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第79話、現代では馬車ではなくトラックで妖精のもとへ。

「ほーれ、乗れ乗れ」


 ガラハッドの声に、大胆なくれないも言葉を無くす。


「と、父さん……何でトラックなのさ‼しかも貨物用‼」

「わしの愛車‼それに、何台も車に乗ってみろ、何かあったらわしは知らんぞ?お前、あそこの領地の細かい道は知っとるか?ついでに、祐也ゆうや日向ひなたは国際免許証持ってないだろう」


 頷く。


「もし行くのなら、そこので追いかけろ」

「って、羊を乗せていく運搬車じゃないか‼」

「乗れりゃいい‼」

「……」


 その一言に、ガラハッドとウェインの正反対の性格が浮き彫りになる。

 ウェインは一言で言えば生真面目、繊細。

 ガラハッドは豪快奔放。

 逆にそこまで性格が違うことで、会話が成り立つのかもしれない。


 しかし、二人はどちらも正しいと思う道を選択し進む。

 だが、モルドレッドは、選択の場面でも逃げ続け、責任も取らず、その為に今に至ったのだろう。

 家族は、4人の家族に戻ることを望む……両手を広げ、場所をつくって待っている。

 それをモルドレッドはどうするのだろう……。


思いつつ、


「おじさん。私は顔が分かっていますから、おじさんの荷台に。先輩は前に。紅はウェインと」

『エェェ~‼荷台に乗りたい~‼ゆうにいちゃんと‼』

『ウェインと行け。いろんな景色見られるぞ』


とさっさと乗り込む。

 ウェインは付き合えば付き合う程、気が合う親友になりつつある。

 穐斗の甥としてだけでなく、一生縁があればと思う……ついでに、恋愛の『レ』も出てこない妹を何とか恋愛モードにしてくれとウェインに、投げたと言うこともある。


『えぇぇぇ?ゆうにいちゃんと~‼』

『紅。ほら、早く行かないと間に合わないから‼』


 ウェインは、引っ張っていく。


「じゃぁ、行くぞ‼」


 車は走り出す。

 当然荷台なので乗り心地が悪いと思っていたのだが、毛布や支える箱などが乗っていた。

 運転席から窓が開き、


「大丈夫か?」

「あ、えぇ。思ったより良いですよ。ガラハッドおじさん。この箱は?」

「ん?卵のからの中に小麦粉とスパイスを入れた特製爆弾だ‼昔やって、親父にぶっとばされた」


 わははは‼


豪快に笑う。


「まぁ、俺は三男で、その上、本妻の子供じゃなくてな。ほら、遊びで手を出した屋敷のメイドの子供だ。だからここで育ったんだ。母親は外聞が悪いと辞めさせられて会ったことがない。兄二人とも反りは会わんし、義理の母親は会うたびにって言う感じでな。家族ってのは、ここの庭師ガーデナーだ。その両親に生き方を教わったし、自分を否定するな、ひねくれる前に自分で自分の道を見つけろとな。そう言われて育った」

「……そ、そうだったんですか」

「あぁ。そうしたら、こっちは身分制があり、長兄が跡を継ぐことになり、次兄は本妻さんの実家の家に入った。わしはここを貰って、このままと思ったら、長兄が結婚したが子供ができる前に事故死した。わしには信じられないが、銃の扱いが解らずに、猟に出て暴発したんだ。で、詳しく聞いたら、本妻さんが、猟など野蛮だと兄二人に銃を持たせなかったらしい。で、友人の誘いに安易に使えると思い、扱いを誤って……と言うことだ」


 渋い顔のガラハッド。


「で、次兄は母方の家を継いでいたから、わしになってな。わしは一応いいと言ったんだ。葬儀に出た時に本妻さんが『お前が死ねば良かったのに‼私の息子を、お前が殺したのね‼』と言われたしなぁ」

「……」


 日向は言葉がない。

 言っても意味はないのだ。


「そうしたら、本邸でもちゃんとしておけと言われていたんだ。ここで。それで、卑屈にもならず、逆に威張るのでもなく、普通に話し解らないことがあったらその専門の人間に聞いて、覚えておくようにして、それに教えて貰ったら礼を言う。当たり前のことを繰り返していたら、色々と教えてくれるようになって、そして父親と本妻さんをなるべく避ける。威張り散らす兄たちを徹底的に避ける。代わりに色々と教わっていたら、次兄の生まれたばかりの娘にと言い出した本妻さんに本邸の家令が『では、私どもは全員辞めさせて頂きます』と言い出して。その一言に一族騒然だ。わしもビックリして『じい‼何でそんなことを‼ここで働いている皆が職を失ったら、路頭に迷う‼駄目だ‼』って言ったんだよ」


 知恵がある……素直で正直で、物怖じしない、真面目……そして強い。


「そうしたら、家令のじいが『ガラハッド様がこの家の汚点と、旦那さまも奥さまも申されておりますが、汚点とはどう言うことでしょう?汚点と言うのは、メイドとして働いていた、結婚の決まっていた私の娘に子供を産ませ、追い出し、その息子であるガラハッド様を辺境に追いやった方ではありませんか?そして、ガラハッド様を蔑み、苛め、いたぶった方ではありませんか?これ以上ガラハッド様に対してそのようなことを申されるのなら、私どもは辞めさせて頂きます。探されても無駄でしょう。ガラハッド様を主にと申す者は多いでしょうが、旦那さまにお仕えしたいと申す者はいませんでしょう』と言われてなぁ。そりゃびっくりだ」

「えと、辞めるって言うのですか?」

「いや。本邸の家令のじいがじいちゃんってことだ。じいは昔、剣の使い手で名の知れた人でなぁ。教えてくれ~‼って追っかけ回した。そしたら、『ガラハッド様は剣の使い手にはなれません。シャベルで遊んでいて下さい』って言われてたんだ。その頃はやっぱりショックで『じいに嫌われた』と思っていたが、学校で剣を一応習ったが全然駄目で、じいの言う通りになった‼」


 アハハ‼


楽しげに笑うガラハッドに、二人は笑っていいのか……この壮絶な話を……と顔をひきつらせたのだった。

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