第68話、Changelingとは世界中にあったお話です。
祐也は読み進める。
「色々調べてみた。しかし解らないのは、どうしてエルフが、トロールの子供を私たちの元に置き去りにするのかである。エルフの子供ではなく何故?探していると、海を隔てたスコットランドの船乗りが話していたのを聞いたと言う者がいた。我らは『十分の一税』と言うものを払っている。これは、信仰する神へ献上する税金と言うよりも、頂いた物に感謝をし、それを一部献上するのである。しかし、スコットランドの妖精は何故か地獄に『十分の一税』を支払う。しかも、それは妖精の子供達を献上するのだと言う。地獄に何故?と思ったのだが、愕然としたのは、妖精の子供の身代わりに取り替えられた子供が贈られるのだと言う。恐ろしい……息子が無事であることを祈る」
「フェアリーは特に、美しいものが好きだが小さい。連れ去られていた間の妻は、華やかな花びらのパンジーや愛らしいマーガレットで器用にドレスを繕うのを見たのだと言う。しかし、ハーブの匂いはあまり好きではないらしい。マーガレットの小さい印象のカモミールは清涼な爽やかな、香りがするがドレスには選ばないらしい」
『マーガレットは良くて、カモミールはダメ?』
書き込んでいく。
「取り替え子は人の子を召し使いにして、自分達よりも短い一生を生きる姿を見て笑う悪意のある場合や、人間の子を可愛がりたいと言う欲求が妖精にはあると言う。ヴェールズ地方では最初は取り替えられた赤ん坊にそっくりだが、次第に成長するにつれ病的な顔になり不格好で気難しくなり、叫んだり噛みついたりして、次第に振る舞いや容姿が醜くなっていく。取り替え子は同じ年頃に見える子供達より賢くはなくむしろ子供っぽい知恵とずるさで正体が見破れる。金色の髪の美しい子供はフェアリーに好まれる」
それを書き込んだ時に、
『穐斗の父親金髪だったなぁ、MEGもだ』
呟いた。
『取り替え子を取り戻す方法……はぁぁ‼』
ページをめくった瞬間、呆気に取られる。
「ヴェールズでは、ジギタリスを煎じた風呂に入れたり、子供をシャベルの上にのせ、熱いオーブンの中においたりして虐待をする」
『って本物だったら……焼死だし、本当に虐待じゃないか‼』
ゾクゾクしつつページをめくり、
『グリム童話では木の実だが、卵のからの中でビールを醸し、取り替え子は驚いて消えていくと言う話がある……手を尽くしたい』
『もう駄目なのだろうか……妻は病に伏して子供の名前を呼んでいる。トロールの子供を見るのは腹立たしく悔しく、しかし子供には罪はないのだと、荒れ狂う思いにさいなまれる。そうすると、遠縁の者が、「フェアリーやトロールと言うものは、我々が信仰するキリスト教徒ではなく、この地域の古くからある宗教を信仰するものが逃れ、体の弱い自分の子供と健康な子を取り替える」のだと言う。話は見つかるが前に進まない。それが悔しい』
『信仰?ドルイド信仰……ケルト民族だよな?やどり木を神木、聖木って……日本じゃ厄介者なのに』
呟く。
やどり木。
他の木に寄生して養分をすいとる常緑樹。
増えるのは、甘い臭いを発する実で鳥を呼び寄せ、鳥が食べた実はほとんど吸収されるが、種とそれをおおうねばねばが残り、鳥が糞をすると、そのねばねばで木に張り付き、その木の養分をいただき、成長するのである。
それは、急激に広がり、日本の木々を弱らせている。
特に町中の公園の木を見上げてほしい。
今の時期なら桜が分かりやすいと思う。
ソメイヨシノの寿命は約60年と言われている、自家繁殖をしない枝を切って、他の桜の木の種を植えて、それに芽が出たら斜めにきり、縦に裂いて、ソメイヨシノをはさみ、藁などでまいておくのである。
そうして成長して増えていったのがソメイヨシノであり、他の品種のように種はない。つまり一種の大本のクローン製作である。
同じく、金木犀もそうである。
金木犀は雄花のみが日本に輸入された為、原木から苗を作り増やしている。
原産の中国には雌花がもちろんある。
『う~ん……厳しいなぁ……。穐斗にあいたい……』
肉体関係など、望むつもりもないが、抱き締めたい。
その温もりに、好んでいるラベンダーとレモンバームのスプレーは爽やかで好きである。
『あぁ、道は遠い』
ぼやいたのだった。




