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閑話休題、さて、家族とは……。

 モルガーナとヴィヴィアン、くれないがモルガーナの妹に当たる比較的軽い症状の女性を連れていこうとする。

 と、


「あ、モルガーナさん。穐斗あきとを」

「えっ?」

「お、お姉ちゃん、あのね、あのね……」


姉の耳にこそこそと囁く。


「あら……‼それは大変ね。祐也ゆうや。そのまま連れてきて頂戴ね?」

「はい」


 ガラハッドがトラックを止め、さほどせずにウェインと日向ひなたの乗った車も戻ってくる。


「ん?誰だね?」

『あ、一平いっぺい先輩?』

『よー‼一条いちじょう。何かな?お前の嫁さんが、退学するって聞いて、話を聞こうと思って病院いったら、こいつがおってぶん殴った。で、松尾まつのおに『ゴミはゴミ箱や。こいつをイングランドに棄ててきてくれはらしまへんか?』言われてなぁ』

『だ、醍醐だいご‼……せ、先輩に、何ってことを……』


 青ざめる。

 見た目は自分と変わらない……それよりも華奢だが、破壊的に強い、実力派脳みそ筋肉族である。

 本当は従兄弟とは言え、兄弟として育っているのに、どうして祐也は考えすぎ、逆に考えるのが億劫がるのか?

 それよりも、後輩に命令される‼いいのか‼


『かまんかまん。松尾に金出してもろたしの、それに俺、英語分からんけん、風遊ふゆさんにほら。よかろが?』


 差し出したノートには、簡単な英語と地図。


『これだけで来たんですか?』

『後は、身ぶり手振り‼で、ヴィヴィにあった‼』

『勇者2号ですね。紅も、ヴィヴィに会って、身ぶり手振りで』

『やっぱりな、脳みそ筋肉族め』


 あんたが言うな‼


と、叫ぶのをこらえる日向。


「日向?彼は?」

「あぁ、祐也と紅の兄の一平先輩です」


と英語でウェインに返し、


『先輩。穐斗のお姉さん、モルガーナさんの旦那さんのガラハッドさんと息子のガウェイン。そのモルドレッドの父で兄』

『ふーん……』


じっと二人を見るが、にっと、


「はじめまして。祐也と紅の兄です。で、あげますって言っても……おじさんも兄貴の方も、こいつやっかい?」


一平は頭をかき、日向を見て、


『通訳してくれや。こいつは、あんたたちはちゃんと道を教えてきたんだろ?さっきのモルガーナさんも目が綺麗だった。おっちゃんも兄貴もだ。あんた達が努力した所で、こいつはひねくれてる。妬み、ひがみ、自分が努力すると言うことを忘れてる。もう、こいつもいい年だろ?見捨てろ。もう、このバカは治んねぇよ。俺が英語が苦手で喋れないのと一緒で一生もんだ』


 日向は素直に通訳する。


『でも、弟なんだ‼』


 ウェインの言葉に、


『だから、バカは治んねぇ‼祐也襲ったあのおっさんと、こいつは一緒だ‼』

『‼』

『このままでかくなって、多分と言うか絶対に、お前を勝手な逆恨みで殺すぜ?お前、テレビに出るか?「兄貴を殺したバカと素直に殺される兄貴」って。優しくしてんのが兄貴の役目じゃねぇ‼バカをしつけろ‼でも、しつける年じゃねぇ‼なら、二つに一つ。追い出すか、お前が出るかだ。お前、俳優で金持ちだから、出てやれば?で、どうなるんだろうな?逆は、賢いお前なら解るだろ?自分の生まれ、自分がどう生きていかなければならないか、家の名前ではなく、周辺の人、傍にいる人……どうなると思う?それを考えろ‼』


言うと、


『おい、一条。家庭のことに口出すな。行くぞ』

『は、はい。じゃぁ……』

『あ、そうだ』


一平は戻り、ウェインの前にたつと、


『お前、あの映画で「私がすべきことは正しい行い‼正しき決断、そして、誠実に生きること」そう言った時のことを思い出せ』




 歩き去った二人を振り返ることなく、ウェインは目を伏せる。

 いつから、こんな風になっていったのだろう。

 何を選べばいいのか……。

 俳優として、ある程度の収入はあるが、慈善にほぼ当てている為、収入はこの領地の収入である。

 少なくとも、周囲と家族と暮らし、生きていきたい。

 父はまだ若い。

 しかし、仕事が忙しく爵位を預けられることになれば、兄弟で預かれば……どうなるだろうか。

 それに、母の姉妹は……そして……もし、将来……。


「ウェイン?」

「……父さん。僕は決めたよ」


 弟を振り返り、ウェインは決意を口にしたのだった。

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