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閑話休題、最終話

「美しおすなぁ……綺麗やわぁ‼」


 団扇うちわを手に、初夏の生きた星が舞い降りる景色を楽しんでいるのは、金髪を結い上げた雛菊ひなぎくと隣は金茶の髪のほたる


「お姉ちゃん、京言葉上手になったねぇ」

「蛍も、べっぴんはんになって……やっぱり、あての妹や」


 姉妹は顔を見合わせる。


「雛菊~‼これはどうしたんや……ちょお、おまち。あかね。帯がおかしいさかいに」

「ママ~‼」

「おまち言うとるがな。誰に似たんや……」


 ため息をつくのは紫野むらさきの、その横で吹き出しているのは、


「さきは、口はそういうて、茜にでれでれやさかいな」

「親馬鹿って言うんで。兄さん」

「醍ちゃん?醍ちゃんに、それは言えんと思うわ」

「パパ、抱っこ~‼」

「パパ~‼」


突進する子供たちは4人、そして肩車しているのは末っ子である。

 妻の風遊ふゆの手はしっかり握っている。


「パパは一人や。シィおいちゃんにおいきや」

「なぬ‼兄売るんかいな⁉」

「兄さんも結婚やろ?頑張りや。子育て。一番飄々としとる顔が、うろたえるんが見れたら楽しいわ」

「……あぁ、地獄や……またぶんなげられるんやろか」


 因みに、標野しめのの相手は、祐也ゆうやの妹のひめである。

 初対面で、


「象と一緒」


と言い、ぶん投げられた。




 祐也の兄弟は、祐也以外華奢だが、4人兄弟それぞれ突出したものを持っており、媛は柔道の48キロ以下の選手である。

 兄の一平いっぺいは、結婚を期にイングランドに移住し、柔道と剣道の道場を開いた。

 只今、娘のクリスティンと息子のロナウドに親馬鹿をして、ヴィヴィアンと言い合うのだが、


『だってな?クリスティンは、ヴィヴィに似てて可愛い‼ロナウドもや。で、一番可愛いんはヴィヴィ‼』

『ちょっと待って‼甘やかしちゃダメって言ってるのよ?私は?』

『ヴィヴィが仕事でおらんなったら、寂しいし~ヴィヴィの代わりに二人を可愛がったらいかんか~?』

『……』

『ヴィヴィが一番可愛いけど』


覚えた英語が全部ヴィヴィアンへの誉め言葉だったので、ヴィヴィアンは返答できず、その後で親友のくれないに、訴えるのだと言う。

と、


『その方が良いわよ~‼ヴィヴィ‼だって、ウェイン、言ってくれないんだよ~‼』

『言ってくれない?』

『……子供ができたって言ったのに……何にもいってくれなかった』


ぷぅっとすねる親友の代わりに、幼馴染みを問い詰めたヴィヴィアンだが、こちらは頬を真っ赤にして照れる。


『えっと……う、嬉しいのと、何言って良いのか、分からなくて……それに、今やってる役が、クールな役で、こ、この顔じゃ演技出来ないから……』

『そう言えば、役になりきる役者だったわよね。でも、紅にうれしいって、幸せだって言葉にしてあげたら?喜ぶわよ?』

『そ、そうする……実は、ちゃんとプレゼント用意してる……』


 ウェインの両親は初孫に大喜びである。




 そして、


穐斗あきとバタバタしたらいかんで?」

「それに、那岐なぎ風早かざはや。川に落ちたらいかんで?」


祐也は生まれた娘を抱き、日向ひなたは3人目を身ごもっているただすの手を引いている。


 祐也の両親や、醍醐の両親、風遊の両親は、別の所で見ている。


「少しずつでも……良くなっているんですかね……」


 祐也は呟く。

 まだまだ山は荒れ、祐也たちは地域に根差した若者を呼び寄せつつ努力している。


杏樹あんじゅが大きくなるまでには、美しい世界になって欲しいな……」

「まぁ、ろくでもなく大変でも、俺たちだけじゃなく、子供たちがどう思うか……だと思うがな」


 日向は呟く。


「そのまま町に出ていったら逆戻り。こっちに戻ってくる……大事な所だと知って欲しい」

「まぁ、その点、ひなんとこは、口うるさい親父のせいで、逃げるんじゃないですか?」

「お前に言われたくないわ‼子供の前で何しよんぞ。ボケ!色ボケ変態親父って呼ばれたいか?」

「ハイハイ。ひなさんも醍醐さんもお変わりなく、仲良しで」

「お前も変わってないな」

「全くそのまま」


 二人に微笑みで返す。


「そりゃぁ、この世界が一番優しくて幸せだからですよ。皆がいて、家族ができて、温かい……こう言うのが俺の夢だったんです。だから……俺は祈ります。この世界が皆の為に、優しい世界であるように……その為には、何だって……」

「まぁ、乗り掛かった船だ……」

「もう乗って、方向を指示してるのに」


 3人は笑う。


 優しい星と命の光が、家族を取り囲み、降り注いでいく。

 それは、命の大切さ、何気ない日々の愛おしさ、笑い声……。

 全てが……一度失われかけて、再びよみがえる……。




 これは夢物語かもしれません……ですが、もしかすると、これから始まるのかもしれません……。

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