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転職士の野望~現代で散々転職に失敗した俺は職業固定の世界の価値観をぶち壊す~  作者: 波 七海
第2章 花精霊族解放編

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第29話 行方

 空が暗い。

 それは雲で太陽の光が遮られているからではない。

 鬱蒼と茂る木々のせいであった。


 アスターゼはどうやら自分が気を失っていたようだと理解した。

 しかし、理解できたのはそれだけだ。

 ここがどこで、何故自分が森の中で倒れているのかもさっぱり分からなかった。


 記憶にはしっかりと残っている。

 自室で刺客に襲われて迎撃し、勝利まで後わずかと言ったところで敵の1人が魔術を使ったのだ。

 アスターゼには聞いたことのないスペルであった。

 少なくとも攻撃魔術ではなかったのだろう。

 現に心身にダメージはない。


 取り敢えず持ち物を確認してみたが、襲撃を受けた時に身に着けていたままのようだ。要するに着の身着のままでこの場所へ飛ばされたと言うことになる。アスターゼにはそんな魔術の存在は知らなかったが、連想することは出来た。


 ――時空魔術


 辺境伯が進めようとしていた計画に時空魔導士を集めて大規模な魔術を軍事転用すると言う物があった。直接聞いた訳ではないが、あの密談の場で話し合われていたことがまさにこれに当たるのではないかとアスターゼは理解したのである。


 つまりアスターゼは空間転移でどこか違う場所へと飛ばされてしまったのだ。


「マジか……。と言うことはアルテナたちも飛ばされたのか!?」


 アスターゼの予想が正しいならば、今頃コンコールズの城は大騒ぎだろう。

 辺境伯の慌てふためいた顔が目に浮かぶようである。


 取り敢えず、ここがどこなのか把握しなければならない。

 それに水は法術(ほうじゅつ)で何とかなるとして、食糧の問題もある。

 世界地図はコンコールズに来てからカツリョウに見せてもらったことがあるので、おぼろげだが頭に残っている。だが国名などははっきりと覚えていなかった。


「これじゃ地名が分かっても何処にいるのか分からないな……」


 アスターゼはドレッドネイト王国周辺の国名しか覚えていなかったのである。

 頭を抱えてその場にうずくまるアスターゼ。

 転職できる自分はともかくアルテナの安否の方が心配だ。

 しかしこうしていても何にもならないことだけは確かである。

 一応、アスターゼはこの状況に最も適応できそうな職業の当てがあった。


 冒険家である。


 職能は〈冒険〉で特性には【生存戦略】、【方位認識】、【絶対座標】、【世界地図】などの有用そうなものが揃っている。

 剣が装備できないのは痛いところだが、不幸中の幸いで腰のホルスターにはナイフが差してある。

 アスターゼは剣を鞘にしまうと腰に佩き早速、冒険家に転職した。

 キャリアポイントはやはり少なく、習得している特性も【方位認識】だけであった。


「仕方ない……。キャリアポイントを稼ぎつつ街を探すしかないか……」


 アスターゼは職能に〈黒魔術〉をセットし歩き出した。

 気候的にはコンコールズやスタリカ村よりもかなり温暖である。

 現在が新年を迎えて時間が経っていないことを考えると、南大陸のどこかなのかも知れないとアスターゼは予想する。


 ナイフ術など習ったこともないので獣や魔物が出てきても対処できる自信はない。黒魔術で何とかするしかないだろう。もしくは戦う時だけ騎士(ナイト)などに転職すると言う手もある。


 アスターゼは傾斜に沿ってゆっくりと地面を降りていく。

 木々に手を掛けて周囲に気を配りながら進まざるを得ないのでどうしても時間が掛かる。わずかな木々の隙間から見えていた空はどんどん暗くなっていた。


 気持ちだけが急いていく。

 方位的には東に進んでいるが、これは特に確信があってのことではない。

 アスターゼは自分の運に祈ったが、前世のことを思い出してすぐに止めた。


「俺に運なんかないよな」


 そう自虐的に呟きながら歩を進める。

 前世のことは考えない方が良い。

 この世界に転生してやり直すと決めたのだから。


 アスターゼがそんなことを考えながらひたすら前進していると、どこからか悲鳴が聞こえてきた。

 反響して正確な位置が掴めないが、恐らくは女性の声だろう。

 悲鳴を上げると言うことは身の危険が迫っていると言うことだ。


「そんなに離れてはいない……近い?」


 悲鳴は途切れ途切れだが、何度も聞こえてくる。

 何とか聞こえてくると思われる方向へ向かって走るアスターゼ。

 その時、近くの繁みがガサガサと揺れたかと思うと、何かが勢い良く飛び出してきた。


 それは1人の少女であった。

 見た目からアスターゼと同じくらいの年齢のようだ。

 アスターゼが彼女に駆け寄ろうとすると、少女の方もそれに気が付いたのか、何か叫びながらら抱きついてきた。


「蜉ゥ縺代※」


 しかし少女が口にした言葉はアスターゼが聞いたこともない言語であった。

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