閑話休題、保護者と子犬のダブルで登場です。
電話を切った日向が振り返る。
『向こうの穐斗の姿が、植物になったって。これから警察を呼ぶそうだ』
『で、どうするんですか?』
お目目くるくるのワンピース姿で首をかしげる。
祐也と一対の指輪は、ネックレスのままである。
しかし、髪の毛をとかして貰うとモサモサっとした髪が艶やかに、明るい金茶色になった。
それを軽く編んで貰っている。
「記者会見しかないね……」
頬の手当てをして貰ったウェインは、呟く。
『でも……僕、苦手……だなぁ。それに、お腹痛い……』
顔をしかめる。
『逆に演技せん方がかめへんわ』
『さきおにいちゃん?』
『ニコって笑とったらかめへん。意味分からしまへんって顔でおり』
クイクイ……
紫野の服を引っ張る。
「さき……?わ、たし……」
「あー、マーガレットは、最初に挨拶。その後は、日本で偽物が色々やってるから、首を振り。分かりませんって」
「ずっと……?」
「貴方は本当にマーガレットさんですか?って聞かれたら、ハイって。えっと、日本名は……」
「夏樹。季節の夏に、樹木だよ。お姉ちゃん」
自分も細く小さいが、妹と紹介された穐斗はもっと小さい。
見下ろしてポツリと、
「小さい……」
「え、えぇ?チビ?うぇぇーんどうしよう⁉」
半泣きの穐斗に、まばたきをする。
固まったマーガレットの頭を撫でて、紫野が、
「あきちゃん。違う。マーガレットが言いたいのは、小さい……華奢でくるくる表情が変わって可愛いなぁ。そう言いたいでしょ?」
「……‼」
コックン、頷く。
「それに、あきちゃん……アンジュは、嫌いじゃなくて大好きだよね?違う?」
「き、嫌いじゃないです……」
無表情の少女の頬にうっすら赤みが差す。
「じゃぁ、大好きって言ってみよう。はい、練習」
「あ、ああ……あ、アンジュ……好き……」
余り表情にはでないが、恥ずかしげに妹に告げる姿は、周囲に特にモルガーナに、
「か、可愛い‼こんな可愛い娘欲しかったわ……」
「モルガーナも好き……ヴィヴィアンも、クレナイも好き、よ……」
ニッコリと笑う。
と、外が騒々しくなる。
記者か?パパラッチかとウェインが出ていこうとすると、
「あぁ‼マーガレット‼戻ってきたのね‼」
大袈裟な身ぶり手振りで近づく女性。
「貴方ですか……何しにこられたんでしょう?」
ウェインは微妙な顔をする。
サラ・ボーガン……祐也たちも知っている、お騒がせ女優である。
ちなみに、アルテミスとは長い間の愛人関係にあったのだが、その間にも4回結婚し離婚している。
「この子は私の娘なの‼返して頂戴」
「はぁ?」
長年の父の愛人に、モルガーナが近づく。
「何を言われているの?マーガレットは私の妹です‼それに、マーガレットの公式の母親は日本にいるわ‼」
「戸籍?そんなものDNA検査をすればいいのよ。それに私に似ているもの。あの男に連れ去られたのよ‼帰るわよ‼」
手を伸ばす女性から、マーガレットを引き寄せ微笑む。
『お久しぶりどす?』
「オォ、ジャパニーズワガシ‼」
周囲では、
『ジャパニーズワガシって、おかしくないか?』
『ワガシだろう?』
とこそこそ話すが、紫野は、
「ミセス・サラ。お嬢さんが、このマーガレットだったとして、貴方はいつ、どこで彼女を連れ去られたのでしょう?」
「なっ?」
「それに警察に通報しましたか?それに、マーガレットがいなくなってから、アルテミス卿を訴えましたか?それに日本に行ったChangelingのMEGを引き取りもしなかったですよね?自分の子供を取り戻す為の努力もせずに、取り戻した相手にお礼一つも言わずに、自分の娘かどうか分からない娘を連れていくんですか?」
「この子は私に似ているわ‼」
言い募る女優に、真顔で、
「全く似てませんけど?貴方は、確か何度も整形してますよね?最近も噂になってませんでしたっけ?整形に失敗して再手術……日本で有名な幽霊みたいですよ」
「何ですってぇぇ‼」
激昂するサラに、冷たい目で、
「血は繋がっていても、心の繋がりのない人間が、母と名乗る資格などない‼それと、マーガレットの母は清水風遊。俺の弟の妻だ。俺の姪に当たるマーガレットを、許可なく連れ去ると誘拐として訴える‼風遊はマーガレットを待っている‼母親の元に連れて帰るのが当然だろう‼」
「何ですって‼訴えてやる‼」
「22年前に、訴えていればそうだっただろうが、今更だと思わないか?さて、パパラッチさん方。どうでしょうか?生まれた子供を22年前に放置、そして妖精の世界に連れ去られていたのに、遊んでいて、今更戻って来た娘を、この人は何に利用するつもりですか?」
紫野は、言い放つ。
「人を人と、娘を娘と思わない人間が、この可愛い花のようなマーガレットを奪うのならば、この家と俺の家と、世間の人々を敵に回すと思って貰おう‼」
紫野の言葉は世界中に広がり、双子の弟の標野は日本の一角で、
『さき……守らなあかん思たら、後先考えんさかいに……。将来の嫁見つけに行ったんかいな……。えぇなぁ……』
と呟いたのだった。




