8 喜撰法師
原文
わが庵は 都のたつみしかぞ住む
世をうぢ山と 人はいふなり
現代語訳
私の庵は、都の東南にあって、このように心静かに住んでいる。
だのに、ここを世を憂しとして住む宇治山だと、世間の人々は言っているよ。
世の中から忘れ去られたような、この場所が、私はお気に入りです。
誰かを招いたりはしませんが、あなただけは特別です。
普段から、ここに住んでいるんですよ。
……えっ、誰にも見つからないような場所ですって?
ひょっとして……何か、良く無いこととか、考えていませんか?
違う?
こんな場所で暮らしているなんて、まるで世捨て人じゃないかって?
そう考えてしまうのも、無理はありませんね。
昔は確かに、どこか一匹狼なところがありました。
でも、そういうわけじゃないんですよ。
ここには何もないように見えますが、必要以上のものがないだけなんです。
日常ではどうしても、いらないものまで抱え込んでしまいます。
いらないものまで抱えてしまうと、知らず知らずのうちに疲れてしまうんですよ。
だからこそ、必要なものだけで過ごせる場所が、私には必要なんです。
ここは心を静かにして、癒してくれる場所なんです。
わが庵は 都のたつみしかぞ住む
世をうぢ山と 人はいふなり
あなたも、もしよろしければここに住んでもいいんですよ?
一緒に暮らしてみれば、きっとその良さが分かります。
どうですか? 一緒に、暮らしてみます?
えっ、まだ早いって?
フフッ、もちろん冗談ですよ。
でも……いつかそんな日が来たらいいなって、私は待ち続けていますね。
あなたは、わたしにとって必要な存在ですから……。