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第7話、一応、家に帰ってから大学に戻ります。

 病院から出ると、血まみれの穐斗あきとの格好位は何とかしないといけないと言うことで、


「家に一回帰るか?」


と問いかけると、


「あ、洗濯をしてて、干すの忘れた。着替えがない……」

「は?お前、いつもこれと二、三枚位しか……」

「洗濯を一緒にしちゃうから……それに、姉貴が押し付けてきた服ならあるけど……」

「一旦それに着替えとけ」

「うー‼嫌だなぁ」


 渋い顔に、最近操縦方法を理解し始めた祐也ゆうやは、


「濡れた服で風邪を引くか、嫌でも着るか。もしくは新しい、お前の可愛い多肉植物の苗を買いに行くか‼どれを選ぶ‼」

「着る‼」

「じゃぁ帰るぞ」


タクシーでまずは近い祐也の家に行き、数日分の荷物と布団を纏め、


「兄貴。穐斗の家に頼むわ」

「いいけど、穐斗、どうしたんだ、それ?」


安部家では、穐斗は家族同然である。

 時々、祐也が連れて帰ってくるのである。


「あ、お兄さん。こんにちは」

「いや、大丈夫か?穐斗」

「あ、えっと、転んで鼻の骨を折っちゃいました」

「はぁぁ‼骨折って‼」


 寝転がっていた青年は、身を起こす。


「えっと、俺が背中叩いたら、倒れちゃって……こんなになっちゃったんだ。で、しばらく様子を見ようと思って……」

「家に……ても、家はうるさいし、よし。行け‼連れていってやる」

「サンキュー‼」

「お前の為じゃない」


 祐也の家はすでに『穐斗を大事にする会』が発足している。

 それにはこの兄だけでなく、両親、祖父母、祐也の妹達も入っている……。


 車に乗り、5分程度……穐斗の家に到着する。


「あ、お兄さん。いつもありがとうございます」

「いい、いい。それより、今度泊まりに来いよ?穐斗は俺の弟だしな」

「僕も、お兄さんだって思ってます」


 ほのぼの家族会話を、


「じゃぁ、兄貴。ありがとな?父さんや母さんに言っといて」

「お前が穐斗くんに怪我させたと言っとくわ」

「それだけはぁぁ‼」

「治療費もお前のことだ、払ってないんだろ?ちゃんと親父に言っとけよ」

「それは大丈夫です。お兄さん」


穐斗は口を挟む。


「確か、学校の保険に入っているので、通学中に転倒した事にして、出して貰えるか聞いてみます。祐也は、悪気はなかったし、僕も、ボーッとしていましたって」

「えぇ?出来るのか?」

「と言うか、面倒ではあるんだけど、でもわざとじゃないでしょ?聞いてみる」


 そして祐也の兄に手を振って見送ると、部屋にはいる。

 いつも通り殺風景な部屋に、


「お前、テレビ一応あるんだろ?」

「クローゼットの中。見ないし……本棚の邪魔」

「で、ベッドに、その下にプラスチックケースと多肉植物、冷蔵庫……ないのもすごいな」


自分の布団を置き、数日分の荷物をおこうと探し、クローゼットを開けると、


「この中、何だ?」

「上の段は母さんの大事なテディベアの数々。それと、クラスメイトに頼まれるチャームの道具箱。裁縫道具もあるし、一時期習っていたから、テディベアの道具も揃ってるね。鉗子かんし見る?」

「もう十分‼それより、お前、チャームって何だ?」

charmチャーム……魅力。って言う意味もあるし、御守りとか女の子が身に付けるブレスレット、ネックレス、指輪もチャームだね」


 男……祐也ならば、兄と父とで釣りにはまっているので、釣りの疑似餌ぎじえや針、おもり、浮きなど釣る魚や、場所、天候、潮の満ち引きによって替える。

 そのため、釣具屋で購入したプラスチックケースだけでなく、100Yenショップでしきりのついたケースを購入し、種類ごとに分けているが、それとほぼ同様に大きさや部品の場所によってきれいに整頓されているらしい。


「ネットフリマでね、家の母が良く手の込んだものを作って出品しているんだけど、僕は、こう言うのを……」


 鍵の飾りを示し、ペンチと数種類の部品で、簡単に仕上げる。

 それに、カラー無地のカードにシールで貼って、透明の袋に入れると、後ろにカラーのテープを貼り、


「はい、今日のお礼。鍵はきっかけ。つまり、あることがきっかけで、祐也のこれからの道が広がっていく。だから、頑張ってね」

「お、おう。って、こう言うのやってんのか?」

「う~ん……自分では良く解らないんだけど、女の子に前にお礼であげたんだ。そうすると作って欲しいって言う人が増えちゃった。本格的なものではないけど、気持ちを込めているから大事にしてくれると嬉しいな」

「うーん。って、お前、スマホの?」

「そうそう。これなら恥ずかしくないでしょ?」


 こう気の効く少年が本当に少年か、心配になる祐也であった。

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