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天才外科医、異世界に降り立ちぬ  作者: Dr.てんのすけ
4/9

④天才外科医、勇者を救う

かなり医学的な専門性が高く、飛ばしてもらっても構いません。

 駆け付けたその村の住民を全員その場から去らせると、澤田は患者の口に管を入れた。気道を確保するためだ。現在この患者は大きないびきをかいており、舌根沈下といって舌が下がってきている状態だ。このままだと、自らの舌が気道を閉鎖してしまう危険性があり、この兆候があるとひとまず気管挿管という処置を行い、気道を確保しなければならない、救急医療で第一に優先される手順である。


 次に澤田は気道確保部位から大量の酸素を投与した。現在この患者は、大量出血による貧血があるので、酸素の運び屋であるヘモグロビンが欠乏している状態だ。ならば酸素そのものを大量に投与してしまうという手法である。


「よし、次はリンゲル液を注射だ……。

 さっき出した18ゲージ針を……」


 先ほど澤田が(おそらく神から)取り寄せた18ゲージの針を手に取る。澤田は凄まじいスピードでリンゲル液の輸液を開始した。リンゲル液とは人間の血液の組成に最も近い液体であり、現在大量出血している患者にとっては必要不可欠なものである。

 次に澤田は胸部レントゲン、骨盤部レントゲンを撮った。このあたりに出血や骨折があると、大惨事になりかねない。


「よし、血胸なし、緊張性気胸もない……」


 そして澤田は、骨盤部のレントゲン写真を見てまゆをひそめた。


「左骨盤骨折があるな……。右下腹部に15cmの裂傷があるし、まずはそこを修復してから骨盤部固定を行おう。出血部位を探す、腹部超音波検査を行う。エコー!」


 と、あっという間に、澤田が言った器具が手元に現れるので、


「これは看護師いらずだな……!」


 思わず言葉が出てしまった。


 現在澤田が行っているのは、腹部にエコーを当てて、出血部位を探す単純な手法である。しかしながら、この手法は技術的に難しく、普通は造影剤CTで検査を行う。エコーのみで出血部位を見つけるのは澤田だからできることだろう。


「よし、出血部位確認、電気メスで焼くぞ!」


 と、言ってる間に、30分以上が経過した。外の住民も心配そうに手術場を覗いていたのだが、そんなことは澤田にとって気づきようがなかったようだ。

 ――手術は大成功。手術というか応急処置だったのだが、「勇者を救った」ということなど澤田は知る由もない。もちろん、住民も患者が「勇者であった」ことなど知らないはずだ。手術時間は1時間もかからず、外傷が激しい患者であったが、あっという間に処置は終わってしまった。普通はやらない手法を澤田はやってのける、これが天才の天才たる所以であった。

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