表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スカッとサイダー

作者: ヘラ

僕はスカッとサイダーを飲むと、駅のホームで倒れていた。ここはどこだ?

酔ったよつうな気分だ。立てはしたのでヨロヨロと歩き、状況を確認する。柱に西馬込駅と書いてある。祖母の葬式か何かで使ったことがあるような…僕にとって、ほぼ馴染みのない駅だ。


だいたい、僕がスカッとサイダーを飲んだのは昼過ぎのことだった。

今はかなり薄暗い。

時刻表を確認すると、夜の11時半だった。家まではそれなりの距離があるので、終電が近いかもしれない。


と思ってたら、カラスが線路に降り立ち、鼠らしきものをついばんでいった。まだ鼠が出てくるには時間が早いと思うのだが、何となく不吉だ。


僕の帰る家はこんな感じだ。


・母親はスーパーのパート。シフトはそこまで入れてないので、ほぼ専業主婦だ。


・父親はスタジオミュージシャン。


・姉は家出中。


・亀がいる。


・11時32分現在、亀の上に亀がおんぶされている。


・11時33分、両親が取っ組み合いの喧嘩をして、亀の水槽に母は頭から突っ込んだ。


下の亀は、水槽が置いてあった棚の上から放り出された。2回転半程して、床に叩きつけられる。裏側で着地したので、しばらく起き上がれなかった。


上の亀は、棚の裏に落ちた。奈落の底。そこには、暗闇と埃の海が待ちかまえていた。


12時41分、両親は双方とも家を出た。怒りに任せて。

家には2匹の亀が取り残されていられる。1匹は裏返って起き上がれない。1匹は奈落の底だ。救出出来るのは僕しかいない。


電話がかかってきた。路線検索をしてスマホを開いていたので、そのまま電話に出た。


「もしも…」「亀だ。」「…はい?」「私は亀だ。」

きっと聞き間違えだが、はっきりと聞こえたので聞き返した。「私は亀だ?」「そうだ。」「私は亀だ?」「何度聞き返すんだ!私はお前の家に飼われている亀だ!」


は?


電話は切った。とにかく家に帰れと言われたが、行く宛もないので不本意ながらそうする。


家に帰ると亀が転がっていた。


亀を水槽に戻した。棚の裏から声が聞こえた気がしたので、見てみたら子ガメがいたのでそいつも戻した。


「亀ですか?」当然ながら、答えは帰ってこない。


いつもと違い、家には誰もいなかったが、これはこれで気が楽だと思い、その日はカップラーメンを食べて寝た。


翌朝。ふと窓の外を見ると、様々な食品が落ちていた。うちの2階から投げ出されたようだ。

1階に降りてキッチンを確認する。ストックしてあったはずのレトルト食品が、ない。

置き手紙があった。


出る。


何がだ。でもきっと家出だ。


しょうがない、泣けなしのお金でカップラーメンだ。


「私を食え。」

亀の声だ。亀が喋るのはもう慣れた。でも、捌き方とか知らないし。

「捌き方くらい教えてやる。」

いや、やだよ。食べたくないよ。

「良いから食え。これからは一人で生活していかないとかもなのだぞ。食えるものは調理して、食え。なりふり構ってなぞいられない。」


亀が朝の食卓に並んだ。犬などの獣でないだけマシかと思ったら、結構グロかった。何より悲しかった。普段なんとも思ってなかったが、いつもそばにいた存在だ。


ありがとう、亀さん。美味しかったよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ