撃ち続けるスナイパーマンが辿る末路はたった1つ。


異常過熱からの弾薬誘爆、そして跡形も残らない爆発だった。


「グッ……、戦闘終了だ。

各員、シミュレーターを停止して整列せよ。」


5機中3機が撃破され、1機は中破カーズウァの支援型は無傷だったが、終始空気も同然だった。


(……おかしい、戦闘プログラムには異常は無い。)


「中佐、皆整列してますが。」


整備兵の言葉に我に返る。

診断プログラムで調べても、異常は検知出来ない。

まるで、“それが普通のプログラムだった”かのような結果だ。


私は諦めて、彼等の列に向かう。

結果は言うまでも無い。

バリー機の小破と言うアクシデントはあったものの、結果は彼等の快勝だ。

それに、彼等を落とすためにこの試験を実施したわけではない。


私はため息代わりに深呼吸を1つすると、改めて彼等に向かう。


「多少の被害はあったモノの、結果は諸君等の快勝である。

試験終了だ、ようこそ白禿鷹ホワイト・ヴァルチャーズへ。

私は諸君等に直接指揮、命令を行うことになる、ニーナ・レイクヒル中佐だ。

これからよろしく頼む。」


整列した彼等に敬礼すれば、彼等も答礼する。


人格面に問題はあれども、そんな事は傭兵の常だ。

真っ当な人格、真っ当な操縦技術、真っ当な出自。

そんなヤツは正規兵から出て来ない。

問題児くらいが丁度良いと思わなければ。


「あ、じゃあ早速、試験通ったんだから何かご褒美頂戴よ!

例えば撃破した分の、敵機体の費用をボーナスとかでさ!」


「データとは言え、撃破した敵機の費用をボーナスとして支払うなら、そこから破損した装甲とエンジンの修理費用を差し引いてあげましょうか、お嬢さん?」


この口の減らない小娘に、私はニッコリ笑いかける。

彼女なりの親愛の現れなのは理解できるが、そう簡単に乗ってはやらない。


「ハハ、こりゃお嬢ちゃんの負けだな。

まぁ、無事採用ってなら、俺達のARMを運び込ませて貰うぜ。

……お嬢ちゃんじゃないが、多少ぶっ壊れてるところを面倒見てくれると嬉しいんだがね。」


「結構。

最低限の準備はしてやろう。

最低限を超える場合は、それぞれの給料から天引きさせて貰う。

……そうだ、あのカラクリはどういう事なのだ?」


スマートは、“あぁ”と言った後、何故か周りの傭兵達を見渡す。

ラルフは目を閉じて頷き、ファイズは“後の人、厳しくなりますね”と他人事のように呟く。

それを受けてハリソンは“まぁ、後の人間のためにも、言うべきかと”と、何やら意味深に呟いて頷く。

バリーだけは“へ?何が?”と、姿勢を崩して皆を見ていた。

それらの反応を見た上で、スマートが口を開く。


「まぁ、大したことじゃ無いんですがね。

こちらの傭兵団じゃ、AIは最新のバージョン872じゃなくて、バージョン781使ってるんじゃねぇスかね。

まぁ、このバージョン781、今でも広く普及してるベストセラーなんですがね、唯コイツ、自動戦闘プログラムに問題抱えてるんですわ。

戦闘プログラム実行中にある特定の単語を言うと、思考ルーチンが突然おかしくなるって言うタイプの。」


そこからの言葉を、ラルフが引き継ぐ。


「スマート氏の言った単語がそれでね。

各単語の頭が、古い帝国語、それも極東という地域で使われていた発音で“m.u.m.y.o.u”になる様に喋ると、それが発動してしまうと言う、見つけたヤツもよくやったモンだと言うようなバグでね。

流れの傭兵の間では、“無明プログラム”と言われていてね。

あまり広まっていないが、流れの傭兵だとこれを知っている者も多い。

次から模擬戦をする場合は、781以降のプログラムを使うか、専用の演習プログラムを使うことをお勧めする。」


聞いてみれば何と言うことは無い、コンピュータの隙間をついた行動で勝ったにすぎない。

だが、それを知らなかったこちらの落ち度ではあるだろう。

ただ、彼等の基本的な戦いはある程度見せて貰った。

あのようなシステムのバグを突かれなくとも、いずれは同じ結果になったとは思う。


「……何故、教授までその事を知っていたのです?」


本当にふと、気になったことを口にする。

ラルフやスマートの様な、流れの傭兵が知っていたのは解るが、ハリソンは大学の教授だ。

そこまで有名なら、私達が知っていてもおかしくは無い筈だ。


「ん?あぁ、私かね。

私の場合はホラ、発掘がフィールドワークだったからね。

護衛として流れの傭兵を雇うことも多かったんだ。

そう言うとき、次の遺跡の候補は無いかと酒を飲ませて色々聞き出していたからね。

この事はすぐに気付いたが、まぁ、やっちゃ悪いかなと黙っていたんだ。」


この教授も、中々に狸な様だ。

してやられた、という気持ちと、これは面白い奴等が来たモノだ、という両方の気持ちが湧いていた。


コイツ等ならば、また白禿鷹ホワイト・ヴァルチャーズも再起出来るかも知れない。


そんな予感を感じていた。

現状、皆でキャラ作ってお試しの模擬戦やった所までなので、この後はまたTRPGやったらお話が続きます。


規約上あまり多くは言えませんが、バリーの中の人が扱う機体に胴中央致命的命中とかやったとき、正直冷や汗が止まりませんでした。


後、スナイパーマンの元ネタ機体の“全力全開!大爆発!”はマスターがどうしても見せつけたかったんでやりました。


反省はしていない。


次回は地獄の自作戦車(短距離ミサイルガン積み)とか出したいッスね。

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