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それぞれの3日後

3日後に、なにかが起こるようです

二度目だ。


オレが乱暴に地面に叩き落とされた回数。


「おい、いきなり落とすなよ、あぶねぇじゃねーか、乱暴者!」


「獣なのですから、着地くらいできないんですか?」


それはそうなんどけど、オレにも心の準備ってもんが必要だろう?いきなり落とすっていうのは無いと思うけどな…。


人間は俺の不満顔を無視して、後ろ足にまだ巻きつきている縄を切った。


「痛かったでしょう?少し待ってくださいね」


そう言って人間は、俺の後ろ足になにかをまきつけた。


一体何をしているんだろう。


少し痛みを感じて顔をしかめると、、人間が柔らかい微笑みを浮かべた。


「しみましたか?傷薬ですよ」


縄に擦れただけのあんな傷、なめておけばすぐ治るのに。


賢い人間はそれを知っているはずなのに。


それなのにこの人間は手当をしてくれた。


「お前のような優しい人間はオババ以外ではじめてだ」


「私もあなたのような間抜けなライオンは初めてみましたよ」


さっきとは違う、少し冷たい笑顔をオレに向けた。


さっきの笑顔のほうがらオレは好きだな。


「なんですか?」


「なんでもない。ありがとう」


訝しがる人間に、オレは礼を言ってその場を去った。


何故かあの人間の側にいるのが急に恥ずかしくなってしまったのだ。


変だぞ!オレ!!


人間を見て、メスを見たときと同じような気持ちを抱くなんて……!


怪我の手当をしてもらってから三度目の太陽が昇った日。


オレには泉のほとりで日向ぼっこをしていた。


頭の上では小鳥が羽を休めている。


太陽がきもちいい。


あの人間と一緒に日向ぼっこできたら楽しいだろうな。


でもどうしてだろう。


メスのライオンでなく、あの人間と日向ぼっこをしたいだなんて…。


あの優しくて意地悪な人間のことが、オレの頭から離れない。


あの人間が巻いてくれたものはまだ、俺の足にまきついている。


これがあれば、あの人間は罠にかかっていないオレを見つけても俺だとわかってくれる。


解こうとすればすぐに解けるのに、俺はそんなことを思ってそれを解けずにいた。


あの人間は今日も森に罠を仕掛けているのだろうか。


ふとあの人間のことを思い出し、森の入り口に目を向けた。


ばたばたという慌ただしい羽音が耳元でした。突然動いた俺に小鳥たちが驚いて飛び立ったのだろう。



森の入り口は、まだ太陽がてっぺんにあるというのに薄暗い。


森に入ればまた、あの人間に会えるだろうか。


話ができなくてもいい。一目見るだけでも構わない。


あの人間に逢いたくて、オレは再び森へと足を踏み入れた。


ーーー


あれから3日が経ち、私は集落で薬草を乾燥させていました。


罠を二度も、あの間抜けなライオンにめちゃくちゃにされてしまいました。


ライオンが獣の王者と恐れられるのと同時に、森の守護者であるという言い伝えは本当なのかもしれません。


もしかしたら彼は身を挺して森の小動物たちを守っているのでしょうか。


「コーラル、族長にささげる動物はてにいれられたのか?」


兄に話しかけられ、私は首を横に振りました。


兄は私とは違い、たくましい狩人の体をもっています。金の髪に溌剌とした表情。まるで太陽のような男です。


「なぁコーラル、お前の分は俺がとってやるから、もう森へ入るのはやめてくれないか?兄さんはお前のことが心配で心配で。見てごらん、若白髪まで生えてきてしまうほどなんだよ」


ただ少しだけ私を甘やかしてしまうのが玉に瑕ですが。


「大丈夫ですよ、兄さん。私だって狩りくらいできるんですから」


私の部族の決まりでは、満月の夜に男たちは族長に獣を、女たちは果物を捧げることになっています。


私を除くすべての男たちはすでに捧げものを手に入れています。


「お前は体が弱いんだから無理をするな。族長もそれはご存知なんだし…」


「平気ですよ。兄さん。この前森に罠を仕掛けたんです。これから見に行こうと思って」


「じゃあ俺もいっしょに…」


「兄さん!ついてきたら、もう兄さんとは口を利きませんからね。心配しないで。わたしだって男なのですから」


自信たっぷりに兄に言ったものの、私は嫌な予感を感じていました。


まさかまた、私の罠にあの間抜けなライオンが引っかかっていたりしないでしょうね。


もしまた引っかかっていたら、今度は毛皮を剥いで族長への捧げものにしてしまいましょう。


私は麻袋を担ぎ、森の入り口へとむかいました。



薄暗い森の中には不気味に鳴く鳥の声が響いています。


「兄さんが変なこと言うから…」


歩き慣れた森の道も、なんだか不気味で。私は不安な気持ちを振り払うように、兄に対する文句を呟きながら進んでいきました。


ライオンに罠を台無しにされていないか不安でしたが、今回の罠にはちゃんとウサギがかかっていました。


少し肩透かしを食らった気分です。


別にあのライオンに会えなかったからと言ってどうというわけでもありませんが。


麻袋にうさぎを詰めていると、 背後の茂みが音を立てました。今までのことから考えると、あの間抜けなライオンでしょう。


「残念でした、間抜けくん。このうさぎは……!」


ところが茂みから姿を現したのは、あの間抜けなライオンではありませんでした。


一回りさらに大きい体の、しかも立派なたてがみを生やした大人の、そして間抜けなライオンの純真な瞳ではない、空腹に目を血走らせた本物の野生のライオンでした。


私はただ、目の前の猛獣を眺めていることしかできません。


唸り声を上げて、私を睨みつけているライオンが、跳躍して私に飛びかかってきました。


もう終わりだ…!


そう思って目を閉じた瞬間、後頭部と背中に重たい痛みを感じました。


意識はだんだん薄れていきます。


ぼやけていく視界の先に、足に白いものを巻いたあのライオンをみた気がしました。


だけど、それはきっと幻でしょう。


どうせ食べられるならあの間抜けなライオンだったらよかったのに。


そんなことを思いながら、私の意識は闇へと沈んで行きました。


大きなオスライオンに襲われたコーラルはどうなるのでしょうか…って、まぁ展開バレバレかもしれませんが^_^;


そしてコーラルという人間視点の主人公の名前がようやく出ました。


双方の名前を出さなかったのは実はわざとです。


ライオンの名前は何かはあとで彼らの会話で判明します。



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