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初見

たてがみちょろちょろのライオンは罠から解放されました。


オレはこの罠を仕掛けた人間を食べないと約束したが、仕返しにやっぱり食ってやろうと思った。


だってあんな乱暴にオレを地面に落としやがったんだ。


腕の一本くらいもらって恨みを晴らしたっていいだろう?


だけど、間近でその人間を見たら、なぜかそんな気が削がれてしまった。


「なんです?じっと見て。まさか、あなた、約束を破る気ですか?」


「いや、約束は約束だ」


しかし本当にまずそうな人間だ。


腕や足は小枝のように細いし、肌は白樺みたいに真っ白だ。


目の色は夜空のような深い藍色で髪は松のように深い緑色。


とにかくオレは、もっと肉付きのいい、食べ応えのあるものが食べたいのだ。


頼まれたってこの細っこい人間を食べようなんて思うものか。


「あーあ、こんな派手に大きな穴を開けてくれて…これ、作るの大変だったんですよ」


わざとだろうか。人間は大きな声をだして、オレの爪で大きく開けられた網を畳んでいる。


オレは悪くないはずだ!罠にかけられて地面に落とされた被害者はオレなのに。


「そんな罠なんか張らずに自分の腕と足で…いや、お前には無理か。非力な人間のメスは、狩りができないんだっけ」


俺の言葉にそれまでブツブツ文句を言っていた人間はムッとして顔を上げた。


その頬は夕焼けのように染まっていて、しかも威嚇する獣のように眉間にしわをよせ、じろりと俺を睨んでいる。どうしたのだろう。



オレは何か、変なことを言ったのだろうか。




ーーー



あまりに腹が立ったので、私は乱暴に立ち上がって畳んでいた網を地面に叩きつけました。


葉っぱに縄が当たって鋭い音がしました。


その音にライオンが驚いて後ずさり、少し身構えています。


不安そうにする瞳がまた、私のイライラに拍車をかけて、もう、腹立たしいったらありません。


そんなに私は非力そうに見えるのでしょうか。


確かに非力ですけど、そこは否定しませんけど。



まさか獣にまで女扱いされるとは思いませんでした。


「ど、どどどど、どうした…?」


ライオンはビクビクと様子を伺ってきました。


身構えてはいますが、その耳は伏せられ、へっぴりごしで前足後ろ足はガクガク震えています。


「いいですか?私はメスではありません。オス、つまり男です!確かに私は男のくせに非力だし、狩りが苦手ですよ。でもその代わりに頭を使って何が悪いのですか!」


一気にそこまでまくしたてて肩で息を吐く。


面食らっているライオンを見ると、少しスッキリしました。


「その、すまなかった。お前オスだったのか。俺だってメス扱いされたらやだもん」


「あ、いえ、別に…」


以外と素直に謝られ、今度は私の方が面食らってしまいました。


怒りを幼いライオンにぶつけてしまった自分が恥ずかしいくらいです。


けれども、この幼さを残すライオンほど素直ではなく、心の狭い私は怒りをぶつけたくらいではやはり気持ちがおさまりません。


もっと意地悪をしたくなりました。


「まぁ、こんな罠に引っかかるお間抜けさんに、人間の性別の区別ができるわけありませんものね」


「ま、間抜け…」


「あなたも間抜けだとはいえ、獣の王者と恐れられるライオンなのですから、こんな罠に引っかかってはダメですよ。ほら、早く森へ帰りなさい」


もう二度と会うことのないだろう小さなライオンは、私を一度だけ振り返り、それから茂みの奥へと消えて行きました。


あれから5日がすぎました。


ようやくあのライオンに壊された網を治し、この前とはちがう場所に罠を仕掛けました。


今日こそはウサギの一匹くらいで かかってくれるといいのですが。



私はほんの少しの期待を胸に、森へと足を踏み入れました。



さて次回はちゃんと仕掛けた罠にうさぎはかかっているのでしょうか??

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